猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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決戦前

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漆黒の牙シュヴァルツファングの住処はこっちよ」

 俺達はフィーナの案内の元、エルフの里を出てから南西の方角へと進んでいた。
 今のところ魔素は見られないため、漆黒の牙シュヴァルツファングは側にいないことがわかる。
 魔素は人体に影響する厄介なものだけど、漆黒の牙シュヴァルツファングが近くにいるかいないかわかるのは助かるな。
 まあこっちには探知のプロであるマシロとノアがいるから、関係ないと言えば関係ないけど。

「フィーナ、さっきも言ったけどもう一度確認だ」
「わかってるわよ。漆黒の牙シュヴァルツファングが現れたら私は隠れていればいいのね」
「無闇に攻撃しないでくれよ」
「大丈夫よ。そこまでバカじゃないわ」

 ここに来るまで、何度か漆黒の牙シュヴァルツファングを倒すための作戦を話し合った。
 俺に口酸っぱく言われて嫌かもしれないが、これだけはしっかり守ってもらわなきゃ困る。
 この戦いには多くのエルフの命がかかっているのだから。

「でも最良なのは、漆黒の牙シュヴァルツファングと会わないことだな。今回の一番の目的はレーベンの実を手に入れることだ。討伐はまた今度でもいい」
「それは難しいと思うわ。漆黒の牙シュヴァルツファングの探知能力はとても高いから、住処に誰か近寄れば必ず戻ってくるわ。前回私も見つかっちゃったし。だから隠れてもたぶん無駄よ」
「そもそも何でそんな所を住処にしているんだ? それとレーベンの実を他の場所で育てることは出来なかったのか?」

 昔にあった病気なら、エルフの里の近くにレーベンの実があった方が、絶対に便利だよな。

「ハッキリとはわからないけど、漆黒の牙シュヴァルツファングはレーベンの実が好物みたい」
「なるほど。それなら確かに実を取ろうとしている奴を排除してもおかしくないな」
「それとレーベンの実は育てるのがとても難しいの。大樹になってしまえば大丈夫だけど、種から芽になる前に枯れてしまうのよ」
「そうなんだ。それは最悪だな」

 レーベンの実の木がエルフの里にあれば、フォラン病のエルフもすぐに治療することが出来たはずだ。
 やはりレーベンの実を手に入れるためには漆黒の牙シュヴァルツファングを倒すしかないか。
 そして俺達は再び南西へと進んでいく。

「黒い霧が迫って来ました。ユートさんフィーナさんに魔法を」

 ノアの言う通り、前方から魔素が向かってきているのが確認出来た。
 このまま漆黒の牙シュヴァルツファングと遭遇しなければいいなと淡い考えを持っていたが、どうやら無理のようだ。

「ああ⋯⋯神聖セイクリッド防御魔法プロテクション

 俺はフィーナに神聖魔法をかける。
 するとフィーナの身体がうっすらと光輝き始めた。

「ありがと」
「どういたしまして」
「それにしても本当に便利な魔法よね⋯⋯神聖魔法って」
「そうだな。でも弱点じゃないけど、MPの消費が激しいからあまり連発は出来ないんだ」
「そうなの? そういえば初めて会った時にMPがないって言ってたわね」

 だから神聖魔法は慎重に使わないといけない。前みたいにMP切れで戦えませんでしたは洒落にならないからな。

「ユート⋯⋯かなりのスピードでこっちに向かってますよ。戦いの準備を」
「わかった。神聖身体強化魔法セイドリックブースト

 俺は全員に力とスピードが上がる付与魔法をかけた。

「フィーナはあそこの林に隠れてくれ」
「わかったわ。ユート、気をつけてね」
「ああ。必ず勝つぞ」
「もちろんよ」

 ちょうど平原の中に林があったので、フィーナにはその場所に移動してもらった。
 これで後は漆黒の牙シュヴァルツファングが来るのを待つだけだ。

 魔素が段々と濃くなってきた。
 普通の人間なら魔素を吸い込んでしまうと、咳や喉の痛みの症状が見られ、死に至る。だが俺とマシロとノアはセレスティア様の加護があるので効かない。フィーナも神聖魔法でプロテクトしている。
 そして前方に黒い何かが接近して来るのが目に入った。

「きたか」

 黒色の毛を持つ狼が迫ってくる。そして黒いオーラのようなものが漆黒の牙シュヴァルツファングを包んでいた。

「黒の法衣は纏ってるな」

 だけど俺は前回とは違う。

「今の俺にはディバインブレードがあるからな」

 俺は異空間から一振の剣を取り出し構えた。
 この神剣なら黒の法衣を破ることが出来るはずだ。

 こうして長くムーンガーデン王国とガーディアンフォレスト王国を苦しめていた漆黒の牙シュヴァルツファングとの戦いの火蓋が切って落とされるのであった。


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