猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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決戦前夜

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「それではフィーナの家に行くとするかのう」

 フェリアリア様は前方に向かって手をかざす。
 すると転移魔方陣が一瞬光ったように見えた。

「何をされたのですか?」
「それは魔方陣に乗ればわかることじゃ」

 大体想像はつくな。俺はここに来たときと同じ様に、リズの手を握りながら魔方陣へと足を踏み入れる。
 すると一瞬で景色が入れ替わり、頭の中で思い描いていた場所にたどり着いた。

「えっ? ここって私の家!」

 予想通り、ここはフィーナの家の前だ。

「そうじゃ。エルフの里限定じゃがどこへでも行くことが出来るぞ」

 いやはや、フェリアリア様の力はとんでもないな。
 そういえば、セレスティア様も転移の魔法を使っていたな。魔方陣タイプではなかったけど。
 もし使えることが出来ればこの上なく便利だ。今度神聖魔法で出来ないか試してみるか。

「さあご飯じゃご飯。超特級で頼むぞ」
「わかりました」

 フィーナとフェリアリア様は家の中へと入っていく。
 だがすぐにフェリアリア様だけ戻ってきた。

「あの愚か者は一人では転移魔方陣を使えんようにしてある。誰かエルフを寄越してさっさと捕縛するがいい」
「承知しました」

 フェリアリア様はそれだけ言うと、また家の中に消えていった。

「ジグベルトのことはわしに任せてくれ。ユートはフェリアリア様と一緒にいてほしい」
「わかりました」

 最長老様はそう言い残すと、どこかに行ってしまった。神剣があった場所から出られないなら、ジグベルトは大丈夫だろう。
 後は最長老様に任せて俺は英気を養うとするか。まだ俺には漆黒の牙シュヴァルツファングを倒すという大きな仕事が残っているからな。

「ユート様、私達も行きましょう。ふふ⋯⋯フィーナさんのご飯、楽しみですね」

 ご飯が待ち遠しいのは、どうやらフェリアリア様だけではないようだ。もしフェリアリア様もたくさん食べるなら、フィーナの家の食料事情がどうなるか心配になってしまう。
 ここは俺からも食糧を進呈した方が良さそうだな。
 そして俺はフィーナの家に入り、異空間にある魚と肉を渡すのであった。

「うむ! 美味であったぞ」

 テーブルの上には、十人前の空の皿が乗っていた。
 フェリアリア様は久々の食事ということであったが、二人前の食糧で足りたようだ。
 神樹の妖精といっても、人と食事の量は変わらないらしい。

「さて、腹も膨れてきたし、気になることがあるから聞いてもいいかのう」
「なんでしょうか」

 フェリアリア様はこちらに視線を向けて話し始める。
 どうやら聞きたいことがあるのは俺のようだ。

「その聖獣と神獣はいつになったら喋るのじゃ」

 突然の指摘に、毛繕いしていたマシロと眠そうにしていたノアが目を見開く。

「いつから気づいていたんですか?」
「我は神樹な妖精じゃぞ。その程度最初からわかっておったわ」

 まさかバレているとは思わなかった。言っちゃ悪いが、マシロとノアは喋ったり魔法を使わなければ、誰がどう見ても猫と犬だからな。

「面倒く⋯⋯世話係から喋るなと言われていたからですよ」
「今、面倒くさいって言おうとしてただろ」
「気のせいです」

 マシロは相変わらずだな。相手が神樹の妖精だろうと何だろうと関係ないということか。

「黙っていた理由は想像つくがな」
「最初に言っておきますが、格は同じですから敬語は使いませんよ」

 エルフ達が崇拝している神樹の妖精と格が同じ?  実はマシロとノアは滅茶苦茶偉いということか。普通に話していたよ。

「そうじゃな。我もそんなものは望んではおらぬ。ただ誇り高き白虎とフェンリルが、まさか人間に懐くとは思わなかっただけじゃ」
「ふん⋯⋯誰と一緒にいようと、それは私の勝手ですよね」
「僕も自分から望んでユートさんと一緒にいます」
「ふむ⋯⋯二人ともユートのことが大好きということじゃな。けっこうけっこう」
  
 俺は良好な関係を築いていると思ってたけど、今のような言い方をするとマシロは⋯⋯

「べ、別にユートのことなんか好きじゃないですから!」

 絶対にツンデレを発動すると思ってた。マシロは素直じゃないからなあ。

「私もマシロちゃんとノアちゃんのこと大好きですよ」

 リズがいつものようにマシロとノアを抱きしめる。

「や、やめなさい!」
「わわっ!」

 マシロは嫌そうに、ノアは少し嬉しそうな表情をしていた。相変わらずリズは二人のことが大好きのようだ。

「仲が良くて羨ましいのじゃ⋯⋯我は五千年もの間、誰とも話すことが出来なかったからのう」
「フェリアリア様⋯⋯これからは私達が一緒ですよ」

 リズはマシロとノアを床に置いて両手を広げる。
 するとフェリアリアはリズの胸に優しく抱かれた。

「何だか少し恥ずかしいのう」
「ふふ⋯⋯恥ずかしいことなんて何もありません。これは仲良しの証ですから」
「仲良しの証か⋯⋯ならば我のことはフェリと呼ぶがよい」
「わかりました。フェリちゃん」
「うむ」

 ちゃん呼びするなんてさすがリズだな。リズの包容力には神樹の妖精も敵わないと言った所か。

「なんじゃ? その目は⋯⋯羨ましいのか?」
「⋯⋯別にそんなことないです」

 本当は羨ましいです。リズみたいな可愛い子に抱きしめられれば、大抵の男は幸せだろう。そういえば初めて会った時、抱きしめてくれる的なことを言っていたな。もしお願いすればやってくれるのだろうか。

「リズ、ユートも抱きしめてほしいと言っておるぞ」

 フェリアリア様が俺の思考を読んだのか、勝手に代弁する。
 俺の中では、「ユート様もぎゅっと抱きしめていいですか?」と言われることを想像したが⋯⋯

「ダ、ダメです! ユート様を抱きしめるなんて⋯⋯は、恥ずかしいです」

 リズは慌てふためいた感じで拒否してきた。
 予想とは違う行動に驚いてしまう。
 もしかして旅をすることで、世間一般の常識が身に付いてきたのだろうか。抱きしめてくれないのは残念だけど、リズに取っては喜ばしいことだ。

「余計なことを言って悪かったのう」
「いや、そんなに真剣に謝られると逆に困ってしまいます」

 何か俺がリズに嫌われているみたいになってしまうじゃないか。嫌われてないよな? 嫌われていないはずだ。
 リズに嫌われて抱きしめてもらえないなら、すごく悲しいぞ。

「そ、それよりフェリちゃんのことを色々聞きたいです」
「お、おお⋯⋯そうじゃな。我も話し相手がいなくて寂しかったからな」

 多少微妙な雰囲気になったが、この後は和やかな時間が流れ、そして就寝すると夜が明けるのであった。
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