猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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「こ、ここはどこですか!」

 リズが驚くのも無理もない。何故なら周囲には青空が拡がり、本来なら手に届くはずのない雲が目の前にあるのだ。

「たぶん神樹の上じゃないかな」
「神樹の上? 私達そんなに高い所まで来てしまったのですか!」

 転移魔法陣はすごいな。魔方陣さえ出来れば誰でも使える点がいい。

「フォッフォッフォ⋯⋯初めて来る者は驚いてくれるから楽しいのう」

 だから神剣がどこにあるか詳しく教えてくれなかったのか? 悪趣味だなあ。

「じゃがそちらの娘に比べて青年は反応がなくてつまらん」
「いやあ⋯⋯そんなこと言われても⋯⋯」

 何となく神剣は特別な所にあるんじゃないかと心構えをしていた。それに二回目の人生だから見た目十五歳でも大人だからな。

「まあよい。これが神剣だ」

 最長老様が地面を指差すとそこには一振の剣が刺さっていた。
 見た感じ神樹に刺さっているだけで、簡単に抜けそうな気がするけど。
 もしかして抜けないのではなく、滅茶苦茶重くて持ち上げることが出来ないとか?
 それともやはり何か特別な資格が必要なのだろうか⋯⋯例えば勇者とか。

「この五千年の間、今まで何人も力自慢や勇者と呼ばれる者が挑戦してきたが、ことごとく失敗している」

 最長老様は俺の考えを読んだのか、知りたかった答えを口にしてくれた。
 そうなると勇者の称号は関係ないということか。
 もし勇者の称号で神剣が抜けるとなると、ギアベルにその資格が出来てしまう。
 五千年間神樹に突き刺さった神剣が、ギアベルの手で抜けるなんてそんな未来は想像もしたくないな。
 きっとこれ見よがしに自慢してくるだろう。

 それにしてもさっきの言い方だと、最長老様は挑戦者達を実際に見てきたということだろうか。そうなるととんでもなく長生きをしているということになるな。

「それではユートよ。前へ」

 俺は最長老様の言葉に従って神剣の元へと向かう。
 とうとうこの時が来てしまったか。
 リズやノア、マシロから期待の視線が送られる。
 そして気のせいかもしれないが、フィーナからも同じ視線を感じるぞ。
 こうなったらやぶれかぶれだ。
 神剣だが何だか知らないけど、必ず抜いてみせるぞ。
 気持ちが落ち込んでいたら、抜けるものも抜けなくなる。
 俺は強気の姿勢で神剣に手を伸ばすが、背後から俺のやる気を削ぐ声が聞こえてきた。

「ちょっと待て!」

 ジグベルトが俺を押し退け、神剣の前に立つ。

「人族ごときに抜けるはずがない。ここは私が神剣を抜いてみせる」

 自信満々だな。それならジグベルトに抜いてもらおうじゃないか。俺としては異論はない。
 もし万が一⋯⋯いや、億が一神剣が抜けたとしても、それはそれで後悔はない。ジグベルトごときに抜ける剣なら、初めから俺には必要ないからだ。

「わかった。俺は後でいいよ」
「後があればいいがな」

 俺はジグベルトの勇姿? を見るため、一度下がる。

「わざわざここまで来たのは、そんなことをするためだったの?」
「そうだ。フィーナも神剣を掲げた俺を見れば、惚れ直すだろう」
「元々好きじゃないから惚れ直すも何もないけど」
「ぐっ!」

 フィーナはジグベルトをバッサリと切り捨てる。
 これは奇跡が起きても、フィーナがジグベルトを好きになることはなさそうだな。

「フィーナよ。もし神剣が抜けたら私と婚姻を結ぶと約束しろ」
「いいわよ。神剣が抜けたら婚姻でも何でもしてあげるわ」
「約束だぞ!」

 えっ? いいの? ジグベルトが剣を抜ける可能性はゼロじゃない。女神のイタズラで抜けるかもしれないぞ。

「フィーナさん。よろしいのですか?」
「ええ。神剣は五千年も抜けなかったのよ。ジグベルトに抜けるはずないじゃない」
「そうですね。女神セレスティア様は仰いました。あの無礼なエルフには神剣は抜けないでしょうと」
「その通りだわ」

 まあ俺もジグベルトに神剣が抜けるとは思っていない。お手並み拝見と行くか。

 ジグベルトは神剣を手に持ち、深呼吸をする。

「私の隠された力よ! 今こそ解き放つ時だ!」

 隠された力? そんなものがあったのか? これで神剣が抜けなければ、かなり恥ずかしいぞ。

「神剣よ。お前が待っていた持ち主はここにいる。さあその美しい剣身を私に見せてみろ」

 ジグベルトは力を入れて神剣を持ち上げようとする。だが残念ながら神剣はピクリとも動かないのであった。
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