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ベラベラ喋る奴ほど怪しいものだ
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「何だこの騒ぎは。何故森が燃えているのだ」
背後から平然と現れた人物。それはジグベルトだった。
森は数百メートルに渡って燃え尽きている。普通ならこのような状況を見たらもっと驚いてもいいと思うが。
「まさか人族が燃やしたのか! やはりこんな奴は里に入れるべきではなかった!」
「ジグベルト様、その逆です。彼が燃え広がった火を消してくれました」
「ふん! 確かに火を消したのはそいつかもしれない。だが火をつけたのはそいつじゃないとは言いきれない。 我らに恩をきせるために、自作自演をした可能性もあるぞ」
「ジグベルト! あなた何てことを!」
フィーナはジグベルトの言動に怒りを露にしている。
いきなり現れたと思ったら、こいつは何を言い出すんだ。俺に放火の罪を擦り付けるつもりなのか?
むしろジグベルトの方が怪しいと思うが。
「あなたこそ今朝早くフィーナの家の前にいましたよね? その後この火災があった方角に向かって行ったことはわかっていますよ」
「な、何のことだ」
この時俺はあることに気づいた。ジグベルトの服が黒く汚れていたのだ。
「おや、肩が煤で汚れていますよ? おかしいですね。あなたは今ここに来たばかりなのに、何故服が煤で汚れているのですか?」
「こ、これは⋯⋯今回の火災とは関係ない! 言いがかりをつけるなら不敬罪で切り捨てるぞ!」
もうこの状況証拠だけで犯人と決めつけてもいいだろ。しかし相手はこの国の公爵、これ以上確実な証拠もないのに問い詰めれば、何をしてくるかわからない。
「だが貴様だって犯人ではないというなら証拠を見せてみろ」
「昨日の夜から朝まで、私はずっと一緒にいたわ。それがユートがやっていない証拠よ」
「フィーナの言うことは信用出来ないな」
「なんですって!」
「その男が犯人なら、里に連れてきたフィーナも同罪になる。虚偽の報告をする可能性があるということだ」
認めたくはないが、確かに一利あるな。客観的に見れば、フィーナが嘘をついているという可能性も否定は出来ない。
「それなら私が証明しようじゃないか」
突如声が聞こえてきた方に視線を向けると、そこにはリズとマシロ、そしてステラさんがいた。
「どういうことだ」
「ここに来る前に話は聞いた。火がついたのは今から四、五十分前くらいらしいね。その時間なら私はフィーナやユートと一緒にいたよ」
「くっ!」
ステラさんの発言にジグベルトは悔しそうに顔を歪ませる。
「そうだよな。わざわざ自作自演でこんなことやらないよな」
「彼は里の恩人だ。俺は信じていたぞ」
「ステラさんが言うなら間違いないな」
どうやらステラさんは、かなりの人望を持っているようだ。これで俺の無実は証明された。
だがジグベルトの疑いは晴れてはいない。
しかしこれ以上証拠を見つけるのはむずかしいだろう。日本とは違って監視カメラなどないため、ジグベルトが否定するなら、そのまま犯人はわからないまま、事件は終わってしまう。
「ふん! 気にいらん! 私は今回の件を長老達に報告してくる」
形勢が不利だと判断したのか、ジグベルトは逃げるようにこの場を立ち去って行く。
やれやれ。ジグベルトが国の決定権を持つ立場じゃなくて、本当に良かったよ。
人族の国と同じだったら公爵家は絶大な権力を持っているから、このまま濡れ衣を着させられてもおかしくはないからな。
「グゥ~」
ジグベルトの去り行く方角に視線を向けていると、突然気の抜けた音が聞こえてきた。
今のはリズのお腹の音だな。
「も、申し訳ありません」
リズは恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして頭を下げる。
「ふふ⋯⋯そういえば朝食はまだだったわね。一度私の家に戻りましょう」
「そうだよ。私の持ってきた牛乳もまだ飲んでいないだろ? もし良かったら山菜と肉があるから持って行こうか?」
「本当? それは凄く助かるわ」
こうして俺達は何とか火事を消火することに成功し、朝食を取るためフィーナの家へと戻るのであった。
背後から平然と現れた人物。それはジグベルトだった。
森は数百メートルに渡って燃え尽きている。普通ならこのような状況を見たらもっと驚いてもいいと思うが。
「まさか人族が燃やしたのか! やはりこんな奴は里に入れるべきではなかった!」
「ジグベルト様、その逆です。彼が燃え広がった火を消してくれました」
「ふん! 確かに火を消したのはそいつかもしれない。だが火をつけたのはそいつじゃないとは言いきれない。 我らに恩をきせるために、自作自演をした可能性もあるぞ」
「ジグベルト! あなた何てことを!」
フィーナはジグベルトの言動に怒りを露にしている。
いきなり現れたと思ったら、こいつは何を言い出すんだ。俺に放火の罪を擦り付けるつもりなのか?
むしろジグベルトの方が怪しいと思うが。
「あなたこそ今朝早くフィーナの家の前にいましたよね? その後この火災があった方角に向かって行ったことはわかっていますよ」
「な、何のことだ」
この時俺はあることに気づいた。ジグベルトの服が黒く汚れていたのだ。
「おや、肩が煤で汚れていますよ? おかしいですね。あなたは今ここに来たばかりなのに、何故服が煤で汚れているのですか?」
「こ、これは⋯⋯今回の火災とは関係ない! 言いがかりをつけるなら不敬罪で切り捨てるぞ!」
もうこの状況証拠だけで犯人と決めつけてもいいだろ。しかし相手はこの国の公爵、これ以上確実な証拠もないのに問い詰めれば、何をしてくるかわからない。
「だが貴様だって犯人ではないというなら証拠を見せてみろ」
「昨日の夜から朝まで、私はずっと一緒にいたわ。それがユートがやっていない証拠よ」
「フィーナの言うことは信用出来ないな」
「なんですって!」
「その男が犯人なら、里に連れてきたフィーナも同罪になる。虚偽の報告をする可能性があるということだ」
認めたくはないが、確かに一利あるな。客観的に見れば、フィーナが嘘をついているという可能性も否定は出来ない。
「それなら私が証明しようじゃないか」
突如声が聞こえてきた方に視線を向けると、そこにはリズとマシロ、そしてステラさんがいた。
「どういうことだ」
「ここに来る前に話は聞いた。火がついたのは今から四、五十分前くらいらしいね。その時間なら私はフィーナやユートと一緒にいたよ」
「くっ!」
ステラさんの発言にジグベルトは悔しそうに顔を歪ませる。
「そうだよな。わざわざ自作自演でこんなことやらないよな」
「彼は里の恩人だ。俺は信じていたぞ」
「ステラさんが言うなら間違いないな」
どうやらステラさんは、かなりの人望を持っているようだ。これで俺の無実は証明された。
だがジグベルトの疑いは晴れてはいない。
しかしこれ以上証拠を見つけるのはむずかしいだろう。日本とは違って監視カメラなどないため、ジグベルトが否定するなら、そのまま犯人はわからないまま、事件は終わってしまう。
「ふん! 気にいらん! 私は今回の件を長老達に報告してくる」
形勢が不利だと判断したのか、ジグベルトは逃げるようにこの場を立ち去って行く。
やれやれ。ジグベルトが国の決定権を持つ立場じゃなくて、本当に良かったよ。
人族の国と同じだったら公爵家は絶大な権力を持っているから、このまま濡れ衣を着させられてもおかしくはないからな。
「グゥ~」
ジグベルトの去り行く方角に視線を向けていると、突然気の抜けた音が聞こえてきた。
今のはリズのお腹の音だな。
「も、申し訳ありません」
リズは恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして頭を下げる。
「ふふ⋯⋯そういえば朝食はまだだったわね。一度私の家に戻りましょう」
「そうだよ。私の持ってきた牛乳もまだ飲んでいないだろ? もし良かったら山菜と肉があるから持って行こうか?」
「本当? それは凄く助かるわ」
こうして俺達は何とか火事を消火することに成功し、朝食を取るためフィーナの家へと戻るのであった。
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