猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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ストーカー?

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 周囲はまだ薄暗く、まだ他の皆は夢の中だ。
 とりあえず俺の思い過ごしかもしれないから、ここは起こさずに俺達だけで対応しよう。

「何をしているかわかるか?」
「家の前に立っていますね。ただ何をしているかはわかりません」 

 こんな朝早くから散歩? こんな薄暗い中で?
 そして昨日程ではないけど窓の外には霧も見える。
 やはりこの時間に外にいるのはおかしいと見るべきだろう。

「クンクン⋯⋯クンクン⋯⋯」

 ノアが突然周囲の匂いを嗅ぎ始める。

「どうした?」
「いえ、僅かですが火の⋯⋯煙の匂いがするような⋯⋯でもどこかが燃えているという感じじゃないです」
「煙の匂いか⋯⋯」

 まさかこの家を燃やそうとしているのか?
 だけどさすがにどこかが燃えていたら、ノアが気づくだろう。

「あっ⋯⋯」
「どうした?」
「その人は東の方へと行ってしまいました」
「そうか」

 本当に何をしに来たんだ? もしかして好きな子に会えるかもしれないから家まで押し掛けてきたのか? 完全にストーカーじゃないか。
 そう。ノアが探知していたのはジグベルトだ。
 昨日長老の家へ行く前にジグベルトとすれ違った時、ノアに匂いを覚えてもらったのだ。
 ジグベルトはフィーナに振られてショックを受けていたので、もしかしたら何かよからぬことをするんじゃないかと、警戒してもらっていた。歪んだ恋心程怖いものはないからな。
 そしてさっきまで外にいたらしいが、何もせずどこかに行ってしまったようだ。
 う~ん⋯⋯何のためにここに来たんだ? 本当によくわからないぞ。でも何もせずに帰ったならとりあえず実害はないと考えていいのかな?

「ノア、朝早くに教えてくれてありがとう」
「ユートさんのお役に立てるならこれくらい何でもないです」

 こいつ。嬉しいことを言ってくれるじゃないか。
 俺はノア抱き上げ、感謝のハグをする。

「わわっ! 少し恥ずかしいです」
「これくらいで恥ずかしがるなんて可愛いなノアは」
「可愛いだなんてそんな⋯⋯」
「とりあえずジグベルトはどこかに行ったみたいだし、また寝ようか」
「⋯⋯はい」

 何故だかわからないけど、ノアは少し狼狽えていたな。もしかして抱きしめられるのが嫌だったのか? いや、リズがよくノアを抱きしめているけど、特に嫌がっているようには見えなかった。もしかして俺に抱きしめられるのが嫌だったのか? 
 そんなことないよな。さっきだって俺の役に立てて嬉しいって言ってくれたし。
 朝早かったから少し機嫌が悪かったのかな?
 俺はそう思うようにして、再び眠りにつくために目を閉じる。
 だがその閉じた目はすぐに開くことになった。

「あなた達もう起きてるの? 早いわね」

 突然小声で声をかけられ、俺とノアは身体を起こす。

「フィーナこそ早いね。いつもこんな時間に起きてるの?」
「だいたいこのくらいの時間には起きてるわ。もし起きるなら部屋を出ない?」
「そうだね」

 部屋には幸せそうにマシロを抱きしめて寝ているリズと、リズに抱きしめられて苦しそうなマシロの姿があった。
 うるさくしていたら起こしてしまうので、俺とノアは部屋を出てフィーナの後に続く。

「ユートさん、さっきあったことはフィーナさんに伝えますか?」

 ノアが俺の肩に乗り、小声で話しかけたきた。

「いや、余計な心配をかけたくないからフィーナには黙っておこう。もしもの時は俺とノアで何とかしよう」
「わかりました。ユートさんは優しいですね」
「そんなことないよ」

 傾国の姫と呼ばれ、フォラン病が広がったのフィーナのせいと言われている。両親もフォラン病で倒れ、自身の能力に関してもとても悩んでいた。そのような中、さらに心配事を増やすようなことはしたくないと思っただけだ。

 そして俺達はリビングに到着すると、ソファーに腰を掛けた。

「何か飲む? といっても水しかないけど」
「もらっても⋯⋯」

 トントン

 俺はフィーナの問いに答えようとしたら、玄関のドアがノックされた。

「は~い」

 フィーナは来客に対応するため、玄関へと向かう。
 まさかジグベルトが戻ってきたのか?
 俺はノアに視線を向ける。するとノアは首を横に振った。
 それならフィーナの知り合いが訪ねてきたということか。こんな朝っぱらに来るなんて嫌がらせか?
 どうしてもフィーナへの対応を見ると、他のエルフ達の印象は良いようには思うことは出来ない。
 そしてフィーナが玄関のドアを開けると、そこには中年のエルフの女性の姿があった。

「おはよう。フィーナが帰っているって聞いて、搾りたての牛乳を持ってきたんだ。飲むかい?」
「ステラさんありがと」

 フィーナはステラと呼ばれた女性を家の中に招き入れた。
 そしてステラさんと目が合ったので俺は立ち上がり、軽く会釈をする。

「あんたがフィーナが連れてきた人間かい。私はステラ、よろしく」
「え~と⋯⋯俺はユートです。よろしくお願いします」

 予想外に好意的だったから驚いてしまった。フィーナも家の中に招き入れたから親しい間柄なのだろうか。

「フィーナは気難しくて大変だろ? 私はフィーナが赤ちゃんの頃から面倒見てたんだ。何か知りたいことがあったらなんでも教えてあげるよ」
「ステラさんやめて! 恥ずかしいわ」

 フィーナさんはやめてと言っている割には笑顔だ。この二人が親しい仲であることが窺える。

「ステラさんは私の世話係だったの」
「なるほど。だからフィーナの赤ちゃんの頃から知っているのか」
「フィーナはこれまで浮いた話が一つもなくてね。男を家に泊めたって聞いてすっとんで来たんだ」
「余計なお世話よ! それにユートだけじゃなくてリズリットも泊めてるから!」
「なんだいつまんないねえ。あんたも牛乳飲むかい? おいしいよ」
「えっ、あ⋯⋯いただきます」

 ステラさんは豪快なおばちゃんって感じだな。ちょっと圧倒されてしまったぞ。

「フィーナ、少し肌寒いから牛乳を温めてあげな。私はこの兄ちゃんと話をしているから」
「わかったわ。でも余計なことを言ったら怒るから」

 フィーナは少し不機嫌な様子でキッチンへと向かう。

「それで色々聞きたいことがあるんだけど――」

 そしてフィーナがキッチンに行って五分程経つと、部屋の中が甘味のある匂いで充満してきた。
 その間俺は好きな食べ物や、好みのタイプ、フィーナはオムツが中々取れなかったとか色々な話をしたしされた。
 こんなに濃密な五分間は初めてで少し疲れたぞ。

「あら? 何か良い匂いがしますね」

 そして牛乳の匂いにつられたのか、リズがリビングに現れた。

「おはよう」
「おはようございますユート様⋯⋯こちらの方は?」
「フィーナの知り合いだって」
「初めまして、リズリットと申します」
「あらま。これまた礼儀正しい娘だね。もしかして貴族か王族かい? ちょっとあんたにも興味が出てきたよ」
「えっ? えっ?」

 リズはステラさんに強引に座らされ、質問責めにあっている。
 ここはステラさんの相手はリズに任せよう。
 俺は二人より少し離れた位置に座る。
 ふう⋯⋯リズには申し訳ないが、これで一息つけるな。
 だがそのような時間は俺にはなかった。
 何故ならノアが俺の胸に飛び込んできて、とんでもないことを口にしたからだ。

「ユートさん、何かが燃えている匂いがします」
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