猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
34 / 93
連載

ストーカー?

しおりを挟む
 周囲はまだ薄暗く、まだ他の皆は夢の中だ。
 とりあえず俺の思い過ごしかもしれないから、ここは起こさずに俺達だけで対応しよう。

「何をしているかわかるか?」
「家の前に立っていますね。ただ何をしているかはわかりません」 

 こんな朝早くから散歩? こんな薄暗い中で?
 そして昨日程ではないけど窓の外には霧も見える。
 やはりこの時間に外にいるのはおかしいと見るべきだろう。

「クンクン⋯⋯クンクン⋯⋯」

 ノアが突然周囲の匂いを嗅ぎ始める。

「どうした?」
「いえ、僅かですが火の⋯⋯煙の匂いがするような⋯⋯でもどこかが燃えているという感じじゃないです」
「煙の匂いか⋯⋯」

 まさかこの家を燃やそうとしているのか?
 だけどさすがにどこかが燃えていたら、ノアが気づくだろう。

「あっ⋯⋯」
「どうした?」
「その人は東の方へと行ってしまいました」
「そうか」

 本当に何をしに来たんだ? もしかして好きな子に会えるかもしれないから家まで押し掛けてきたのか? 完全にストーカーじゃないか。
 そう。ノアが探知していたのはジグベルトだ。
 昨日長老の家へ行く前にジグベルトとすれ違った時、ノアに匂いを覚えてもらったのだ。
 ジグベルトはフィーナに振られてショックを受けていたので、もしかしたら何かよからぬことをするんじゃないかと、警戒してもらっていた。歪んだ恋心程怖いものはないからな。
 そしてさっきまで外にいたらしいが、何もせずどこかに行ってしまったようだ。
 う~ん⋯⋯何のためにここに来たんだ? 本当によくわからないぞ。でも何もせずに帰ったならとりあえず実害はないと考えていいのかな?

「ノア、朝早くに教えてくれてありがとう」
「ユートさんのお役に立てるならこれくらい何でもないです」

 こいつ。嬉しいことを言ってくれるじゃないか。
 俺はノア抱き上げ、感謝のハグをする。

「わわっ! 少し恥ずかしいです」
「これくらいで恥ずかしがるなんて可愛いなノアは」
「可愛いだなんてそんな⋯⋯」
「とりあえずジグベルトはどこかに行ったみたいだし、また寝ようか」
「⋯⋯はい」

 何故だかわからないけど、ノアは少し狼狽えていたな。もしかして抱きしめられるのが嫌だったのか? いや、リズがよくノアを抱きしめているけど、特に嫌がっているようには見えなかった。もしかして俺に抱きしめられるのが嫌だったのか? 
 そんなことないよな。さっきだって俺の役に立てて嬉しいって言ってくれたし。
 朝早かったから少し機嫌が悪かったのかな?
 俺はそう思うようにして、再び眠りにつくために目を閉じる。
 だがその閉じた目はすぐに開くことになった。

「あなた達もう起きてるの? 早いわね」

 突然小声で声をかけられ、俺とノアは身体を起こす。

「フィーナこそ早いね。いつもこんな時間に起きてるの?」
「だいたいこのくらいの時間には起きてるわ。もし起きるなら部屋を出ない?」
「そうだね」

 部屋には幸せそうにマシロを抱きしめて寝ているリズと、リズに抱きしめられて苦しそうなマシロの姿があった。
 うるさくしていたら起こしてしまうので、俺とノアは部屋を出てフィーナの後に続く。

「ユートさん、さっきあったことはフィーナさんに伝えますか?」

 ノアが俺の肩に乗り、小声で話しかけたきた。

「いや、余計な心配をかけたくないからフィーナには黙っておこう。もしもの時は俺とノアで何とかしよう」
「わかりました。ユートさんは優しいですね」
「そんなことないよ」

 傾国の姫と呼ばれ、フォラン病が広がったのフィーナのせいと言われている。両親もフォラン病で倒れ、自身の能力に関してもとても悩んでいた。そのような中、さらに心配事を増やすようなことはしたくないと思っただけだ。

 そして俺達はリビングに到着すると、ソファーに腰を掛けた。

「何か飲む? といっても水しかないけど」
「もらっても⋯⋯」

 トントン

 俺はフィーナの問いに答えようとしたら、玄関のドアがノックされた。

「は~い」

 フィーナは来客に対応するため、玄関へと向かう。
 まさかジグベルトが戻ってきたのか?
 俺はノアに視線を向ける。するとノアは首を横に振った。
 それならフィーナの知り合いが訪ねてきたということか。こんな朝っぱらに来るなんて嫌がらせか?
 どうしてもフィーナへの対応を見ると、他のエルフ達の印象は良いようには思うことは出来ない。
 そしてフィーナが玄関のドアを開けると、そこには中年のエルフの女性の姿があった。

「おはよう。フィーナが帰っているって聞いて、搾りたての牛乳を持ってきたんだ。飲むかい?」
「ステラさんありがと」

 フィーナはステラと呼ばれた女性を家の中に招き入れた。
 そしてステラさんと目が合ったので俺は立ち上がり、軽く会釈をする。

「あんたがフィーナが連れてきた人間かい。私はステラ、よろしく」
「え~と⋯⋯俺はユートです。よろしくお願いします」

 予想外に好意的だったから驚いてしまった。フィーナも家の中に招き入れたから親しい間柄なのだろうか。

「フィーナは気難しくて大変だろ? 私はフィーナが赤ちゃんの頃から面倒見てたんだ。何か知りたいことがあったらなんでも教えてあげるよ」
「ステラさんやめて! 恥ずかしいわ」

 フィーナさんはやめてと言っている割には笑顔だ。この二人が親しい仲であることが窺える。

「ステラさんは私の世話係だったの」
「なるほど。だからフィーナの赤ちゃんの頃から知っているのか」
「フィーナはこれまで浮いた話が一つもなくてね。男を家に泊めたって聞いてすっとんで来たんだ」
「余計なお世話よ! それにユートだけじゃなくてリズリットも泊めてるから!」
「なんだいつまんないねえ。あんたも牛乳飲むかい? おいしいよ」
「えっ、あ⋯⋯いただきます」

 ステラさんは豪快なおばちゃんって感じだな。ちょっと圧倒されてしまったぞ。

「フィーナ、少し肌寒いから牛乳を温めてあげな。私はこの兄ちゃんと話をしているから」
「わかったわ。でも余計なことを言ったら怒るから」

 フィーナは少し不機嫌な様子でキッチンへと向かう。

「それで色々聞きたいことがあるんだけど――」

 そしてフィーナがキッチンに行って五分程経つと、部屋の中が甘味のある匂いで充満してきた。
 その間俺は好きな食べ物や、好みのタイプ、フィーナはオムツが中々取れなかったとか色々な話をしたしされた。
 こんなに濃密な五分間は初めてで少し疲れたぞ。

「あら? 何か良い匂いがしますね」

 そして牛乳の匂いにつられたのか、リズがリビングに現れた。

「おはよう」
「おはようございますユート様⋯⋯こちらの方は?」
「フィーナの知り合いだって」
「初めまして、リズリットと申します」
「あらま。これまた礼儀正しい娘だね。もしかして貴族か王族かい? ちょっとあんたにも興味が出てきたよ」
「えっ? えっ?」

 リズはステラさんに強引に座らされ、質問責めにあっている。
 ここはステラさんの相手はリズに任せよう。
 俺は二人より少し離れた位置に座る。
 ふう⋯⋯リズには申し訳ないが、これで一息つけるな。
 だがそのような時間は俺にはなかった。
 何故ならノアが俺の胸に飛び込んできて、とんでもないことを口にしたからだ。

「ユートさん、何かが燃えている匂いがします」
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。