猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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カッコ悪い男にはなりたくない

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 長老達の元へ向かう中、幾人ものエルフ達とすれ違うが、皆俺達やフィーナの誹謗を口にしていた。
 もう何を言われようが無視しているが、一つだけ気づいたことがあった。
 昨日俺達があったエルフってジグベルトだけだよな。
 それなのに人族がエルフの里にいることが広まっている。ということは、少なくとも俺達を陥れようとしているのは、ジグベルトで間違いない。
 本当陰湿な奴だ。そんな奴がフィーナと婚約を結びたいとか片腹痛いわ。
 何かやり返してやりたい所だが、相手は公爵家だ。下手なことをしてフィーナに迷惑をかける訳にはいかない。やはりここは傾国の姫と貶められたフィーナがレーベンの実を手に入れることが、一番の仕返しになるのか。
 俺は何か良い方法がないか考えていると、一つの集団が俺達に迫ってきた。

「噂をすればなんとやらというやつだな」

 ジグベルトが数人の仲間を連れて俺達の前に立ち塞がる。
 その表情は俺達が誹謗されているのを見て、悦に入っているように見えた。

「嫌われたものだな。しかし人族だから諦めるしかないだろう。このエルフの里にいること自体がおかしいのだ。早くここから出ていけ」
「ここからじゃなくてフィーナの家からじゃないのか?」
「貴様!」

 ジグベルトは顔を真っ赤にして激昂している。
 どうやら図星のようだ。
 人族が元々嫌いということもあるが、男である俺がフィーナの家に泊まることが不愉快なのだろう。

「男の嫉妬程醜いものはないぞ」
「うるさい! 貴様ごときがフィーナの側にいること自体許されぬことだ!」

 どうやら今の反応から、ジグベルトがフィーナのことを好きなのは間違いないな。

「もしかしてフィーナの悪い噂を率先して流しているのはお前なんじゃないか?」
「そ、そんなことはない!」

 今のどもった言い方で認めているようなものだけどな。

「そしてフィーナが弱った所を狙って、婚約に持ち込もうとしているだろ?」
「それは本当なの? 本当だったら気持ち悪いわ」
「ぐっ!」

 ジグベルトはフィーナに気持ち悪いと言われて、何も言えずにいる。

「とにかくあなたに構っている暇はないの。横を通らせてもらうわ」

 フィーナは言葉通りジグベルトの横を通り抜けて、長老達の所へ向かう。
 ジグベルトはさっきのフィーナの言葉がショックなのか俯いたままだ。
 俺もフィーナの後に続こうとするが、その前にやっておきたいことがある。

「ノア」

 俺はノアを抱きかかえ、あることをお願いする。
 そしてそのまま、フィーナを追いかけるのであった。

 ジグベルトと別れてしばらく歩いた頃。
 俺達は一つの屋敷に到着し中へと案内される。そして奥の部屋に通されると、そこには五人の老年なエルフがいた。

「最長老様と四人の長老の方々だ。失礼のないように」

 事前にフィーナに聞いていたが、エルフの国の決定権はこの五人にあるようだ。何かを決める時、この五人で決を取るらしい。つまりは神剣の元に行くには、三人以上が賛成を示さなくてはならない。
 そして王族は公務を行うことが仕事であり、この決定権に参加することは出来ないとのことだ。おそらくだけど、日本の皇族と同じ役割なのだろう。

「長老の方々、ここにいる者達は漆黒の牙シュヴァルツファングに襲われている私を助けてくれたわ。神剣の所まで連れて行きたいから許可をくれないかしら」

 長老達は最長老の元へと集まり、なにやら話をし始める。そして離れると結果を口にした。

「四対一でフィーナ王女の願いは否決された」

 四対一? 一応一人だけこちらに賛成してくれた人がいたのか。
  
「ではこれ以上用がなければ、部屋の外へと退出してください」

 残念だけどここは引くしかないだろう。駄々をこねてこれ以上人族の印象を悪くすることは避けたい。
 そして俺達は部屋を出るためにドアへと向かう。

「そこの青年、待ちなさい」

 突然背後から呼び止められたので、足を止める。
 すると最長老と呼ばれていた人がこちらへと向かってきた。

「さ、最長老が歩いた!」 
「バカな! この千年間、立ち上がることさえしなかった最長老が!」

 えっ? えっ? 千年ぶり? 嘘でしょ。その間トイレとかどうしてたの?
 俺は何故か下らない疑問が真っ先に頭に思い浮かんでしまった。

「面白い生き物を連れている」
「そ、そうですか?」

 最長老はマシロとノアに視線を向ける。
 もしかして白虎とフェンリルのことを知っているのか? 長い間生きたエルフなら、二つの種族のことを知っていてもおかしくないのかな?

「なるほど⋯⋯悪い人間ではなさそうだ」

 それだけ言うと最長老は元の席に戻っていった。
 いったいなんだったんだ? 最長老の行動にどんな意味があったのか理解出来なかった。
 そして俺達は、神剣を抜くための当てがなくなったため、一度フィーナの家に戻ることにした。

 長老達の元から帰ってきた後。漆黒の牙シュヴァルツファングを倒す方法を話し合ったが、良い案が浮かばなかったため、就寝することになった。

「ユートさん、ユートさん」

 そして朝日が世界を照らし始める前、俺は声が聞こえてきたため、目を開ける。
 すると耳元で囁くノアの姿が見えた。
 いくら早起きのノアでも、この時間に起きているのはおかしい。これは何かあったと見るべきか。

「どうしたノア?」
「例の人物が家の前にいます。もしかして何かするつもりなのかもしれません」

 突然のノアの言葉に、俺の意識は一気に覚醒するのであった。
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