猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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猫が二匹?

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 巨大な猫と言っても実際は猫ではない。人間⋯⋯というかエルフだ。
 エルフの女の子はマシロの気を引きたいのか、両手を頭の上に乗せて猫耳を作りながら話しかけていた。

「ミャミャ⋯⋯こっちに来るミャ」

 えっ? 何この可愛い生き物は。猫になりきって猫語で話すなんて反則でしょ。しかも猫になっているのがフィーナだから尚更だ。
 クールに見えたフィーナが猫語を喋るなんて、ギャップがありすぎるぞ。
 もしかして外に出ていったのは、マシロを追いかけるためだったのか?
 とりあえずこの可愛い生き物をもう少し見ていたいので、話しかけるのはやめておこう。

「抱っこさせてほしいニャ」

 フィーナは必死に懇願するが、人間? 嫌いなマシロはそっぽを向いている。
 リズでさえまだ懐いていないんだ。出会ったばかりのフィーナではマシロの心を開くのは難しいだろう。

「ミャンミャンミャー♪」

 猫語で歌を歌い出したぞ。これって本当にあのフィーナなのか? 何だかフィーナの姿をした別の生き物に見えてきた。

「もしかして食事が足りなくて機嫌が悪いニャ? 家に帰れば魚があるから食べるニャ?」
「ミャ~」

 魚があると言った途端、マシロが媚びを売るような声を出し、フィーナにすり寄り始めた。
 そしてさっきのツンぶりが嘘のように、フィーナに抱っこされていた。

 魚に釣られるなんて⋯⋯チョロすぎるぞ。
 何だか今の光景を見て、知らない人でも魚をくれればついていってしまいそうに見えた。
 まるで子供だな。
 だけどこんなこと言ったらマシロは怒り狂って、俺の顔面を引っ掻いてくるだろう。
 この時の俺は、マシロのチョロい姿とフィーナの可愛い姿に目を奪われいて、完全に油断していた。
 フィーナがマシロを抱きかかえたということは、魚をあげるために家に戻るということだ。ということは⋯⋯

 フィーナがマシロを抱っこしながら踵を返す。
 すると二人を覗いていた俺と目が合ってしまった。

「あっ!」
「えっ?」

 俺達の間で時が止まる。一秒、二秒と見つめ合い、十秒程時間が経つと、フィーナは色白い顔が真っ赤になり始めた。

「え~と⋯⋯それじゃあ俺は家に戻ろうかな」

 俺は方向転換し、来た道を引き返そうとする。しかし突然肩を掴まれ、その行動は阻止されてしまった。

「いいい、いつからそこに! も、もしかして見た!?」

 フィーナが顔を真っ赤にして訪ねてきた。
 どうするべきか。
 ここは見ていないと言った方がフィーナは安心するかもしれない。でもフィーナは何となく嘘をつく奴が嫌いなように感じた。
 これからエルフと友好を深めるためにも、嘘はいけないよな。
 ここは正直に話すとしよう。

「見たと言えば見たけど⋯⋯」
「そ、そう⋯⋯ちなみにどこから見てたの?」
「両手で猫耳を作って、ミャミャ⋯⋯こっちに来るミャって所から」
「ほとんど最初からじゃない!」

 フィーナは恥ずかしいのか両手で顔を隠して座り込んでしまった。

「でも可愛かったし、全然大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないわよ!」

 可愛かったり、怒ったりと忙しそうだな。クールなフィーナはどこかに行ってしまったようだ。

「とりあえず俺は家に戻るよ」

 俺はフィーナが恥ずかしがっている内に、この場から離れようとする。
 しかし回り込まれてしまった。

「このまま行かせる訳ないでしょ」

 フィーナがジリジリとこちらに詰め寄って来る。
 まさか口封じをするつもりか。
 今のフィーナからは殺気が漏れているし、何をしてもおかしくない。

「あなたさえ何とかすれば、私の秘密は保たれるの。こうなったら壁ドンで記憶を抹消するしか」
「壁ドンはそんな恐ろしい技じゃないぞ」

 もっとこうロマンチックな技じゃないのか? それに⋯⋯

「見ていたのは俺だけじゃないから」
「えっ? どういうこと!」 

 俺は思わず口を滑らしてしまった。そしてその言葉が真実であるかのようにマシロが喋ってしまう。

「早く魚を下さい。約束を違えるつもりですか?」
「えっ? えっ? 猫さんが喋った! 嘘でしょ!」

 俺は頭をかかえる。
 口を滑らした俺も悪いけど、なんでここで喋っちゃうのかなあ。食い意地が張りすぎだろ。
 もうこれは誤魔化すことは出来ないな。

「実は――」

 俺は観念して、マシロとノアの秘密をフィーナに伝えるのであった。
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