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栄養はどこへいく

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 驚いている驚いている。まあ初見の人は、まさかリズがこんなにいっぱい食べるとは思わないよな。

「その小さな身体のどこに五人前も食べる胃袋があるの⋯⋯はっ! まさかそういうこと!」

 今フィーナが何を考えているか俺にはわかる。チラリとリズの胸を見ていたから、食べた物の栄養がそこにいってるとでも思ったのだろう。女性だからまだいいが、これが男だったらセクハラ案件だ。

「ユート様、フィーナさんは何がわかったのでしょうか?」
「さ、さあ⋯⋯俺には何のことだかさっぱり」

 胸に栄養がいってるなんて、そんなこと言えるわけがない。
 だがこの時、マシロが冷たい目でこちらを見てきた。
 その目は「やれやれ。あのような脂肪の塊のどこがいいんだか。人間の雄は理解に苦しみます」と語っているようだった。
 それは人間じゃないマシロには一生わからないことだと言ってやりたいが、そんなことを口にしたら、女性陣に嫌われるのでやめておく。

「食事も終わったことだし、片付けををしようか」
「そうですね。食事はフィーナさんに作って頂いたので、洗い物は私がやります」
「それじゃあお願いしてもいいかしら」

 とりあえず胸の話題から逸らすことに成功した俺は、リズと共に食べた食器を洗い、片付け始める。
 するとマシロが俺の肩に乗り、散歩してくると小声で告げてきて、そのまま外に行ってしまった。
 まあここにいても暇だろうし、フィーナがいて喋れないからストレスを感じているのかもしれないな。

「ちょっと外に出てくるわ」

 フィーナは何か用があるのか、外に出ていってしまった。家主がいない家に、出会ったばかりの俺達を置いて行くなんて不用心だな。それとも俺達のことを信じてくれているのか?
 とりあえず今はフィーナの信頼を勝ち取るためにも、食器の片付けを終わらそう。

 そして食器を片付けた後、俺はマシロが気になって家の外へと向かった。だけど他のエルフに見つかると何を言われるかわからない。家の周辺を見て、マシロがいないなら帰ろう。
 そんな軽い気持ちで外に出たが、俺はこの後とんでもないものを見てしまう。

「さて、マシロはどこに行ったのかな」

 とりあえず家の周りをぐるりと回って、いなければ帰るか。
 俺は日が落ちて暗くなったエルフの里を歩く。すると歩き始めてからすぐにマシロらしき猫を見つけることが出来た。正確には見つけていないけど猫の鳴き声が聞こえて来たのだ。

「ミャーミャー」

 このまま真っ直ぐ行った所から聞こえるな。
 ん? でもおかしくないか? マシロは不用意に猫語で鳴くようなことはしないはず。

「もしかして他に誰かいるのか?」

 他のエルフと会った時に、いらぬ警戒を与えてしまうと思い、気配を消しながら鳴き声が聞こえる方へと向かう。

「ミャミャ! ミャー」

 何だか凄く楽しそうに鳴いているな。マシロってそんなキャラだっけ?
 俺はマシロの新たな一面に驚きつつも、鳴き声が聞こえる場所へとたどり着いた。

 すると木の陰の所にマシロを見つけることが出来たが、そこにはもう一匹巨大な猫の姿が目に入るのであった。

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