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フォラン病
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「私は⋯⋯ガーディアンフォレスト王国の王女ですから」
「えっ?」
王女⋯⋯だと⋯⋯にわかに信じられない話だ。王女が普通一人で漆黒の牙と戦うか?
だけど俺達を嵌めてエルフの国に連れていくメリットはないだろう。それにこれは勘だけど、何となくフィーナは嘘をついてないように思えた。
だけどだからといって、やれることをやらない訳にはいかない。万が一の時は俺だけじゃなく、仲間達が危険な目に遭うのだから。
「真実の目」
俺はスキルを口にすると、立体映像となってフィーナの能力が見えてきた。
名前:フィーナ・フォン・ガーディアンフォレスト
性別:女
種族:エルフ
レベル:32/120
好感度:B
力:77
素早さ:283
防御力:82
魔力:621
HP:162
MP:351
スキル:魔力強化D・弓技B 大地の恵み
魔法:水魔法ランク5
称号:ガーディアンフォレスト王国王女・森に愛されし者
やはりフィーナの言っていたことは真実だったようだ。
でもそうなると、本当に何で一人で漆黒の牙と戦っていたか気になってしまう。
「まあまあ⋯⋯私もムーンガーデン王国の王女だからお揃いですね」
リズはまるで同じペンを持っている友人のように話しかけていた。
「えっ? 本当に?」
「はい。改めまして私はリズリット・フォン・ムーンガーデンと申します」
「信じられない」
こっちとしても、エルフの国の王女様がこんな所にいることが信じられないけどな。
「フィーナ様は何故一人で漆黒の牙と戦っていらっしゃったのですか?」
物怖じしないリズが、俺が疑問に思っていたことを質問してくれた。
「戦いたくて戦っていた訳じゃないわ。襲ってきたから仕方なく戦っていたの。それと様付けなんて慣れていないからフィーナでいいわ」
ん? 様付けは慣れてない? 王女であるフィーナが? エルフの国では偉い人を様を付けて呼ばないのだろうか。
「それでしたら私のことはリズとお呼び下さい」
「気が向いたらね」
何だかフィーナはクールな感じがするなあ。それとも人間を完全に信用することが出来ないから、そっけないだけなのだろうか。
「あなた達こそ、何故未開の地にいたの? はっ! 若い男女二人⋯⋯王女⋯⋯許されぬ恋⋯⋯駆け落ち! ごめんなさい。何でもないわ」
このエルフの王女様は妄想が凄いな。このまま何も言わないと勘違いされたままになってしまいそうだ。
「俺達は漆黒の牙を倒しに来たんだ。このまま放っておくと魔素が王都まで来てしまうからね」
「確かに魔素は深刻な問題ね」
おそらくエルフの国でも魔素は放っておけない事案だろう。
「フィーナは何で未開の地にいたんだ?」
「私は⋯⋯レーベンの実を取りに来たのよ」
「レーベンの実? 聞いたことないな」
「この未開の地の⋯⋯漆黒の牙の住処付近の木に生る実よ。フォラン病に効く薬を作ることが出来るの」
「フォラン病⋯⋯また聞いたことのない言葉だ」
「エルフ特有の病気らしいから、知らなくて当然よ。身体が徐々に動かなくなって、やがて心臓も止まってしまうと言われているわ。自然治癒はしないからレーベンの実の薬に頼るしかないの」
なるほど。だから王女であるフィーナが危険を犯して実を取りに来たという訳か。
だけど一人で取りに行くなんて、無謀にも程があるぞ。
「しばらくフォラン病にかかる人はいなかったのに⋯⋯」
フィーナは沈痛な面持ちをしている。
フォラン病か。恐ろしい病気だな。それによりによって治療することが出来る薬が漆黒の牙の住処にあるとは。
これは益々漆黒の牙を倒さなくちゃならなくなったぞ。
そして数時間程歩き、日が暮れた頃。
「そろそろエルフの里につくわ」
先頭を行くフィーナが振り向き、語りかけてくる。
だが、自分の住んでいる場所に戻ってきたにしては表情が暗い。やはりレーベンの実を取ることが出来なかったからか。
「何か言われるかもしれないけど気にしないでね」
「えっ?」
この時は人間嫌いなエルフから、嫌なことでも言われるのかと思っていた。しかしエルフの里に着いた瞬間、その意味に俺は気づくのであった。
「えっ?」
王女⋯⋯だと⋯⋯にわかに信じられない話だ。王女が普通一人で漆黒の牙と戦うか?
だけど俺達を嵌めてエルフの国に連れていくメリットはないだろう。それにこれは勘だけど、何となくフィーナは嘘をついてないように思えた。
だけどだからといって、やれることをやらない訳にはいかない。万が一の時は俺だけじゃなく、仲間達が危険な目に遭うのだから。
「真実の目」
俺はスキルを口にすると、立体映像となってフィーナの能力が見えてきた。
名前:フィーナ・フォン・ガーディアンフォレスト
性別:女
種族:エルフ
レベル:32/120
好感度:B
力:77
素早さ:283
防御力:82
魔力:621
HP:162
MP:351
スキル:魔力強化D・弓技B 大地の恵み
魔法:水魔法ランク5
称号:ガーディアンフォレスト王国王女・森に愛されし者
やはりフィーナの言っていたことは真実だったようだ。
でもそうなると、本当に何で一人で漆黒の牙と戦っていたか気になってしまう。
「まあまあ⋯⋯私もムーンガーデン王国の王女だからお揃いですね」
リズはまるで同じペンを持っている友人のように話しかけていた。
「えっ? 本当に?」
「はい。改めまして私はリズリット・フォン・ムーンガーデンと申します」
「信じられない」
こっちとしても、エルフの国の王女様がこんな所にいることが信じられないけどな。
「フィーナ様は何故一人で漆黒の牙と戦っていらっしゃったのですか?」
物怖じしないリズが、俺が疑問に思っていたことを質問してくれた。
「戦いたくて戦っていた訳じゃないわ。襲ってきたから仕方なく戦っていたの。それと様付けなんて慣れていないからフィーナでいいわ」
ん? 様付けは慣れてない? 王女であるフィーナが? エルフの国では偉い人を様を付けて呼ばないのだろうか。
「それでしたら私のことはリズとお呼び下さい」
「気が向いたらね」
何だかフィーナはクールな感じがするなあ。それとも人間を完全に信用することが出来ないから、そっけないだけなのだろうか。
「あなた達こそ、何故未開の地にいたの? はっ! 若い男女二人⋯⋯王女⋯⋯許されぬ恋⋯⋯駆け落ち! ごめんなさい。何でもないわ」
このエルフの王女様は妄想が凄いな。このまま何も言わないと勘違いされたままになってしまいそうだ。
「俺達は漆黒の牙を倒しに来たんだ。このまま放っておくと魔素が王都まで来てしまうからね」
「確かに魔素は深刻な問題ね」
おそらくエルフの国でも魔素は放っておけない事案だろう。
「フィーナは何で未開の地にいたんだ?」
「私は⋯⋯レーベンの実を取りに来たのよ」
「レーベンの実? 聞いたことないな」
「この未開の地の⋯⋯漆黒の牙の住処付近の木に生る実よ。フォラン病に効く薬を作ることが出来るの」
「フォラン病⋯⋯また聞いたことのない言葉だ」
「エルフ特有の病気らしいから、知らなくて当然よ。身体が徐々に動かなくなって、やがて心臓も止まってしまうと言われているわ。自然治癒はしないからレーベンの実の薬に頼るしかないの」
なるほど。だから王女であるフィーナが危険を犯して実を取りに来たという訳か。
だけど一人で取りに行くなんて、無謀にも程があるぞ。
「しばらくフォラン病にかかる人はいなかったのに⋯⋯」
フィーナは沈痛な面持ちをしている。
フォラン病か。恐ろしい病気だな。それによりによって治療することが出来る薬が漆黒の牙の住処にあるとは。
これは益々漆黒の牙を倒さなくちゃならなくなったぞ。
そして数時間程歩き、日が暮れた頃。
「そろそろエルフの里につくわ」
先頭を行くフィーナが振り向き、語りかけてくる。
だが、自分の住んでいる場所に戻ってきたにしては表情が暗い。やはりレーベンの実を取ることが出来なかったからか。
「何か言われるかもしれないけど気にしないでね」
「えっ?」
この時は人間嫌いなエルフから、嫌なことでも言われるのかと思っていた。しかしエルフの里に着いた瞬間、その意味に俺は気づくのであった。
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