猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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聖女の力?

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「もしかしてあれが魔素ですか? 凄い勢いでこちらに迫ってきています」

 ノアの言うとおり、東側から猛スピードで黒い魔素が向かってくる。
 俺やマシロやノアはともかく、リズが魔素を吸ってしまうのはまずい。
 俺は慌てて魔法を唱えようとするが、その前にリズの元に魔素が到達してしまった。
 だがこの時予想外のことが起こる。
 リズにまとわりついていた魔素は一瞬にして消えてしまったのだ。

「リズ⋯⋯それはいったい⋯⋯」

 リズの身体がほのかに光を発しているのだ。状況からしてこの光が魔素を消失させたように見えるが⋯⋯

「わ、私にもわかりません!」

 リズもどうしてこうなっているのかわからず、狼狽えていた。これはリズが意図的にやっている訳じゃなさそうだ。

「これは神託を持つリズのために、セレスティア様が慈悲を与えて下さったのでは?」
「そうかな? マシロの言うこともわからないでもないけど⋯⋯セレスティア様は何か言ってるの?」
「いえ、セレスティア様は何も仰っていません」

 もし何かセレスティア様がしたなら、神託で授けているような気がするけど、それもなしか。
 そうなると考えられるのは⋯⋯

「聖女の力じゃないかな?」
「「「聖女?」」」
「そうだ。リズには聖女の称号があったから、その力で魔素を防いでいるんじゃないか」
「私が聖女⋯⋯」

 この反応を見る限り、リズは自分が聖女だということを知らなかったようだ。
 聖女はセレスティア様の代弁者とも呼ばれる存在だから、よくよく考えると神託が使えて当然だったんだな。

「なんにせよリズに魔素が効かないことは間違いなさそうだ。このまま魔素が濃い場所へと向かおう。そこに漆黒の牙シュヴァルツファングがいるはずだ」
「はい」

 そして俺達はさらに東へと向かう。
 すると魔素が濃くなり、少し視界も悪くなってきた。
 しかしリズの周囲だけは一切の魔素がなく、視界も良好であった。

「魔素が煩わしいですね。仕方ないです」

 マシロは魔素を嫌ったのか、俺の肩からリズの肩に移動する。

「今だけは、私を運ぶ権利をリズにあげます」
「マシロちゃん⋯⋯とうとう私の愛が通じたのですね」

 リズはマシロが自分から来てくれて嬉しいのか、感極まっていた。
 まあ今まで邪険にされていたからな。動物好きのリズに取っては喜ばしいことだろう。

「調子に乗らないで下さいね。今だけですから」
「今だけなんて意地悪なこと言わないで下さい。私はいつでもウェルカムですから」
「ふん」

 残念だけどリズの愛はまだマシロには届いていないようだ。だけど少しずつ二人の距離は縮まっているように感じる。二人が本当の意味で仲良しになるのは遠くないだろう。

「止まりなさい」
「止まって下さい」

 和やかな雰囲気だったが、突然マシロとノアが真剣な表情を浮かべ、制止するよう求めてきた。

「二人ともどうした?」
「ここから一キロ程いった所に何かがいます」
「でもこれって⋯⋯」

 何かとは漆黒の牙シュヴァルツファングで間違いないだろう。俺達は討伐に来ているのだから、驚くことではない。
 だけど二人はどこか困惑しているように見える。

「ノア」
「そうですね」

 何か二人でアイコンタクトのようなものを交わす。
 何だかとても気になるぞ。二人は何を感じ取っているのだろうか。

「ユート、リズ、急ぎますよ」
「何かあったのか?」

 マシロが何故か急ぐよう急かしてくる。

「誰かが漆黒の牙シュヴァルツファングと戦っています」
「「えっ?」」

 何もわからない俺とリズは、ノアの言葉に驚きの声をあげる。

「誰かが戦っている? 漆黒の牙シュヴァルツファングと?」
「そう言っています。しかもかなり劣勢のようです。このままだと死にますよ」
「死ぬ?」
「はい。ユートが助けたいなら急ぐべきです」
「わかった」

 漆黒の牙シュヴァルツファングと戦っている人がいるなんて、にわかに信じられない話だが、マシロとノアの感知能力は一級品だ。信じるに値する。

神聖身体強化魔法セイクリッドブースト

 俺は全員に強化魔法をかけて、漆黒の牙シュヴァルツファングがいると思われる場所へと駆ける。
 強化したことが風を切るようなスピードで目的地へと向かう。
 すると人の体躯の三倍はありそうな黒い狼と、弓矢を使って戦う少女の姿が目に入るのであった。
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