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ユートVSギアベル(3)
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「はあはあ⋯⋯お、女! 嘘をつくんじゃない! ユートが本気じゃないだと? 笑えない冗談だ」
さすがにリズはわかっているか。
リズの指摘は正しい。しかし完全に手を抜いている訳じゃない。
剣だけの技術なら俺とギアベルは同等だろう。だが決定的に違うものが二つあった。
「そうだな。リズの言う通り、俺はまだ本気で戦っていない」
「はっ! 強がりを言いやがって。それならお前の本気を見せてみろ! この勇者である俺が、容赦なく叩き潰してやろう」
「じゃあお言葉に甘えて⋯⋯神聖身体強化魔法」
俺は左手に魔力を込めて、自分自身に魔法をかける。
すると自分の力とスピードが強化されたことがわかった。
「ふん! 訳のわからない魔法を。それで強くなったと言いたいのか!」
ギアベルが上段から斬りかかってくる。
だが俺はその剣に合わせて横一閃になぎ払う。
するとキィンという甲高い音がなると共に、ギアベルの剣が宙を舞った。
「くっ! バカな! なんだこの力は」
ギアベルは後方へ下がると、剣を持っていた右手を左手で押さえる。
おそらくあまりの力に堪えきれず、右手が痺れてしまったのだろう。
「待っててやるよ。剣を拾ったらどうだ?」
ギアベルに取っては屈辱な言葉だろう。だけど剣を拾わなければ、自分の敗北が決定的になってしまう。
ギアベルは苦虫を噛み潰したよう顔で剣を拾う。
「い、今のは偶然だ。汗で手が滑って剣を離してしまっただけだ。調子に乗るなよ」
「それなら次は剣を離さないように気をつけるんだな」
俺とギアベルの決定的な差の一つが神聖魔法だ。この魔法がある限り、俺はギアベルに負けることはないだろう。
「ぬかせ!」
ギアベルが激昂しながら斬りかかってくる。
俺はその攻撃に対して受けに回ることにした。
「死ね死ね死ね死ね!」
俺は自分の剣を使って、ギアベルの剣を容易にに捌いていく。
さっきと同じ様に連続で斬りかかってくるが、その剣には鋭さがなく軽い。力がほとんど込められていないのだ。
「はあはあ⋯⋯くそくそっ!」
そしてギアベルは疲労で剣を振るうことが出来なくなってしまい、剣を地面に落としてしまった。
俺とギアベルの決定的な差の二つ目が体力だ。
ギアベルは少し剣を振るっただけで、明らかに息が乱れていたし、尋常じゃない汗をかいていたのだ。
「ギアベル⋯⋯最近鍛練をさぼってたんじゃないか?」
「はあはあ⋯⋯た、鍛練? そんなもの天才の俺には必要ない」
俺がギアベルのパーティーに入った時は、少なくとも鍛練をしていた。もしかして俺が強化魔法を使ってしまったばかりに、自分の力を過信してしまったのだろうか。
「だけどその結果がこれだ。鍛練をしなければどうなるか、わからない程バカじゃないだろ?」
俺はギアベルの首に剣を向ける。
「くっ! 何故だ! 何故このような結果に⋯⋯」
「一つだけ教えておくと、例え鍛練をしていたとしても俺には勝てなかったと思うぞ」
「そんなはずはない! 天才のこの俺が凡人のユートに負けるなどあり得ない話だ」
う~ん⋯⋯自分で言うのも何だけど、この圧倒的実力差がわからないのか? 妄想の自分を信じ、現実の自分からは目を逸らす。こう言っちゃ悪いかもしれないけど、皇帝陛下は子供の育て方を間違えたな。この先、もしギアベルが皇帝になったら帝国は滅びへと一直線に向かいそうだ。
ここは一度お灸を据えておいた方が帝国のためにはいいかもしれない。
俺は剣を鞘に納める。
「この決闘はユート様の勝ちですね」
「ちくしょう⋯⋯」
ギアベルは負けたことがショックなのか膝から崩れ落ちた。
だけど勘違いしては困る。勝負はまだ終わってないからな。
俺は両手の指の骨を鳴らしながらギアベルに迫る。
「ちょ、ちょっと待て。決闘は終わったんだろ」
「何を言ってるんだ? 俺を殺そうとしたくせに自分が窮地に陥ったら決闘は終わりって、都合が良すぎないか?」
「だが立会人もお前の勝ちだと言っていたじゃないか。女、ユートを止めろ」
しかしリズはギアベルと視線を合わせない。そして一言ポツリと呟く。
「女神セレスティア様は仰いました。愚かなる子羊の願いは無視するといいでしょうと」
「なんだと!」
「お前には勇者パーティーにいた頃の恨みもあるんだ。覚悟してもらうぞ」
「ひぃっ!」
俺は右手に拳を作り、ギアベルに見せつける。
「ま、まさかこの俺を殴るというのか」
「だったらなんだ? この一発で許してやろうと言ってるんだ。優しいだろ?」
ギアベルは後退るが、疲労のためか動きが鈍い。
「今までやりたい放題してきたんだ。少しはその報いを受けるがいい」
俺はギアベルの顔面に向かって、拳を放つ。
するとギアベルはなす術もなく拳を食らい、国境の壁まで吹き飛び、地面に倒れたまま、ピクリとも動かなくなるのであった。
まあ何だかんだ勇者だからこれで死ぬことはないだろう。
こうしてギアベルとの決闘は俺の勝利となり、勇者パーティーにいた時の恨みを晴らすことに成功するのであった。
さすがにリズはわかっているか。
リズの指摘は正しい。しかし完全に手を抜いている訳じゃない。
剣だけの技術なら俺とギアベルは同等だろう。だが決定的に違うものが二つあった。
「そうだな。リズの言う通り、俺はまだ本気で戦っていない」
「はっ! 強がりを言いやがって。それならお前の本気を見せてみろ! この勇者である俺が、容赦なく叩き潰してやろう」
「じゃあお言葉に甘えて⋯⋯神聖身体強化魔法」
俺は左手に魔力を込めて、自分自身に魔法をかける。
すると自分の力とスピードが強化されたことがわかった。
「ふん! 訳のわからない魔法を。それで強くなったと言いたいのか!」
ギアベルが上段から斬りかかってくる。
だが俺はその剣に合わせて横一閃になぎ払う。
するとキィンという甲高い音がなると共に、ギアベルの剣が宙を舞った。
「くっ! バカな! なんだこの力は」
ギアベルは後方へ下がると、剣を持っていた右手を左手で押さえる。
おそらくあまりの力に堪えきれず、右手が痺れてしまったのだろう。
「待っててやるよ。剣を拾ったらどうだ?」
ギアベルに取っては屈辱な言葉だろう。だけど剣を拾わなければ、自分の敗北が決定的になってしまう。
ギアベルは苦虫を噛み潰したよう顔で剣を拾う。
「い、今のは偶然だ。汗で手が滑って剣を離してしまっただけだ。調子に乗るなよ」
「それなら次は剣を離さないように気をつけるんだな」
俺とギアベルの決定的な差の一つが神聖魔法だ。この魔法がある限り、俺はギアベルに負けることはないだろう。
「ぬかせ!」
ギアベルが激昂しながら斬りかかってくる。
俺はその攻撃に対して受けに回ることにした。
「死ね死ね死ね死ね!」
俺は自分の剣を使って、ギアベルの剣を容易にに捌いていく。
さっきと同じ様に連続で斬りかかってくるが、その剣には鋭さがなく軽い。力がほとんど込められていないのだ。
「はあはあ⋯⋯くそくそっ!」
そしてギアベルは疲労で剣を振るうことが出来なくなってしまい、剣を地面に落としてしまった。
俺とギアベルの決定的な差の二つ目が体力だ。
ギアベルは少し剣を振るっただけで、明らかに息が乱れていたし、尋常じゃない汗をかいていたのだ。
「ギアベル⋯⋯最近鍛練をさぼってたんじゃないか?」
「はあはあ⋯⋯た、鍛練? そんなもの天才の俺には必要ない」
俺がギアベルのパーティーに入った時は、少なくとも鍛練をしていた。もしかして俺が強化魔法を使ってしまったばかりに、自分の力を過信してしまったのだろうか。
「だけどその結果がこれだ。鍛練をしなければどうなるか、わからない程バカじゃないだろ?」
俺はギアベルの首に剣を向ける。
「くっ! 何故だ! 何故このような結果に⋯⋯」
「一つだけ教えておくと、例え鍛練をしていたとしても俺には勝てなかったと思うぞ」
「そんなはずはない! 天才のこの俺が凡人のユートに負けるなどあり得ない話だ」
う~ん⋯⋯自分で言うのも何だけど、この圧倒的実力差がわからないのか? 妄想の自分を信じ、現実の自分からは目を逸らす。こう言っちゃ悪いかもしれないけど、皇帝陛下は子供の育て方を間違えたな。この先、もしギアベルが皇帝になったら帝国は滅びへと一直線に向かいそうだ。
ここは一度お灸を据えておいた方が帝国のためにはいいかもしれない。
俺は剣を鞘に納める。
「この決闘はユート様の勝ちですね」
「ちくしょう⋯⋯」
ギアベルは負けたことがショックなのか膝から崩れ落ちた。
だけど勘違いしては困る。勝負はまだ終わってないからな。
俺は両手の指の骨を鳴らしながらギアベルに迫る。
「ちょ、ちょっと待て。決闘は終わったんだろ」
「何を言ってるんだ? 俺を殺そうとしたくせに自分が窮地に陥ったら決闘は終わりって、都合が良すぎないか?」
「だが立会人もお前の勝ちだと言っていたじゃないか。女、ユートを止めろ」
しかしリズはギアベルと視線を合わせない。そして一言ポツリと呟く。
「女神セレスティア様は仰いました。愚かなる子羊の願いは無視するといいでしょうと」
「なんだと!」
「お前には勇者パーティーにいた頃の恨みもあるんだ。覚悟してもらうぞ」
「ひぃっ!」
俺は右手に拳を作り、ギアベルに見せつける。
「ま、まさかこの俺を殴るというのか」
「だったらなんだ? この一発で許してやろうと言ってるんだ。優しいだろ?」
ギアベルは後退るが、疲労のためか動きが鈍い。
「今までやりたい放題してきたんだ。少しはその報いを受けるがいい」
俺はギアベルの顔面に向かって、拳を放つ。
するとギアベルはなす術もなく拳を食らい、国境の壁まで吹き飛び、地面に倒れたまま、ピクリとも動かなくなるのであった。
まあ何だかんだ勇者だからこれで死ぬことはないだろう。
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