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食べ過ぎには注意
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建物は古いが、敷地は広いな。
教会の敷地は五十メートル四方はありそうだ。
これだけの土地があれば色々なことに活用出来るだろう。
「あっ! そういえばお名前をお伝えしていませんでしたね。私はマリアと申します」
「俺はユウトです」
マリアか⋯⋯聖母と呼ばれたマリアと同じ名前とは。教会のシスターにピッタリの名前だ。
そして俺はシスターの後に続き、一室に案内される。
「粗茶ですが」
「ありがとうございます」
俺は出された紅茶のカップに手を伸ばし口に入れる。
「本当に粗茶ですみません」
「いえ」
確かにシスターの言うように、茶葉をあまり使用していないのか紅茶は薄く、お湯に少し味がついている程度だ。
「シスターお腹空いたよ」
「僕達のご飯はまだあ」
「ちょっと待っててね。この後すぐに作るから」
子供達はシスターの服を掴み、朝食を要求している。
ここは孤児院のようなこともしているのか? だとしたら貧しい生活をしていてもおかしくはない。この紅茶が薄いのも納得できるな。
これは早々に聞きたいことを聞いた方がよさそうだ。
「さっきの人達は何なんですか?」
「それは⋯⋯」
シスターは俺の問いに言い淀む。
だが大体のことは予想できる。
ここは早く話を終わらせるために、こちらから指摘した方がいいか。
「元々あの人達がこの教会の権利書を持っていて、立ち退きを迫ってきた」
俺はチラリとシスターに視線を送るが反応はない。
「もしくはあの人達が権利書を手に入れて立ち退きを迫ってきた」
シスターの身体がビクッと震える。どうやら当たりのようだ。
「元々はネトおばあさんが教会の権利書をお持ちになっていて。ただ自分も年を取って来たから、権利書を教会に寄付をすると仰っていたのですが⋯⋯」
「亡くなっていつの間にか権利書はウォードとかいう人の物になっていた」
「どうしてわかったんですか!」
「偶然当たっただけですよ」
悪党が考えていることは予想しやすいからな。
「ネトおばあさんはこの辺りの地主で、身内の方もいらっしゃらないと聞いていたのですが、ある日ウォードという方が教会の土地の権利書と共にやってきて」
「譲渡証明書にはネトおばあさんの拇印が押されていたということですか?」
「そ、その通りです。もしかして事情を御存知だったのですか?」
「いや、本当に偶然当たっただけです」
ここまで予想が当たってしまうと、そのウォードとかいう男のことを疑わざるをえないな。
この世界では死因を知るための解剖など出来る者がいない。そのため余程強く首を絞めたり、刺し傷以外の方法で始末してしまえば、死因を調べる方法など不可能に近い。
そして死んだ後にネトおばあさんの親指を使って、判を押させればいいだけだ。
「私達も突然のことで困惑してしまって⋯⋯いったいどうすればいいのか⋯⋯」
金があれば他の土地に引っ越すことも出来るが、この状態を見る限り、それも無理なのだろう。
「ねえシスター⋯⋯僕達ここを出てかなきゃ行けないの?」
「みんなと一緒にいられなくなっちゃうのかな」
「嫌だよそんなの! 何とかならないの!」
幼い子供達が、シスターに抱きつき泣いている。
アゼリアとリラとどうすればいいのかわからないといった表情をしていた。
やれやれ。こんな姿を見たら何もしない訳には行かないじゃないか。
とりあえずまずはウォードについて調べてみるか。
万が一の確率かもしれないが、本当にネトおばあさんに土地を譲渡された可能性もあるからな。
だがそれをここで言う訳にはいかない。今の俺はただの少年なのだから。
しかしこの暗くなった空気をどうすれば消し去ることができるのか。
俺が悩んでいると突然部屋のドアがバンッ! と開いた。
「さあユウトさん! 今日こそは合格を頂きますよ! たくさん作ってきたので食べて下さい!」
現れたのはフローラだ。
まさか俺のことをストーカーのようにつけてきたんじゃないだろうな。
俺に気づかせないとは中々やるじゃないか。
いや、俺は尾行には細心の注意は払っていた。さすがに誰かにつけられるミスは犯してはいない。となると⋯⋯
そしてフローラの手には大きな弁当箱のような物を持っており、あの中にケンチャッキーが詰まっているかと思うとゾッとする。
まさか本当に食生活から俺を始末しようとしているんじゃないかと疑うレベルだ。
だが今は助かる。
俺は空気の読めないフローラに感謝する。
「これは俺一人じゃ食べられないな。良ければみんなで食べてくれないか」
「本当!?」
「お肉なんて久しぶりだよ!」
「滅茶苦茶旨そうだ!」
やはり腹が減っていては暗い気持ちになる。腹いっぱい食べることが出来れば、明るい気持ちになるのはどの世界でも共通事項だ。
そして子供達はフローラが持ってきたケンチャッキーを食べると、泣き顔が笑顔になるのであった。
教会の敷地は五十メートル四方はありそうだ。
これだけの土地があれば色々なことに活用出来るだろう。
「あっ! そういえばお名前をお伝えしていませんでしたね。私はマリアと申します」
「俺はユウトです」
マリアか⋯⋯聖母と呼ばれたマリアと同じ名前とは。教会のシスターにピッタリの名前だ。
そして俺はシスターの後に続き、一室に案内される。
「粗茶ですが」
「ありがとうございます」
俺は出された紅茶のカップに手を伸ばし口に入れる。
「本当に粗茶ですみません」
「いえ」
確かにシスターの言うように、茶葉をあまり使用していないのか紅茶は薄く、お湯に少し味がついている程度だ。
「シスターお腹空いたよ」
「僕達のご飯はまだあ」
「ちょっと待っててね。この後すぐに作るから」
子供達はシスターの服を掴み、朝食を要求している。
ここは孤児院のようなこともしているのか? だとしたら貧しい生活をしていてもおかしくはない。この紅茶が薄いのも納得できるな。
これは早々に聞きたいことを聞いた方がよさそうだ。
「さっきの人達は何なんですか?」
「それは⋯⋯」
シスターは俺の問いに言い淀む。
だが大体のことは予想できる。
ここは早く話を終わらせるために、こちらから指摘した方がいいか。
「元々あの人達がこの教会の権利書を持っていて、立ち退きを迫ってきた」
俺はチラリとシスターに視線を送るが反応はない。
「もしくはあの人達が権利書を手に入れて立ち退きを迫ってきた」
シスターの身体がビクッと震える。どうやら当たりのようだ。
「元々はネトおばあさんが教会の権利書をお持ちになっていて。ただ自分も年を取って来たから、権利書を教会に寄付をすると仰っていたのですが⋯⋯」
「亡くなっていつの間にか権利書はウォードとかいう人の物になっていた」
「どうしてわかったんですか!」
「偶然当たっただけですよ」
悪党が考えていることは予想しやすいからな。
「ネトおばあさんはこの辺りの地主で、身内の方もいらっしゃらないと聞いていたのですが、ある日ウォードという方が教会の土地の権利書と共にやってきて」
「譲渡証明書にはネトおばあさんの拇印が押されていたということですか?」
「そ、その通りです。もしかして事情を御存知だったのですか?」
「いや、本当に偶然当たっただけです」
ここまで予想が当たってしまうと、そのウォードとかいう男のことを疑わざるをえないな。
この世界では死因を知るための解剖など出来る者がいない。そのため余程強く首を絞めたり、刺し傷以外の方法で始末してしまえば、死因を調べる方法など不可能に近い。
そして死んだ後にネトおばあさんの親指を使って、判を押させればいいだけだ。
「私達も突然のことで困惑してしまって⋯⋯いったいどうすればいいのか⋯⋯」
金があれば他の土地に引っ越すことも出来るが、この状態を見る限り、それも無理なのだろう。
「ねえシスター⋯⋯僕達ここを出てかなきゃ行けないの?」
「みんなと一緒にいられなくなっちゃうのかな」
「嫌だよそんなの! 何とかならないの!」
幼い子供達が、シスターに抱きつき泣いている。
アゼリアとリラとどうすればいいのかわからないといった表情をしていた。
やれやれ。こんな姿を見たら何もしない訳には行かないじゃないか。
とりあえずまずはウォードについて調べてみるか。
万が一の確率かもしれないが、本当にネトおばあさんに土地を譲渡された可能性もあるからな。
だがそれをここで言う訳にはいかない。今の俺はただの少年なのだから。
しかしこの暗くなった空気をどうすれば消し去ることができるのか。
俺が悩んでいると突然部屋のドアがバンッ! と開いた。
「さあユウトさん! 今日こそは合格を頂きますよ! たくさん作ってきたので食べて下さい!」
現れたのはフローラだ。
まさか俺のことをストーカーのようにつけてきたんじゃないだろうな。
俺に気づかせないとは中々やるじゃないか。
いや、俺は尾行には細心の注意は払っていた。さすがに誰かにつけられるミスは犯してはいない。となると⋯⋯
そしてフローラの手には大きな弁当箱のような物を持っており、あの中にケンチャッキーが詰まっているかと思うとゾッとする。
まさか本当に食生活から俺を始末しようとしているんじゃないかと疑うレベルだ。
だが今は助かる。
俺は空気の読めないフローラに感謝する。
「これは俺一人じゃ食べられないな。良ければみんなで食べてくれないか」
「本当!?」
「お肉なんて久しぶりだよ!」
「滅茶苦茶旨そうだ!」
やはり腹が減っていては暗い気持ちになる。腹いっぱい食べることが出来れば、明るい気持ちになるのはどの世界でも共通事項だ。
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