39 / 54
三人目の解放者
しおりを挟む
オルタンシアはアーホの攻撃を受け止めたことで、体勢も崩れている。
コンマ数秒後には間違いなく死が訪れるだろう。
だが!
「やらせない」
俺は剣を受け止め、先程オルタンシアが食らったように、アーホの隙だけの腹部目掛けて蹴りを入れる。
するとアーホを後方へと下げることに成功した。
「何奴!」
「貴様に名乗る名はない」
今はアーホに構っている暇はない。
俺は沈痛な面持ちをしているオルタンシアに視線を向ける。
「もう一度聞く⋯⋯手を貸すか?」
「わ、私の手で⋯⋯絶対に父の仇を!」
ダメだ。オルタンシアはこの後に及んでまだ自分の手で決着をつけようとしている。
その心意気は嫌いではないが頭に血が昇っているのか、アーホとの実力差もわかっていないようだ。
仕方ない。ここは現実というのをわからせてやるとしよう。
「お前が今成さねばならないことはなんだ?」
「成さねばならないこと? それは⋯⋯父の仇を取ることです!」
「違うな」
「違わなくない! あなたに何がわかるのですか!」
「オルタンシアが成さねばならないことは、何を差し置いても⋯⋯どんな手段を使ってでもアーホに勝つことだ。今のお前では九十九%負けるぞ」
「それなら⋯⋯あなたと一緒に戦えば勝てるというのですか!」
「いや、戦うのはお前一人だ。俺が勝てる手段を授けてやる」
「本当ですか? 父の仇を討てるなら悪魔との契約だってしてみせます!」
「その言葉、忘れるなよ」
俺はオルタンシアの唇に口づけをかわす。
「ななな、何を!」
オルタンシアは突然の出来事に俺を突き放すが、俺は構わず再びキスをする。
するとオルタンシアは抵抗をやめ、頬を赤らめて俺を受け入れた。
初めて年相応の反応を示したな。その行動は可愛らしく見えるが今はじっくりと眺めている暇はない。
オルタンシアの能力が解放され、俺達を中心に風が舞い上がる。
「こ、これは⋯⋯力が溢れてきます」
「その力を持ってアーホを倒せ。そしてあの手に持っている剣を奪い、俺の元へと届けてくれ」
「わかりました!」
オルタンシアは勢いよく動き出し、手放した剣を拾う。その周囲には先程まで纏っていた黒い霧は見られない。
やはりそういうことか。俺は解放の能力を少しだけ理解することが出来た。
さて、こっちはオルタンシアに任せて俺は元凶の方へと移動するか。そろそろ動きがありそうだ。
俺は急ぎ闘技場の舞台へ向かう。
すると黒い霧は、銅像があった場所を中心に集まり始めていた。
「くそっ! 忌々しい霧め! 私の邪魔をするな!」
リシャールが何やら喚いているが、霧が濃くて何も見えない。しかしクーソと俺の周囲にはには霧がない。
そしてリアとオルタンシアの二人もだ。
おそらくだがクーソの剣を奪うため、隠れて隙を窺っているフローラの周囲にも霧はないはず。
何故ならこの霧は闇の属性を持ち、俺達は聖なる加護を受けているからだ。
俺は一度死んだ後、女神の力を使って転生したことで聖なる力を授かった。
その俺の解放の力を受け取ったことで、リア、フローラ、オルタンシアも聖属性を得ることが出来たと考えられる。
そしてアーホとクーソが持っている剣も、聖の属性を持っているため、周囲に黒い霧がないのだ。
俺は二人が持っている剣を以前とある宝物庫で見たことがある。確か魔物を封印する力を持っていたはずだ。
そのため二人が銅像を破壊して霧が発生した。その答えは一つしかない。
「あれ? 霧がなくなっていくぞ」
「今のうちに逃げろ!」
そして観客達を覆っていた霧は完全に消え去り、全て銅像があった場所に集束した。
「霧がなければこちらのものだ。クーソよ、覚悟するがいい」
「覚悟するのはリシャール王子、あなたの方だ」
「なんだと!」
「さあ見るがいい! これがお前達王族を滅ぼす者だ!」
クーソが高らかな宣言をすると、霧は空中で人の形をつかさどる。しかしその姿は黒いモヤがかかっており、ハッキリと認識することが出来ない。わかることといえば右手に大きな鎌を持ち、背中に壺を背負っていることくらいだ。
「まるで亡霊だな」
だがその表現はある意味正しいだろう。何故なら⋯⋯
「それが貴様の秘密兵器というわけか。魔物ごとき、私が切り裂いてくれるわ!」
「やはり王族には何も伝わっていないようだ。この魔物をただの魔物だと思うなよ」
クーソは不敵な笑みを浮かべる。
「これはかつて王国を混乱に陥れた⋯⋯ファントムマスターゼノスだ!」
コンマ数秒後には間違いなく死が訪れるだろう。
だが!
「やらせない」
俺は剣を受け止め、先程オルタンシアが食らったように、アーホの隙だけの腹部目掛けて蹴りを入れる。
するとアーホを後方へと下げることに成功した。
「何奴!」
「貴様に名乗る名はない」
今はアーホに構っている暇はない。
俺は沈痛な面持ちをしているオルタンシアに視線を向ける。
「もう一度聞く⋯⋯手を貸すか?」
「わ、私の手で⋯⋯絶対に父の仇を!」
ダメだ。オルタンシアはこの後に及んでまだ自分の手で決着をつけようとしている。
その心意気は嫌いではないが頭に血が昇っているのか、アーホとの実力差もわかっていないようだ。
仕方ない。ここは現実というのをわからせてやるとしよう。
「お前が今成さねばならないことはなんだ?」
「成さねばならないこと? それは⋯⋯父の仇を取ることです!」
「違うな」
「違わなくない! あなたに何がわかるのですか!」
「オルタンシアが成さねばならないことは、何を差し置いても⋯⋯どんな手段を使ってでもアーホに勝つことだ。今のお前では九十九%負けるぞ」
「それなら⋯⋯あなたと一緒に戦えば勝てるというのですか!」
「いや、戦うのはお前一人だ。俺が勝てる手段を授けてやる」
「本当ですか? 父の仇を討てるなら悪魔との契約だってしてみせます!」
「その言葉、忘れるなよ」
俺はオルタンシアの唇に口づけをかわす。
「ななな、何を!」
オルタンシアは突然の出来事に俺を突き放すが、俺は構わず再びキスをする。
するとオルタンシアは抵抗をやめ、頬を赤らめて俺を受け入れた。
初めて年相応の反応を示したな。その行動は可愛らしく見えるが今はじっくりと眺めている暇はない。
オルタンシアの能力が解放され、俺達を中心に風が舞い上がる。
「こ、これは⋯⋯力が溢れてきます」
「その力を持ってアーホを倒せ。そしてあの手に持っている剣を奪い、俺の元へと届けてくれ」
「わかりました!」
オルタンシアは勢いよく動き出し、手放した剣を拾う。その周囲には先程まで纏っていた黒い霧は見られない。
やはりそういうことか。俺は解放の能力を少しだけ理解することが出来た。
さて、こっちはオルタンシアに任せて俺は元凶の方へと移動するか。そろそろ動きがありそうだ。
俺は急ぎ闘技場の舞台へ向かう。
すると黒い霧は、銅像があった場所を中心に集まり始めていた。
「くそっ! 忌々しい霧め! 私の邪魔をするな!」
リシャールが何やら喚いているが、霧が濃くて何も見えない。しかしクーソと俺の周囲にはには霧がない。
そしてリアとオルタンシアの二人もだ。
おそらくだがクーソの剣を奪うため、隠れて隙を窺っているフローラの周囲にも霧はないはず。
何故ならこの霧は闇の属性を持ち、俺達は聖なる加護を受けているからだ。
俺は一度死んだ後、女神の力を使って転生したことで聖なる力を授かった。
その俺の解放の力を受け取ったことで、リア、フローラ、オルタンシアも聖属性を得ることが出来たと考えられる。
そしてアーホとクーソが持っている剣も、聖の属性を持っているため、周囲に黒い霧がないのだ。
俺は二人が持っている剣を以前とある宝物庫で見たことがある。確か魔物を封印する力を持っていたはずだ。
そのため二人が銅像を破壊して霧が発生した。その答えは一つしかない。
「あれ? 霧がなくなっていくぞ」
「今のうちに逃げろ!」
そして観客達を覆っていた霧は完全に消え去り、全て銅像があった場所に集束した。
「霧がなければこちらのものだ。クーソよ、覚悟するがいい」
「覚悟するのはリシャール王子、あなたの方だ」
「なんだと!」
「さあ見るがいい! これがお前達王族を滅ぼす者だ!」
クーソが高らかな宣言をすると、霧は空中で人の形をつかさどる。しかしその姿は黒いモヤがかかっており、ハッキリと認識することが出来ない。わかることといえば右手に大きな鎌を持ち、背中に壺を背負っていることくらいだ。
「まるで亡霊だな」
だがその表現はある意味正しいだろう。何故なら⋯⋯
「それが貴様の秘密兵器というわけか。魔物ごとき、私が切り裂いてくれるわ!」
「やはり王族には何も伝わっていないようだ。この魔物をただの魔物だと思うなよ」
クーソは不敵な笑みを浮かべる。
「これはかつて王国を混乱に陥れた⋯⋯ファントムマスターゼノスだ!」
0
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。
つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。
そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。
勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。
始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。
だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。
これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。
※他サイトでも公開
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる