異世界を裏から支配する~表舞台は信頼できる仲間に任せて俺は無能を装って陰で暗躍する~

マーラッシュ

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予想通りの結果

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「せ、先日見た時よりさらに速いです」

 フローラ程の驚きは俺にはなかった。
 何故なら昨日オルタンシアの戦いを見ていたからだ。それに昨日と比べて少しスピードが抑えられていたからな。

「やはり優勝はオルタンシアちゃんで間違いないだろう」
「でもアーホ様もかなりの実力者だぞ」
「もしかしたら因縁の対決があるかもしれないな」

 本当に二人の対決が実現したら、死人が出るかもしれないな。
 大会の規定では故意に人を殺める行為は禁止となっているが、裏を返せば故意じゃなければ人を殺めても仕方ないということだ。
 実際に過去の大会では何名か亡くなっているし、その罪に問われてはいない。
 二人の対決を見てみたいと思うが俺の予想では⋯⋯

「次はあのアーホとかいう貴族の出番ですよ」

 オルタンシアが勝利した後、数試合行われていよいよアーホの出番となった。
 観客達の話ではアーホは実力者だということだが、果たして⋯⋯

「では次の試合はアーホ対イーヌの試合になります」

 イーヌが素早く舞台に上がるのに対して、アーホはゆっくりと舞台へ向かう。
 強者の余裕というやつか。
 これで弱者だったら笑えるところだ。

「それでは⋯⋯はじめ!」

 そして審判開始の合図と共にイーヌがアーホに襲いかかる。
 アーホは剣を横一閃に斬り払うと、イーヌの剣は無惨にも折れてしまい、勝負があった。
 これは先程あったオルタンシアの試合展開と同じだ。おそらく意識して相手の剣を折ったのだろう。
 だがこの後の展開は違った。

「ふっ⋯⋯ザコが! このアーホ様に剣を向けるなど万死に値する」

 アーホは自分も剣を手放し、丸腰になったイーヌに対して連続で拳を繰り出したのだ。

「げはっ! がはっ! ぶべっ!」

 そしてイーヌはアーホの拳を避けることが出来ず、顔面に食らい続けている。

「ちょ、ちょっとユウトさん。もう試合の決着はついたのでは⋯⋯」

 フローラの言うとおり、本来ならイーヌの剣を斬り落とした所で勝負ありだが、アーホも剣を捨てたのだ。拳と拳の戦いになったのだから審判は試合を止めるわけにはいかない。
 だが⋯⋯

「これはひどいな」
「もうあの人、気絶してるんじゃ⋯⋯」

 イーヌの意識は既にないだろう。しかしアーホが左右から殴り続けているため、倒れることが出来ないでいる。
 このままだとイーヌは殴り殺されるかもしれない。

 観客達もアーホのやっていることに気づいたのか、悲痛な表情で試合を見ていた。
 本当は大声で非難したい所だが、仮にも子爵家の弟だから口にすることが出来ないのだろう。

「そこまでよ!」

 だが誰もが口をつむぐ中、リアが声を上げた。

「そ、そこまでだ」

 審判もリアの声に従って試合終了の合図をする。
 するとイーヌはようやく地面に倒れることが出来た。

「救護班早く!」

 そしてリアの命令を受けた衛兵達が、イーヌの元に駆け寄る。
 イーヌは大丈夫だろうか? もしかしたらケガが治ったとしても、今日の出来事がトラウマになり、剣士として再起不能になるかもしれない。

「この程度の攻撃もかわせないとは。ここの舞台に上がる資格がないんじゃないか」

 やはりというかイーヌをいたぶっていたのはわざとだったようだ。

「もう決着はついていたはずです」
「ルールは破っていませんよ。それに敵はまだ生きているかもしれません。剣士として徹底的に相手を潰すのは普通のことです」
「彼の剣は折れていましたよね? それなのにあなたはわざと自分の剣を捨てて⋯⋯」 
「心外ですね。あれは手が痺れてしまったんですよ」
「たとえその言葉が本当だったとしてもやりすぎです。人の道を外れた行為をしていると、いつかあなた自身が同じ目に合いますよ」
「そのような相手がいるなら楽しみですね」

 王女であるリアの苦言に対してあくまで故意ではないと主張する。
 これはリアの言葉など聞く耳持たないというやつだな。
 それなら人の話を聞かないと後悔すると言うことを俺が教えてやろう。

 アーホの試合は終わり、次の試合へと進んで行く。
 そしてこの後の試合は、瞬く間に消化されるのであった。
 何故ならオルタンシアは、一瞬で相手の武器を破壊して勝利し、アーホに関しては不戦勝で勝ち上がっているからだ。
 こうして明日の決勝戦は、下馬評通りオルタンシア対アーホに決定し、一日目の神武祭は終わりを遂げるのであった。
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