15 / 54
二人目の解放者
しおりを挟む
ボーゲンの襲撃があった二日後の早朝。
昨日は一昨日と同じ様に多くの客がフローラの店に訪れたが、スタッフ達も少し仕事に慣れてきたこともあり、上手く業務を回すことができた。
そしてさらに1週間が経った頃、リアから1つの報告が入った。
「ボーゲンですがフローラさんの店に侵入、お墨付きに手を出そうとしたことにより、死罪となりました。持っていた財産は姪であるフローラさんの物になります」
「教えて頂きありがとうございます」
想定通りの展開だ。ボーゲンには親族が姪であるフローラしかいなかった。従って財産はフローラの物になるのは必然だ。これで次の計画に移れる。
「これで⋯⋯これでお父さんの店の名前を取り戻すことができます」
そう、フローラの目的の1つに、店の名前を取り戻すということがあった。そのため、今フローラの店には正式な名前がない。サレン商店という名前をつけるためにあえて店名をつけなかったのだ。
フローラからそのことを相談された時、俺の中ではボーゲンの店を潰す手段がいくつもあったため、すぐに国王からお墨付きを貰える策を出した。
正直もう少し時間はかかるとは思っていたが、ボーゲンが夜の店に襲撃というバカなことをしてくれたため、予想以上に早く店名を取り戻すことができたのだ。
「当初の予定通り店を改築するということでいいか?」
「はい。よろしくお願いします」
そして何故サレン商店の隣にフローラの店を出したかというと、ボーゲンの店を潰すという理由もあったが、一番の狙いは店を取り返した後に、合併して使えるようにするためだ。
これから冷蔵庫やお墨付きの件で、多くの客はフローラの店に訪れるだろう。
それにエルスリア1の商店を目指すには、それなりの広さが必要だからな。
「それと今日からフローラにも鍛練を受けてもらうぞ」
今後フローラには色々な商品の販売、開発をして店を大きくしてもらう。そうなると必ず嫉妬や妬みで多くの敵を作ることになるだろう。ボーゲンのように力ずくで強硬してくる者もいるかもしれない。
その時に動くことが出来ず、死にましたという結果にならないように、フローラを鍛える。それにフローラは強くなることによって、相手を恐れることがなく、交渉事に対して精神的に優位に立てるというメリットもあるしな。
「わかりました。お手柔らかにお願いします」
「それはどうかな」
「その不敵な笑み⋯⋯少し怖いです」
「フローラは強くなるために何でもすると誓えるか?」
「誓えます」
「それなら目を閉じてくれ」
「こ、こうですか?」
純心無垢という言葉が似合うフローラが、俺の言葉に従って目を閉じる。
そして俺は何でもするという許可を得ているので、斜め上に顔を向けたフローラの唇に向かって、自分の唇を重ねた。
「んっ!」
するとフローラは予想外のことで驚いたのか目を見開く。
さすがにいきなりキスされるとは思っていなかったか。だけどそれは一瞬のことで、フローラはキスには意味があると感じてくれたのか目を閉じ受け入れてくれる。
そしてリアの時と同様に、俺達を中心に風が舞い上がり、そして静まるとゆっくりと唇を離す。
すると側にあるフローラの頬は紅潮し、俺には熱を帯びているように見えた。
「ユ、ユウトさん⋯⋯ユウトさんは私のことが好⋯⋯あいたっ!」
フローラは何かを言いかけたが、背後からリアがげんこつを食らわせたため、涙目になっている。
「あなたは何を言っているのですか? まさかキスでユウト様の寵愛を受けられると勘違いしているのでは?」
「ひぃっ!」
リアは笑顔で話しているけど目が笑ってない。とてつもなく怒っているように見えるけど気のせいか?
フローラもそれがわかっているから、リアに恐れをなしているようだ。
それにしても、リアはいつの間に身が凍るような殺気を出せるようになったんだ? まだ鍛練の指導は二回しか行っていないけど、成長の速度が早いな。
「おバカなことを言ってないで、自分の身体の変化に気づきませんか?」
「変化⋯⋯ですか? そういえば何だか身体が軽いような⋯⋯それに頭の中がスッキリしてます」
「それがユウトさんの力です。今あなたの能力は解放されて、身体と知力が強化されているので、通常に鍛練するよりも早く経験値を積むことができるのです」
全てリアに言われてしまった。
まあ説明する手間が省けたのでよしとしよう。
「今日は鍛練初日ですし、ユウト様のお手を煩わせるのも申し訳ないので、私が指導して上げましょう」
「リ、リアさんがですか⋯⋯」
「そうです。まずはフローラさんには基礎体力をつけてもらいますので、腕立て伏せを二百回お願いします」
「に、二百回ですか! そんなの無理です!」
「無理かどうかは私が決めます。口を開く余裕があるなら三百回に変更しようかしら」
「ひぃっ! やります! やりますから二百回でお願いします」
フローラの指導までリアが始めてしまった。
まあリアの言うとおり、戦うことに関しては素人のフローラは、基礎体力の強化からで間違っていないが。
それにしても何故リアはあんなに怒っているのだろうか?
「しっかりと肘を曲げて下さい」
「リアさん厳しいです。だ、誰か私を助けて下さい!」
その理由がわからないまま、フローラは悲鳴を上げながら腕立て伏せをするのだった。
昨日は一昨日と同じ様に多くの客がフローラの店に訪れたが、スタッフ達も少し仕事に慣れてきたこともあり、上手く業務を回すことができた。
そしてさらに1週間が経った頃、リアから1つの報告が入った。
「ボーゲンですがフローラさんの店に侵入、お墨付きに手を出そうとしたことにより、死罪となりました。持っていた財産は姪であるフローラさんの物になります」
「教えて頂きありがとうございます」
想定通りの展開だ。ボーゲンには親族が姪であるフローラしかいなかった。従って財産はフローラの物になるのは必然だ。これで次の計画に移れる。
「これで⋯⋯これでお父さんの店の名前を取り戻すことができます」
そう、フローラの目的の1つに、店の名前を取り戻すということがあった。そのため、今フローラの店には正式な名前がない。サレン商店という名前をつけるためにあえて店名をつけなかったのだ。
フローラからそのことを相談された時、俺の中ではボーゲンの店を潰す手段がいくつもあったため、すぐに国王からお墨付きを貰える策を出した。
正直もう少し時間はかかるとは思っていたが、ボーゲンが夜の店に襲撃というバカなことをしてくれたため、予想以上に早く店名を取り戻すことができたのだ。
「当初の予定通り店を改築するということでいいか?」
「はい。よろしくお願いします」
そして何故サレン商店の隣にフローラの店を出したかというと、ボーゲンの店を潰すという理由もあったが、一番の狙いは店を取り返した後に、合併して使えるようにするためだ。
これから冷蔵庫やお墨付きの件で、多くの客はフローラの店に訪れるだろう。
それにエルスリア1の商店を目指すには、それなりの広さが必要だからな。
「それと今日からフローラにも鍛練を受けてもらうぞ」
今後フローラには色々な商品の販売、開発をして店を大きくしてもらう。そうなると必ず嫉妬や妬みで多くの敵を作ることになるだろう。ボーゲンのように力ずくで強硬してくる者もいるかもしれない。
その時に動くことが出来ず、死にましたという結果にならないように、フローラを鍛える。それにフローラは強くなることによって、相手を恐れることがなく、交渉事に対して精神的に優位に立てるというメリットもあるしな。
「わかりました。お手柔らかにお願いします」
「それはどうかな」
「その不敵な笑み⋯⋯少し怖いです」
「フローラは強くなるために何でもすると誓えるか?」
「誓えます」
「それなら目を閉じてくれ」
「こ、こうですか?」
純心無垢という言葉が似合うフローラが、俺の言葉に従って目を閉じる。
そして俺は何でもするという許可を得ているので、斜め上に顔を向けたフローラの唇に向かって、自分の唇を重ねた。
「んっ!」
するとフローラは予想外のことで驚いたのか目を見開く。
さすがにいきなりキスされるとは思っていなかったか。だけどそれは一瞬のことで、フローラはキスには意味があると感じてくれたのか目を閉じ受け入れてくれる。
そしてリアの時と同様に、俺達を中心に風が舞い上がり、そして静まるとゆっくりと唇を離す。
すると側にあるフローラの頬は紅潮し、俺には熱を帯びているように見えた。
「ユ、ユウトさん⋯⋯ユウトさんは私のことが好⋯⋯あいたっ!」
フローラは何かを言いかけたが、背後からリアがげんこつを食らわせたため、涙目になっている。
「あなたは何を言っているのですか? まさかキスでユウト様の寵愛を受けられると勘違いしているのでは?」
「ひぃっ!」
リアは笑顔で話しているけど目が笑ってない。とてつもなく怒っているように見えるけど気のせいか?
フローラもそれがわかっているから、リアに恐れをなしているようだ。
それにしても、リアはいつの間に身が凍るような殺気を出せるようになったんだ? まだ鍛練の指導は二回しか行っていないけど、成長の速度が早いな。
「おバカなことを言ってないで、自分の身体の変化に気づきませんか?」
「変化⋯⋯ですか? そういえば何だか身体が軽いような⋯⋯それに頭の中がスッキリしてます」
「それがユウトさんの力です。今あなたの能力は解放されて、身体と知力が強化されているので、通常に鍛練するよりも早く経験値を積むことができるのです」
全てリアに言われてしまった。
まあ説明する手間が省けたのでよしとしよう。
「今日は鍛練初日ですし、ユウト様のお手を煩わせるのも申し訳ないので、私が指導して上げましょう」
「リ、リアさんがですか⋯⋯」
「そうです。まずはフローラさんには基礎体力をつけてもらいますので、腕立て伏せを二百回お願いします」
「に、二百回ですか! そんなの無理です!」
「無理かどうかは私が決めます。口を開く余裕があるなら三百回に変更しようかしら」
「ひぃっ! やります! やりますから二百回でお願いします」
フローラの指導までリアが始めてしまった。
まあリアの言うとおり、戦うことに関しては素人のフローラは、基礎体力の強化からで間違っていないが。
それにしても何故リアはあんなに怒っているのだろうか?
「しっかりと肘を曲げて下さい」
「リアさん厳しいです。だ、誰か私を助けて下さい!」
その理由がわからないまま、フローラは悲鳴を上げながら腕立て伏せをするのだった。
0
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる