没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する～しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです～

死への入口

「誰だ貴様は！」
「僕はユート⋯⋯カレンさんはやらせないよ」
「お前が今年の首席を取った子供か！」

　俺はそのまま力に任せて剣を切り払うと、仮面の者は後方へと下がる。

「こ、子供のクセに私の剣を受け止めるとは⋯⋯なんてパワーだ」
「子供だと思って油断していると、痛い目を見るよ」

　周囲を見ると既に三人が地面に倒れていた。
　残るはこの二人か⋯⋯それなら予定通りこのまま立・ち・去・っ・て・も・ら・お・う・。

「ユートくん！ やっぱりこの人達はカレンちゃんを狙っているみたい！」
「ですがわたくしの手にかかればこの通り、残り二人も華麗に倒して差し上げますわよ」
「これもユート様のおかげなのに偉そうですね」
「そ、そんなことわかってますわ！ でも今くらいこの力に酔いしれてもいいじゃありませんか」

　この緊張感が漂う場所でもニナさんは主を弄っている。何だか場の空気が緩くなって来たぞ。

「その子供⋯⋯ユートのおかげだと！？ どういうことだ！」
「そんなの言う訳ないよ。あなた達は僕らに倒されるから教えても意味ないし」

　本当はフリードさんに手の内を知られたくないからだ。
　ここまで一緒に行動して、限りなく白に近いと思っているけど、念には念を入れておく。
　ちなみに種明かしをしてしまうと、昨日から永続のページにパワーブースターをセットして置いたのだ。
　そのため、俺から離れた位置にいたとしても、カレンさんには常に身体能力強化の影響を受けることが出来ている。
　今のカレンさんなら、余程の使い手でないと相手にならないだろう。

「カレン王女。私も助太刀するぞ」

　俺から少し遅れてフリードさんも到着する。
　そして仮面の者達に向かって剣を構えていた。

「いいえ。ここはわたくし達がやりますわ。フリードは下がっていなさい」
「⋯⋯わかった」

　フリードさんはカレンさんの言葉に従って剣を収め、後方へと下がる。
　もしフリードさんが敵なら仮面の者達と戦う振りをして、後ろからカレンさんを刺し殺すということも考えられた。しかしフリードさんは剣を鞘に収めているので、こちらに手を出す気はないように見える。

「くっ！ フリード王子まで来たか。しかしカレン王女の力は脅威だがこのまま退くわけには⋯⋯」

　仲間が三人やられ、六対二の戦力差でまだ戦おうとしている。
　だけど俺は仮面の者達と戦う気はない。
　でもカレンさんに手出しが出来ないよう、対処はさせてもらう。
　そして皇帝時間インペリアルタイムが発動する。
　すると世界が止まり、動けるのは俺だけとなった。
　俺は現れた古文書の最後のページを開くと、そこには五枚のカードが収まっていた。
　マジックブースター(⭐３)、真実の眼(⭐２)、ポイズンスネークの毒(⭐２)、そして昨日探しておいた大岩(⭐１)のカードが二枚だ。
　この五枚のカードは重なり、裏表示になったので、俺は引いて最初のページにセットする。
　すると時が流れ始めた。

「例え人数に差があろうとカレン王女を殺してしまえば！」

　仮面の者達はカレン王女に向かって接近してくる。
　しかしそうはさせない。
　俺は古文書から一枚のカードを引き、仮面の者達の前に投げる。

「大岩よ！ 具現化して悪しき者から僕達を守れ！」

　カードは俺の呼び声に応えて光輝き出すと、通路を隙間なく埋める大岩が出現した。

「な、なんだと！ これではカレン王女の元へ行くことが出来ん！」

　仮面の者達は大岩が邪魔をして、こちら側に来ることが出来ないでいる。
　俺はシズル先生から予めダンジョンの縦横の幅は聞いていた。その幅と同じような岩を探してカードにしておいたのだ。
　これで仮面の者達は、シズル先生のように岩でも破壊しない限り、もうこちらに来ることは出来ないだろう。

「くそっ！ 引くぞ！」

　大岩の向こうから声が聞こえてきた。
　さすがにこの状況ではカレンさんの暗殺は無理だと判断したようだ。
　そして仮面の者達は出口方面へと退却する。
　だがそれは死への入口だと、奴らは気づいていなかった。

―――― いつも【没落貴族～】を読んでいただきありがとうございます。この度新たに【異世界転生者のリトライ～これから起こることは全てわかっている。世界でただ一人の回復術師はとても有能でした～】も投稿致しますので、そちらも読んで頂けると幸いです。