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襲撃

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【カレン王女に危険が迫っている。ダンジョン内では気をつけろ】

 何でカレンさんが狙われていることを知っているんだ?
 それにこれを書いた人物は、ここに俺とフリードさんが通ることを知っていた可能性が高い。
 いったいどういうことなんだ。

「カレンに危険が? どうしてこんなものがここに」
「とにかく急いだ方が良さそうだね」

 俺達は転移魔方陣へと足を踏み入れる。
 すると一瞬で景色が変わり、ダンジョンへと到着した。

「ここがダンジョンか」

 壁や床は石で作られているのかとても整備されているため、足場は悪くない。それに天井は高く道端も広いので、戦いをするには問題無さそうだ。
 そして何より天井から淡い光が発せられているため、視界も悪くない。
 これなら暗闇から奇襲を受けることはないだろう。
 まあ俺には皇帝時間インペリアルタイムがあるから問題ないけど、ルリシアさん達が奇襲を受けなくて済むのは助かる。

「ユート急ぐぞ」
「うん」

 俺はフリードさんの後に続き、ダンジョンを駆ける。
 フリードさんと二人になってからずっと監視しているけど、怪しい様子はない。
 今もカレンさんを心配しているのか、全力で走っているように見える。
 そもそもフリードさんがカレンさんの命を狙っている奴らの仲間なら、俺にさっきの手紙を見せる必要はない。
 これは仮面の者達とフリードさんは仲間じゃないということか?
 俺はチームの仲間を疑わずに済み、心の中で安堵する。

「何か変だな」

 フリードさんが走りながら、話しかけてきた。

「どういうことですか?」
「さっきから魔物と全く遭遇しないなんておかしくないか?」
「そうですね。でもルリシアさん達が倒したんじゃないですか?」
「それは私も考えた。だが魔物の死骸が見当たらないのは変だ」

 フリードさんはこんな時でも冷静に観察しているな。
 だが俺は何で魔物がいないか知っている。
 実は昨日、シズルさんが学生だけでダンジョンを行かせるのはさすがに危険だと判断し、魔物を間引いたと言っていた。
 そのため、俺達は魔物に会うことなく、ダンジョンを進むことが出来ている。

「理由はわからないけど、カレンさん達に早く追いつけるから助かるね」
「そうだな」

 今は一刻も早く、カレンさん達の元へ駆けつけることが大切だ。
 仮面の者達の黒幕は誰か、手紙の差出人の正体は? 俺は謎を抱えたまま、ダンジョンを進むのであった。

 ◇◇◇

 ユートが転移魔方陣に入った頃。ルリシアはカレンやニナと共に、周囲を警戒しながらダンジョンを進んでいた。

「さ、さあどこからでもかかってきなさい」

 カレンは誰もいない空間に向かって突如叫び始める。
 だが誰も返事をする者はいない。

「お嬢様落ち着いて下さい。精神攻撃でも食らったのですか? 鈍器で頭を殴って正常な状態に戻してもよろしいでしょうか」
「怖いことを仰らないで下さいまし!」  

 ニナは服の中から鈍器を出し、本当にカレンを殴ろうとしていた。

「でしたら静かにして下さい。相手に居場所がバレてしまいますよ」
「わ、わかっています」

 しかしニナが忠告してもカレンは落ち着きがなく、誰が見ても緊張しているように見えた。

「カレンちゃん大丈夫? 手が震えてるけど」
「これは武者震いです」
「私達がいるし、後ろからユートくんが来ているから大丈夫だよ。それに⋯⋯」
「本当に大丈夫ですわ。これは私が仮面の者達を捕らえて、皆から称賛される喜びに打ち震えているだけです」
「でしたらお嬢様が仮面の者達と戦っている間に、私とルリシア様は逃げさせて頂きますね」
「い、今の冗談ですわ! お願いですから私を見捨てないで下さいまし!」

 三人の間でどこか緊張感のない空気が流れている。だがそれは表向きの話で、三人の周囲に対する警戒は、全く緩んでいない。

「お嬢様、ルリシア様」
「どうやら来たようね」

 ニナが真剣な表情で言葉を発する。
 するとルリシアとカレンもその言葉の意味を組んで、武器を構える。

「ユートくんじゃないよね?」
「気配は五つ。おそらくそれはないかと」

 ルリシアやカレンより周囲の察知能力が長けているニナが、不審な者達の情報を伝える。

「五人ということは、先日わたくし達を狙った者達と同じでしょうか?」
「それはわかりません。そろそろ姿を現しますよ」

 ニナの言葉通り、五人の仮面をつけた者達が三人に躊躇なく迫ってくるのであった。
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