80 / 86
四人での生活
しおりを挟む
「二、ニナさん!? 何でここにいるんですか!」
そう。鏡に写っていたのはニナさんだった。ルリシアさんならともかくニナさんがここにいるなんておかしくないか?
「何故? 浴室にいるのはお風呂に入るためと決まっているじゃないですか」
「そんな当たり前のことを聞いているんじゃなくて! し、しかも裸で!」
「これはおかしなことを仰いますね。お風呂に裸で入らない人がいるんですか?」
「いや、いないけど⋯⋯でもここは僕の部屋のお風呂だよ」
「えっ?」
えじゃないよ。俺の方がえっ? って言いたいよ。
「そのようなことよりお背中を流しましょうか? それとも前の方が⋯⋯エッチですね」
「ど、どっちがエッチですか! いきなりお風呂に入ってきて非常識ですよ!」
「非常識ですか⋯⋯二国の姫を非常識と呼ぶとはユート様は凄い人ですね」
「えっ?」
そしてこの時、背後にニナさん以外の気配を感じた。
「ちょっと狭くありませんか」
「そんなことないよ。四人くらいなら普通に入れると思うけど」
鏡越しに後ろを確認すると、ルリシアさんとカレンさんまで浴室に乱入してきたのだ。
「二人ともなんでお風呂に入ってきてるの!」
「もしかしてニナと二人っきりが良いのでしょうか」
「しばらくの間同じ部屋で暮らすから、仲良くなるために裸の付き合いがいいなって思って」
何でカレンさんまで浴室に!
ん? ちょっと待てよ。今ルリシアさんがとんでもないことを口にしたような⋯⋯
「同じ部屋で暮らすってどういうこと?」
いつそんな話が決まったんだ。俺が風呂に入っている時か。
「えっ? お店の裏でこれから一緒にいるって話したと思うけど。ユートくんも頷いてだよね」
た、確かにそうだけど。そういう意味じゃなかった。
「あれはその⋯⋯学園ではなるべく一緒にいるって意味で⋯⋯同じ部屋で暮らすという意味ではなくて⋯⋯」
「うぅ⋯⋯女二人で、いつ襲ってくるかわからない恐怖に怯えろと。ユート様は私とお嬢様が仮面の者達に襲われてもいいというのですね」
ニナさんが顔を両手で覆い、涙を流している。
いや、これ絶対に泣いてないだろ。
「わたくしはどちらでもいいですけど、ユートがどうしても仰るなら」
「ユートくんは優しいから二人に出ていけなんて言わないよね?」
どうやら俺の味方はいないようだ。
正直ノーと言いたいけど、お姫様二人が決めたことに反論出来るわけがない。
俺は渋々一緒に住むことは認める。
だが⋯⋯
「わかりました。だけどお風呂は一人で入らせて下さい!」
「え~⋯⋯いつも一緒に入ってるじゃない。ほら、私が頭と背中を洗ってあげる」
「では私は右足と右手を」
「仕方ないですわね。わたくしは左足と左手を洗って差し上げますわ」
「じ、自分でできるよ」
「遠慮しないでいいから」
俺の言葉は三人に届かず、身体が泡立てられていく。
そして十分後には、俺の身体は隅々まで洗われてしまうのであった。
俺は心の中で、悲しみの涙を流しながらお風呂から出る。
目を閉じていたこともあり、逃げ出すことも出来なかった。
十歳の子供とはいえ、三人は裸を見られることに抵抗はないのだろうか。
前の世界なら女湯は小学生から入ってはいけないと、条例があったのに。この世界の倫理観は俺が思っているものとは違うようだ。
ともかくこれでお風呂の時間は終わった。欲望に負けず堪えた自分を褒めてあげたい。
「それじゃあ部屋割りだけど、ユートくんの部屋は私とユートくんが。私の部屋はカレンちゃんとニナさんが使うってことでいいかな?」
「それが無難ですわね」
「何かあった時に駆けつけることが出来るように、二つの部屋を分けるドアは開けておくけどいい?」
「いいですわ」
本当はルリシアさんの部屋に三人で泊まってほしいけど、俺の意見は通らないだろうな。
「後は必要な荷物を運ぶだけですわ。ユートも手伝って頂いけませんか?」
「いいよ」
「私も手伝う」
こうして俺とルリシアさんはカレンさんとニナさんの引っ越しを手伝い、奇妙な四人での生活が始まるのであった。
そう。鏡に写っていたのはニナさんだった。ルリシアさんならともかくニナさんがここにいるなんておかしくないか?
「何故? 浴室にいるのはお風呂に入るためと決まっているじゃないですか」
「そんな当たり前のことを聞いているんじゃなくて! し、しかも裸で!」
「これはおかしなことを仰いますね。お風呂に裸で入らない人がいるんですか?」
「いや、いないけど⋯⋯でもここは僕の部屋のお風呂だよ」
「えっ?」
えじゃないよ。俺の方がえっ? って言いたいよ。
「そのようなことよりお背中を流しましょうか? それとも前の方が⋯⋯エッチですね」
「ど、どっちがエッチですか! いきなりお風呂に入ってきて非常識ですよ!」
「非常識ですか⋯⋯二国の姫を非常識と呼ぶとはユート様は凄い人ですね」
「えっ?」
そしてこの時、背後にニナさん以外の気配を感じた。
「ちょっと狭くありませんか」
「そんなことないよ。四人くらいなら普通に入れると思うけど」
鏡越しに後ろを確認すると、ルリシアさんとカレンさんまで浴室に乱入してきたのだ。
「二人ともなんでお風呂に入ってきてるの!」
「もしかしてニナと二人っきりが良いのでしょうか」
「しばらくの間同じ部屋で暮らすから、仲良くなるために裸の付き合いがいいなって思って」
何でカレンさんまで浴室に!
ん? ちょっと待てよ。今ルリシアさんがとんでもないことを口にしたような⋯⋯
「同じ部屋で暮らすってどういうこと?」
いつそんな話が決まったんだ。俺が風呂に入っている時か。
「えっ? お店の裏でこれから一緒にいるって話したと思うけど。ユートくんも頷いてだよね」
た、確かにそうだけど。そういう意味じゃなかった。
「あれはその⋯⋯学園ではなるべく一緒にいるって意味で⋯⋯同じ部屋で暮らすという意味ではなくて⋯⋯」
「うぅ⋯⋯女二人で、いつ襲ってくるかわからない恐怖に怯えろと。ユート様は私とお嬢様が仮面の者達に襲われてもいいというのですね」
ニナさんが顔を両手で覆い、涙を流している。
いや、これ絶対に泣いてないだろ。
「わたくしはどちらでもいいですけど、ユートがどうしても仰るなら」
「ユートくんは優しいから二人に出ていけなんて言わないよね?」
どうやら俺の味方はいないようだ。
正直ノーと言いたいけど、お姫様二人が決めたことに反論出来るわけがない。
俺は渋々一緒に住むことは認める。
だが⋯⋯
「わかりました。だけどお風呂は一人で入らせて下さい!」
「え~⋯⋯いつも一緒に入ってるじゃない。ほら、私が頭と背中を洗ってあげる」
「では私は右足と右手を」
「仕方ないですわね。わたくしは左足と左手を洗って差し上げますわ」
「じ、自分でできるよ」
「遠慮しないでいいから」
俺の言葉は三人に届かず、身体が泡立てられていく。
そして十分後には、俺の身体は隅々まで洗われてしまうのであった。
俺は心の中で、悲しみの涙を流しながらお風呂から出る。
目を閉じていたこともあり、逃げ出すことも出来なかった。
十歳の子供とはいえ、三人は裸を見られることに抵抗はないのだろうか。
前の世界なら女湯は小学生から入ってはいけないと、条例があったのに。この世界の倫理観は俺が思っているものとは違うようだ。
ともかくこれでお風呂の時間は終わった。欲望に負けず堪えた自分を褒めてあげたい。
「それじゃあ部屋割りだけど、ユートくんの部屋は私とユートくんが。私の部屋はカレンちゃんとニナさんが使うってことでいいかな?」
「それが無難ですわね」
「何かあった時に駆けつけることが出来るように、二つの部屋を分けるドアは開けておくけどいい?」
「いいですわ」
本当はルリシアさんの部屋に三人で泊まってほしいけど、俺の意見は通らないだろうな。
「後は必要な荷物を運ぶだけですわ。ユートも手伝って頂いけませんか?」
「いいよ」
「私も手伝う」
こうして俺とルリシアさんはカレンさんとニナさんの引っ越しを手伝い、奇妙な四人での生活が始まるのであった。
11
お気に入りに追加
1,214
あなたにおすすめの小説
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
転生した元剣聖は前世の知識を使って騎士団長のお姉さんを支えたい~弱小王国騎士団の立て直し~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
かつて剣聖として無類の強さを誇っていた剣士ゼナリオは神族との戦争によって崩壊寸前の世界を救うため自らの命を引き換えにし、そして世界を救った。剣で始まり剣で人生を終えたゼナリオは自らの身が亡ぶ直前にある願いを抱く。
だが再び意識を取り戻し、目を覚ますとそこは緑いっぱいの平原に囲まれた巨大な樹木の下だった。突然の出来事にあたふたする中、自分が転生したのではないかと悟ったゼナリオはさらに自らの身体に異変が生じていることに気が付く。
「おいおい、マジかよこれ。身体が……」
なんと身体が若返っており、驚愕するゼナリオ。だがそんな矢先に突然国家騎士の青年から騎士団へのスカウトを受けたゼナリオは、後にある事件をきっかけに彼は大きな決断をすることになる。
これは若返り転生をした最強剣士が前世の知識を用いて名声を高め、再び最強と呼ばれるまでのお話。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……
踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです
(カクヨム、小説家になろうでも公開中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる