没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

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悲鳴の先には

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「今の声は!」

 店の外から聞こえたような気がしたけど。
 それに俺の聞き間違いじゃなきゃ、あの声はカレンさんだ。

「たぶん試着室の向こう側から聞こえてきたよ」
「ちょっと行ってくるよ」
「私も行く」

 ルリシアさんが試着室のカーテンを捲って外に出てくる。
 だが服は着ておらず、下着一枚だった。

「ル、ルリシアさんその格好で行くの!」

 その姿で外に出たら痴女だよ!

「あっ! 忘れてた!」
「僕は先に行くね」
「ちょっと待って私もすぐに行くから」
「ルリシアさんは服を着てから来て下さい」

 さっきの声は普通じゃない。きっと何かが起きたんだ。
 ルリシアさんが着替え終わるのを待っている暇はない。
 俺は急ぎ外に出て、店の裏側へと回る。
 するとそこには、外套を着た仮面の者達とカレンさん、ニナさんが対峙している姿があった。

「大丈夫ですか!」

 まさかカレンさん達が本当に仮面の男達と遭遇するとは。引きが良いのか悪いんだか。ともかくこのまま見過ごす訳にはいかない。
 俺も剣を抜き参戦する。

「ユート、助太刀感謝致しますわ」
「お嬢様、よろしいのですか? このままユート様とこの者達を捕まえると手柄は半々となり、Sクラスのトップになることは出来ませんよ」

 そういえばそんな話をしていたな。
 でもカレンさんは俺が戦うことを認めてくれたよな?

「そのようなことより、今はこの悪漢達を捕らえることが先決ですわ。ここで逃がしてしまい、被害が出ることだけは阻止しなければなりません」

 自分の名声を高めるより、他者のことを考えられるなんて。どうやらこのお姫様はツンデレだけど良い人のようだ。

「そうですね。僕もそう思います。ここは三人で戦いましょう」

 目の前には仮面をつけた奴が五人いる。
 人数は向こうの方が多いけどやれるはずだ。それに後からルリシアさんも来る。

「ちっ! 新手か」
「入学試験で首席を取った奴も来るとは誤算だったな」
「ここは退くぞ」

 仮面の者達は後方へと下がり始める。
 まずい! 向こう側は人通りが多い道だ。
 人混みにでも入られたら逃げられてしまう。

「逃がしませんわ!」

 俺達は仮面の者達の跡を追う。

 せめて奴らがこっちに攻撃を仕掛けてくれれば、皇帝時間インペリアルタイムが発動して、カードが使えるのに。
 だが今から古文書を出してカードを使う暇はない。

 俺は二人より先行して追いかける。
 だけど俺達が追い付く前に、仮面の者達は裏路地から大通りへと出てしまう。
 大通りに出ると、雨のため傘を差している人達も多く、俺は仮面の者達を見失ってしまった。

「あ、あなた⋯⋯足が速すぎですわ」

 俺の後ろから、カレンさんとニナさんが追いついてきた。

「それで、先程の悪漢達はどこへ?」
「ごめんなさい。逃げられちゃいました」
「そう⋯⋯この人混みなら仕方ありませんわね」

 周囲の人達から悲鳴が聞こえて来ないので、少なくとも誰かを傷つけたりせず、逃げたのだろう。

「もう少しでしたのに⋯⋯悔しいですわ」
「逃げられてしまったことがシズル様にバレたら、評価が上がる所か下がってしまいそうですね」

 シズル先生は仮面の集団を見つけたら自分を呼べと言っていた。ニナさんが言っていることはおそらく正しいだろう。自分が戦えなかったから腹いせで本当にやりそうだ。

「このことは秘密にしますわよ。いいですわね?」

 俺とニナさんは頷く。

「それにしてもカレンさん達はよく仮面の人達を見つけられたね」
「跡をつけられていたことに気づいたからですわ。人が多くて誰につけられているのかわかりませんでしたから、裏の路地に誘いましたの」
「そうしたら仮面の人達が出てきたと⋯⋯何でカレンさん達が跡をつけられたんだろう?」
「そのような理由はたくさんありすぎて、判別することは不可能ですわ」

 王国のお姫様だもんな。
 王族の跡目争い、貴族達からの反乱、身代金目的、他国からの刺客、数えれば切りがない。

「でも案外カレンさんを狙っている人達は身近にいるかもよ」
「どういうことですの?」
「仮面の人達が言ってたもん。入学試験で首席を取った奴が来るとは誤算だったって。僕が首席だって知っている人はたぶん学園内にしかいないんじゃないかなあ」
「た、確かにそうですわ」
「これは学園内でも油断はしない方が良さそうですね」

 仮面の者達は何故カレンさんを狙ったのかわからないけど、ルリシアさんの周囲も警戒した方が良さそうだ。

「ユートく~ん」

 着替え終えたルリシアさんが、こちらへと向かってきた。

「三人共大丈夫? 怪我はない?」
「ええ。大丈夫ですわ」
「何があったの?」
「え~と実は――」

 俺はルリシアさんに先程あった出来事を話すのであった。
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