78 / 86
悲鳴の先には
しおりを挟む
「今の声は!」
店の外から聞こえたような気がしたけど。
それに俺の聞き間違いじゃなきゃ、あの声はカレンさんだ。
「たぶん試着室の向こう側から聞こえてきたよ」
「ちょっと行ってくるよ」
「私も行く」
ルリシアさんが試着室のカーテンを捲って外に出てくる。
だが服は着ておらず、下着一枚だった。
「ル、ルリシアさんその格好で行くの!」
その姿で外に出たら痴女だよ!
「あっ! 忘れてた!」
「僕は先に行くね」
「ちょっと待って私もすぐに行くから」
「ルリシアさんは服を着てから来て下さい」
さっきの声は普通じゃない。きっと何かが起きたんだ。
ルリシアさんが着替え終わるのを待っている暇はない。
俺は急ぎ外に出て、店の裏側へと回る。
するとそこには、外套を着た仮面の者達とカレンさん、ニナさんが対峙している姿があった。
「大丈夫ですか!」
まさかカレンさん達が本当に仮面の男達と遭遇するとは。引きが良いのか悪いんだか。ともかくこのまま見過ごす訳にはいかない。
俺も剣を抜き参戦する。
「ユート、助太刀感謝致しますわ」
「お嬢様、よろしいのですか? このままユート様とこの者達を捕まえると手柄は半々となり、Sクラスのトップになることは出来ませんよ」
そういえばそんな話をしていたな。
でもカレンさんは俺が戦うことを認めてくれたよな?
「そのようなことより、今はこの悪漢達を捕らえることが先決ですわ。ここで逃がしてしまい、被害が出ることだけは阻止しなければなりません」
自分の名声を高めるより、他者のことを考えられるなんて。どうやらこのお姫様はツンデレだけど良い人のようだ。
「そうですね。僕もそう思います。ここは三人で戦いましょう」
目の前には仮面をつけた奴が五人いる。
人数は向こうの方が多いけどやれるはずだ。それに後からルリシアさんも来る。
「ちっ! 新手か」
「入学試験で首席を取った奴も来るとは誤算だったな」
「ここは退くぞ」
仮面の者達は後方へと下がり始める。
まずい! 向こう側は人通りが多い道だ。
人混みにでも入られたら逃げられてしまう。
「逃がしませんわ!」
俺達は仮面の者達の跡を追う。
せめて奴らがこっちに攻撃を仕掛けてくれれば、皇帝時間が発動して、カードが使えるのに。
だが今から古文書を出してカードを使う暇はない。
俺は二人より先行して追いかける。
だけど俺達が追い付く前に、仮面の者達は裏路地から大通りへと出てしまう。
大通りに出ると、雨のため傘を差している人達も多く、俺は仮面の者達を見失ってしまった。
「あ、あなた⋯⋯足が速すぎですわ」
俺の後ろから、カレンさんとニナさんが追いついてきた。
「それで、先程の悪漢達はどこへ?」
「ごめんなさい。逃げられちゃいました」
「そう⋯⋯この人混みなら仕方ありませんわね」
周囲の人達から悲鳴が聞こえて来ないので、少なくとも誰かを傷つけたりせず、逃げたのだろう。
「もう少しでしたのに⋯⋯悔しいですわ」
「逃げられてしまったことがシズル様にバレたら、評価が上がる所か下がってしまいそうですね」
シズル先生は仮面の集団を見つけたら自分を呼べと言っていた。ニナさんが言っていることはおそらく正しいだろう。自分が戦えなかったから腹いせで本当にやりそうだ。
「このことは秘密にしますわよ。いいですわね?」
俺とニナさんは頷く。
「それにしてもカレンさん達はよく仮面の人達を見つけられたね」
「跡をつけられていたことに気づいたからですわ。人が多くて誰につけられているのかわかりませんでしたから、裏の路地に誘いましたの」
「そうしたら仮面の人達が出てきたと⋯⋯何でカレンさん達が跡をつけられたんだろう?」
「そのような理由はたくさんありすぎて、判別することは不可能ですわ」
王国のお姫様だもんな。
王族の跡目争い、貴族達からの反乱、身代金目的、他国からの刺客、数えれば切りがない。
「でも案外カレンさんを狙っている人達は身近にいるかもよ」
「どういうことですの?」
「仮面の人達が言ってたもん。入学試験で首席を取った奴が来るとは誤算だったって。僕が首席だって知っている人はたぶん学園内にしかいないんじゃないかなあ」
「た、確かにそうですわ」
「これは学園内でも油断はしない方が良さそうですね」
仮面の者達は何故カレンさんを狙ったのかわからないけど、ルリシアさんの周囲も警戒した方が良さそうだ。
「ユートく~ん」
着替え終えたルリシアさんが、こちらへと向かってきた。
「三人共大丈夫? 怪我はない?」
「ええ。大丈夫ですわ」
「何があったの?」
「え~と実は――」
俺はルリシアさんに先程あった出来事を話すのであった。
店の外から聞こえたような気がしたけど。
それに俺の聞き間違いじゃなきゃ、あの声はカレンさんだ。
「たぶん試着室の向こう側から聞こえてきたよ」
「ちょっと行ってくるよ」
「私も行く」
ルリシアさんが試着室のカーテンを捲って外に出てくる。
だが服は着ておらず、下着一枚だった。
「ル、ルリシアさんその格好で行くの!」
その姿で外に出たら痴女だよ!
「あっ! 忘れてた!」
「僕は先に行くね」
「ちょっと待って私もすぐに行くから」
「ルリシアさんは服を着てから来て下さい」
さっきの声は普通じゃない。きっと何かが起きたんだ。
ルリシアさんが着替え終わるのを待っている暇はない。
俺は急ぎ外に出て、店の裏側へと回る。
するとそこには、外套を着た仮面の者達とカレンさん、ニナさんが対峙している姿があった。
「大丈夫ですか!」
まさかカレンさん達が本当に仮面の男達と遭遇するとは。引きが良いのか悪いんだか。ともかくこのまま見過ごす訳にはいかない。
俺も剣を抜き参戦する。
「ユート、助太刀感謝致しますわ」
「お嬢様、よろしいのですか? このままユート様とこの者達を捕まえると手柄は半々となり、Sクラスのトップになることは出来ませんよ」
そういえばそんな話をしていたな。
でもカレンさんは俺が戦うことを認めてくれたよな?
「そのようなことより、今はこの悪漢達を捕らえることが先決ですわ。ここで逃がしてしまい、被害が出ることだけは阻止しなければなりません」
自分の名声を高めるより、他者のことを考えられるなんて。どうやらこのお姫様はツンデレだけど良い人のようだ。
「そうですね。僕もそう思います。ここは三人で戦いましょう」
目の前には仮面をつけた奴が五人いる。
人数は向こうの方が多いけどやれるはずだ。それに後からルリシアさんも来る。
「ちっ! 新手か」
「入学試験で首席を取った奴も来るとは誤算だったな」
「ここは退くぞ」
仮面の者達は後方へと下がり始める。
まずい! 向こう側は人通りが多い道だ。
人混みにでも入られたら逃げられてしまう。
「逃がしませんわ!」
俺達は仮面の者達の跡を追う。
せめて奴らがこっちに攻撃を仕掛けてくれれば、皇帝時間が発動して、カードが使えるのに。
だが今から古文書を出してカードを使う暇はない。
俺は二人より先行して追いかける。
だけど俺達が追い付く前に、仮面の者達は裏路地から大通りへと出てしまう。
大通りに出ると、雨のため傘を差している人達も多く、俺は仮面の者達を見失ってしまった。
「あ、あなた⋯⋯足が速すぎですわ」
俺の後ろから、カレンさんとニナさんが追いついてきた。
「それで、先程の悪漢達はどこへ?」
「ごめんなさい。逃げられちゃいました」
「そう⋯⋯この人混みなら仕方ありませんわね」
周囲の人達から悲鳴が聞こえて来ないので、少なくとも誰かを傷つけたりせず、逃げたのだろう。
「もう少しでしたのに⋯⋯悔しいですわ」
「逃げられてしまったことがシズル様にバレたら、評価が上がる所か下がってしまいそうですね」
シズル先生は仮面の集団を見つけたら自分を呼べと言っていた。ニナさんが言っていることはおそらく正しいだろう。自分が戦えなかったから腹いせで本当にやりそうだ。
「このことは秘密にしますわよ。いいですわね?」
俺とニナさんは頷く。
「それにしてもカレンさん達はよく仮面の人達を見つけられたね」
「跡をつけられていたことに気づいたからですわ。人が多くて誰につけられているのかわかりませんでしたから、裏の路地に誘いましたの」
「そうしたら仮面の人達が出てきたと⋯⋯何でカレンさん達が跡をつけられたんだろう?」
「そのような理由はたくさんありすぎて、判別することは不可能ですわ」
王国のお姫様だもんな。
王族の跡目争い、貴族達からの反乱、身代金目的、他国からの刺客、数えれば切りがない。
「でも案外カレンさんを狙っている人達は身近にいるかもよ」
「どういうことですの?」
「仮面の人達が言ってたもん。入学試験で首席を取った奴が来るとは誤算だったって。僕が首席だって知っている人はたぶん学園内にしかいないんじゃないかなあ」
「た、確かにそうですわ」
「これは学園内でも油断はしない方が良さそうですね」
仮面の者達は何故カレンさんを狙ったのかわからないけど、ルリシアさんの周囲も警戒した方が良さそうだ。
「ユートく~ん」
着替え終えたルリシアさんが、こちらへと向かってきた。
「三人共大丈夫? 怪我はない?」
「ええ。大丈夫ですわ」
「何があったの?」
「え~と実は――」
俺はルリシアさんに先程あった出来事を話すのであった。
11
お気に入りに追加
1,211
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話
湯島二雨
恋愛
彼女いない歴イコール年齢、アラサー平社員の『俺』はとあるラブコメ漫画のお色気担当ヒロインにガチ恋していた。とても可愛くて優しくて巨乳の年上お姉さんだ。
しかしそのヒロインはあくまでただの『お色気要員』。扱いも悪い上にあっさりと負けヒロインになってしまい、俺は大ダメージを受ける。
その後俺はしょうもない理由で死んでしまい、そのラブコメの主人公に転生していた。
俺はこの漫画の主人公になって報われない運命のお色気担当負けヒロインを絶対に幸せにしてみせると誓った。
※この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる