没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

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油断せずにいこう

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 仮面の者は気配を隠したまま、その場で拳を放つ。
 すると光の玉が打ち出され、学生達へと向かっていく。
 皇帝時間インペリアルタイムが発動しない!? ということはこれは攻撃ではないのか?
 だけどそのまま食らうのは嫌なので、俺は顔面辺りに飛んできた光の玉を手で払う。
 光の玉は俺の手に触れると、そのまま消失してしまった。

 何なんだいったい。何の目的があってこんなことを。
 そう。今攻撃を仕掛けて来たのはシズルさんだ。仮面で顔を隠しているが髪の色や質、胸の大きさや体型からいってまず間違いないだろう。

「このわたくしに攻撃を仕掛けてくるなんて、いい度胸ですわ!」
「だけどあれってシズル様だよ」
「どういうつもりだ」

 どうやら俺以外に光の玉を弾いたのは、カレンさん、ルリシアさん、フリードさんのようだ。

「シズル様、どういうことでしょうか?」
「⋯⋯油断し過ぎだ」

 シズルさんは仮面を外しながら、ルリシアさんの問いに答える。

「えっ?」
「もし私が敵だったら⋯⋯お前達を狙う暗殺者だったら四人以外死んだな」

 この人いきなり恐ろしいことを言うな。
 だけどその言葉は事実でもある。
 ここは日本のように安全な場所ではない。いつどこで危険が迫るかわからない世界だ。
 極端な例ではあるけど、セレノアの街が突然魔物に襲われたり、ルリシアさんがボルゲーノさんの屋敷で暗殺されかけたりと、シズルさんが言うことは間違ってはいないけど。
 生徒達もまさか教室で襲われるとは思っていなかっただろう。

「ルリシア、カレン、フリードは身を持って体験しているんじゃないか?」

 三人は俯く。
 どうやらルリシアさん以外も襲われた経験があるようだ。カレンさんに聞いたのだが、フリードさんはカレンさんと同じアイゼンシュッツ王国の王族らしい。一度だけ挨拶したけどその時は無視されたので、その時以来、俺は話はしていない。

 それより俺は他に気になることがある。
 もしかしてこのクラスの担任は⋯⋯

「この調子だとこれから二年間、先が思いやられるな」
「それはシズル様がSクラスの担任ということでしょうか?」

 シズルさんはカレンさんの言葉に頷く。

「本当ですか!」
「シズル様の指導が受けられるなんて光栄です!」

 クラスメートから喜びの声が上がる。
 えっ? 何でみんな嬉しそうにしているんだ? 俺としてはシズルさん⋯⋯シズル先生は何をするかわからないから、反対なんだけど。
 試験と称して、命の危機に陥れられる気がするのは俺だけなのか?
 それとも俺が知らないだけで、Sランク冒険者はそれ程すごい人なのだろうか? 後でルリシアさんに聞いてみよう。

「おや? 何だか一人だけ浮かない顔をしている者がいるけど気のせいかなあ」

 ギクッ!

 シズル先生は俺の方に視線を向けている。
 ポーカーフェイスをしていた方がつもりだったけど、考えを読まれたのか?
 とりあえず俺はシズルさんとは目線を合わせないよう俯く。
 するとシズルさんがニヤリと笑みを見せて、俺の所までやってきた。

「ユートはどう思う? 私がSクラスの担任で嬉しいか?」

 シズルさんは馴れ馴れしく肩を組んできた。

「モチロンデス。うわ~い⋯⋯シズルさんが僕のクラスの担任で嬉しいなあ」
「そうだろうそうだろう。それと最初に言っておくが、私の指導には従ってもらう。いや、従わなければ問答無用で個別指導が出来る。やはり今のはなしだ」

 この人を先生にしたらダメなんじゃないか?
 理不尽な指導という名の命令に逆らったら、個別指導という名のバトルをされそうだ。
 教員の配置を決めた人は何を考えているのか理解出来ない。
 これは絶対に良くないことが起きるだろ。

 そして俺の嫌な予感は、早くも初授業にて知ることとなるのであった。



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