没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

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過大評価はされたくない

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「試験のことはさておき。この子は誰ですの? ずいぶんルリシアさんと仲良さそうに見えますけど」
「さっきまで泣いてたのに、立ち直りが早いね」
「うるさいですわ。わたくしが質問していますのよ」
「僕はユートです。よろしくお願いしますカレンさん」

 俺は握手をするため、右手を差し出す。 
 だけどカレンさんは手を出して来ない。

「可愛い顔をしているからといって、このわたくしと気軽に話せると思わないで下さいまし」
「でもさっきのカレンちゃんの理論だと、ユートくんは気軽に話しかける権利があると思うけど」
「どういうことですか?」
「今回の試験の首席はユートくんだから」
「えっ! まさかこの子がシズル様と引き分けたという噂の⋯⋯」
「いや、それは⋯⋯」

 限りなく負けに近いですと口にしようとしたが。

「そういえばそんな話があったけど、あれってマジだったの?」
「私その戦い見てたよ。一瞬あの子が勝つんじゃないかって思ったもん」
「まだ十歳でしょ? 信じられないよね」

 周囲の人達が間違った情報を補足してしていく。
 ヤバい。このままじゃ勘違いされたまま話が進んでしまう。
 だが俺の考えとは裏腹に、さらに状況をかき回す発言をする人がいた。

「ふふん、それだけじゃないわ。ユートくんは一日でBランクの冒険者になったんだから」
「「「ええっ!」」」

 ルリシアさんが胸を反らしながら、いらないことを口にしてしまった。
 そんなことを言ったら、益々過大評価されるじゃないか。

「それは偶然グリフォンを倒して⋯⋯」
「グリフォンを倒した!? まさか一人で?」
「う、うん」

 あれ? もしかして俺も余計なことを言ってしまった?
 みんなが驚いた目をしてこっちを見てる。

「でもシズル様と引き分けたなら納得かも」
「だから僕はそんなたいしたものじゃ⋯⋯」
「すげえやつと同級生になったな」

 ダメだ。もうこれは何を言っても無駄という流れだ。
 もしもう一度シズルさんと戦うことがあれば、たぶん負けて失望されるため、過大評価はされたくないんだが。

「ふ、ふん⋯⋯少しはやるようですね」

 カレンさんは俺が褒められていることが、不服そうに見える。

「でもみなさん。過大評価をしてはいけませんわ。シズル様との戦いは、劣勢だったと聞いています。そこまで褒められては、ユートも困惑してしまいますわ。人を評価するのであれば他人に聞いた言葉ではなく、自分の目で確かめたらどうですか」

 これはもしかして、困っている俺を見かねて助け船を出してくれたのか?
 意外と気遣いが出来る人なのかも。

「そうだね。シズル様と引き分けたとか勝つかもしれないなんて言われたら、プレッシャーだよね」
「私は例え劣勢だったとしても、ユートくんの戦い方はすごいと思ったよ」
「よければ今度俺とも戦ってくれ。せっかくこの学園に入ったなら、強い奴と戦いたいって思うのが男だろ」

 何となく良い雰囲気で話が終わった気がする。
 これはカレンさんのお陰なのか?

「カレンさんありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね」

 俺はニコッと笑顔を見せて、右手を差し出す。

「ふん、仕方ないからよろしくしてあげますわ」

 俺が首席だとわかったからか、それとも他に理由があるのかわからないけど、今度は握手をしてくれた。

「ユートくん、カレンちゃんは素直じゃない所があるけどよろしくね」
「うん。わかった」
「誰が素直じゃないですか! それとユートも否定しなさい!」

 そう言われても、俺もルリシアさんと同じ意見だからな。
 こうして俺のことは誤解されることなく、周囲に伝えることが出来た。
 だが俺はこの時、こちらに向けて冷たい視線を向けている奴がいたことに、気づくことが出来なかった。
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