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シズルVSトール
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「シズル様! 何故俺が不合格なのですか!」
突然背後から声をかけてきたのはトールだった。どうやら試験の結果に納得出来ないようだ。
「弱かったからじゃない」
「そんなことないです! 模擬戦でそのガキに負けたのは油断したからで」
「君は戦場で負けたときも油断したからと言い訳するつもりかい?」
「くっ! でも俺の戦いを見てないでしょ! 見てくれればブレイヴ学園に相応しいってわかってもらえますよ!」
試験に落ちたというのに見苦しいな。
シズルさんはどうするつもりなんだ。
一応ブレイヴ学園の教員だと言ってたけど、さすがに不合格の奴を合格にすることは出来ないだろう。
「シズル様、俺と戦って下さい! そのガキより強いって所を証明してみせます」
俺に一瞬で負けたのに、よくそんな台詞が出てくるな。自信過剰にも程があるぞ。
「ねえユートくん。この失礼な人は誰なの?」
「僕の模擬戦の相手だった人」
「ユートくんが言ってた人ね」
昨日ルリシアさんには試験のことを聞かれたので、トールについては話してある。その時はすごく怒ってたな。
「ねえあなた」
「なんだよ。今は忙しいんだ。話しかけてくるんじゃねえ」
「なっ!」
ルリシアさんはトールの言葉にワナワナと震えている。
まあ知らないからしょうがないかもしれないが、帝国のお姫様に対してそんな口を聞いてもいいのか?
皇帝陛下が知ったら問答無用で斬りかかってくるぞ。
「そう。でも一つだけ教えて上げる。ユートくんと戦ってすぐに負けちゃったみたいだけど、別にそれは恥じゃないわ。ユートくんはあなたが思っている以上に強いからね。だから素直に負けた現実を受け入れなさい」
「なっ! 俺は負けてねえ! あの時は調子が悪かっただけだ」
本当に諦めが悪いな。もし学園が許可してくれるなら、もう一度俺が叩きのめしてやりたい所だ。
「わかった。君の言い分はわかった」
「ならあのガキと模擬戦をやらせて下さい! 今度こそ俺が勝ってみせます」
それはこちらとしても望むところだ。
もう二度と立ち向かって来ないよう、恐怖を植え付けてやる。
「その願いを叶えて上げたい所だけど、入学前とはいえ、学生同士が勝手に決闘をするのは御法度なんだよ」
「それはシズル様が許可して下されば」
「いや、私は昨日ユートと戦って、これ以上問題を起こすなって釘を刺されてしまってね。だから私が指導という形で、君と戦ってあげるよ」
いや、シズルさんなら例え怒られようとも、自分の道を貫くような気がする。ただこの人は自分が戦いたいだけなんじゃないか?
「五秒もったら君が学園に入れるよう、口添えをしてあげるよ」
「本当ですか!」
「ああ。それじゃあこの石が地面に落ちたら開始ということで」
おいおい。こんな所で戦いを初めてしまったぞ。
さすがにこれは不味くないか?
だけど関係者だと思われて巻き沿いを食らうのは勘弁して欲しいから、ここは静観することしよう。
それにトールがシズルさんにぶちのめされる所を見てみたい。
ルリシアさんも俺と同じ考えなのか、止める気配がない。むしろやってしまえ的な目をしている。
「行くぞ」
トールは槍を構え、シズルさんは小石を軽く上に投げる。
そして小石が地面に落ちると同時に、トールは視線をシズルさんに向けながら後方へと下がっていく。
まあ五秒経てば勝ちだから、当然の行動だ。
おそらく本人は余裕で勝てると思っていることだろう。
だが甘い。
小石が落ちると同時にシズルさんは地面を蹴り、一瞬でトールとの間合いを詰めた。
「えっ?」
トールは状況が飲み込めていないのか、間抜けな声を上げる。
だが日頃から鍛練をしていた賜物なのか、反射的に接近してきたシズルさんに向けて槍を突く。
しかしシズルさんには通じることはなく、軽く避けられてしまい、拳が届く間合いに入られる。
「これで終わりだ」
そしてシズルさんはトールの胸部に向かって拳を放つ。
シズルさんの動きを把握出来なかったトールは、その拳をもろに食らってしまった。
「ぐはっ!」
するとトールは、まるで空を飛んでいるかのように吹き飛び、学園の敷地内にある池に落ちるのであった。
突然背後から声をかけてきたのはトールだった。どうやら試験の結果に納得出来ないようだ。
「弱かったからじゃない」
「そんなことないです! 模擬戦でそのガキに負けたのは油断したからで」
「君は戦場で負けたときも油断したからと言い訳するつもりかい?」
「くっ! でも俺の戦いを見てないでしょ! 見てくれればブレイヴ学園に相応しいってわかってもらえますよ!」
試験に落ちたというのに見苦しいな。
シズルさんはどうするつもりなんだ。
一応ブレイヴ学園の教員だと言ってたけど、さすがに不合格の奴を合格にすることは出来ないだろう。
「シズル様、俺と戦って下さい! そのガキより強いって所を証明してみせます」
俺に一瞬で負けたのに、よくそんな台詞が出てくるな。自信過剰にも程があるぞ。
「ねえユートくん。この失礼な人は誰なの?」
「僕の模擬戦の相手だった人」
「ユートくんが言ってた人ね」
昨日ルリシアさんには試験のことを聞かれたので、トールについては話してある。その時はすごく怒ってたな。
「ねえあなた」
「なんだよ。今は忙しいんだ。話しかけてくるんじゃねえ」
「なっ!」
ルリシアさんはトールの言葉にワナワナと震えている。
まあ知らないからしょうがないかもしれないが、帝国のお姫様に対してそんな口を聞いてもいいのか?
皇帝陛下が知ったら問答無用で斬りかかってくるぞ。
「そう。でも一つだけ教えて上げる。ユートくんと戦ってすぐに負けちゃったみたいだけど、別にそれは恥じゃないわ。ユートくんはあなたが思っている以上に強いからね。だから素直に負けた現実を受け入れなさい」
「なっ! 俺は負けてねえ! あの時は調子が悪かっただけだ」
本当に諦めが悪いな。もし学園が許可してくれるなら、もう一度俺が叩きのめしてやりたい所だ。
「わかった。君の言い分はわかった」
「ならあのガキと模擬戦をやらせて下さい! 今度こそ俺が勝ってみせます」
それはこちらとしても望むところだ。
もう二度と立ち向かって来ないよう、恐怖を植え付けてやる。
「その願いを叶えて上げたい所だけど、入学前とはいえ、学生同士が勝手に決闘をするのは御法度なんだよ」
「それはシズル様が許可して下されば」
「いや、私は昨日ユートと戦って、これ以上問題を起こすなって釘を刺されてしまってね。だから私が指導という形で、君と戦ってあげるよ」
いや、シズルさんなら例え怒られようとも、自分の道を貫くような気がする。ただこの人は自分が戦いたいだけなんじゃないか?
「五秒もったら君が学園に入れるよう、口添えをしてあげるよ」
「本当ですか!」
「ああ。それじゃあこの石が地面に落ちたら開始ということで」
おいおい。こんな所で戦いを初めてしまったぞ。
さすがにこれは不味くないか?
だけど関係者だと思われて巻き沿いを食らうのは勘弁して欲しいから、ここは静観することしよう。
それにトールがシズルさんにぶちのめされる所を見てみたい。
ルリシアさんも俺と同じ考えなのか、止める気配がない。むしろやってしまえ的な目をしている。
「行くぞ」
トールは槍を構え、シズルさんは小石を軽く上に投げる。
そして小石が地面に落ちると同時に、トールは視線をシズルさんに向けながら後方へと下がっていく。
まあ五秒経てば勝ちだから、当然の行動だ。
おそらく本人は余裕で勝てると思っていることだろう。
だが甘い。
小石が落ちると同時にシズルさんは地面を蹴り、一瞬でトールとの間合いを詰めた。
「えっ?」
トールは状況が飲み込めていないのか、間抜けな声を上げる。
だが日頃から鍛練をしていた賜物なのか、反射的に接近してきたシズルさんに向けて槍を突く。
しかしシズルさんには通じることはなく、軽く避けられてしまい、拳が届く間合いに入られる。
「これで終わりだ」
そしてシズルさんはトールの胸部に向かって拳を放つ。
シズルさんの動きを把握出来なかったトールは、その拳をもろに食らってしまった。
「ぐはっ!」
するとトールは、まるで空を飛んでいるかのように吹き飛び、学園の敷地内にある池に落ちるのであった。
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