69 / 86
紛らわしい結果
しおりを挟む
俺とルリシアさんの間にどんよりした空気が流れる。
「残念だけど仕方ないね」
「うん⋯⋯」
筆記試験が悪かったのか、それとも模擬戦でシズルさん相手にやられたのが不味かったのか。
とにかくここにいても邪魔になるだけだ。
結果を知りたがっている受験生はまだいるからな。
「ルリシアさん行こうか」
「そうだね⋯⋯」
俺は落ち込んでいるルリシアさんの手を引き、この場から離れようとする。
すると周囲にいた一人から声が上がった。
「今年の首席は六百六十六番か! もしかしてシズル様と戦った子じゃないか」
「えっ? それってユートくんの番号じゃない!」
俯き気味だったルリシアさんが、顔を上げて掲示板を確認する。
俺ももう一度掲示板を探す。
六百六十六番は⋯⋯やっぱりない。
「六百六十六番は見当たらないね。けどさっきユートくんの番号は首席だって言ってたのに」
しかもシズルさんと戦った子となると俺で間違いないはず。
もう一度掲示板をよく見てみる。今度は下の方だけではなく上の方も見てみると⋯⋯
「あ、あった! ルリシアさんの番号もあったよ!」
「えっ? 本当?」
「うん。真ん中の一番上の所に」
「本当だ! やったあ!」
ルリシアさんは自分の番号を見つけたことで、喜びを爆発させる。そしていつも通り抱きしめてきたので、俺も抱きしめ返す。
「そうだよね。ユートくんが落ちるなんておかしいと思ったもん」
「僕はルリシアさんが落ちる訳ないって思ってたよ」
「番号があって嬉しいけど、少し紛らわしいよね」
ルリシアさんの言いたいことはわかる。
首席、次席、三席までの番号は、掲示板の中央上に表示してあったからだ。
ちなみに首席が俺で、ルリシアさんは次席だった。
「でもこれでユートくんと一緒に学園に通えるね」
「僕もルリシアさんと学園に通えて嬉しいです」
新生活で知っている人がいるというのは安心する。それがルリシアさんならなおさらだ。
「合格した方はこちらで受付をして下さい」
校舎の入口で、学園の関係者らしき人が声を上げていた。
「ユートくん行こっか」
「うん」
そして俺達は受付へと向かうのだが、突如背後から首に手を回された。
「なっ!」
気配を全く感じなかったぞ! いったい誰がこんなことを。
ルリシアさんも突然のことで驚き、声を上げることが出来ないでいる。
皇帝時間発動しなかった。攻撃の意思はないということか。
俺は誰がこんなことをしてきたか確認するため、後ろを振り向くとそこには⋯⋯関わりたくない人がいた。
「少年、合格おめでとう。しかも首席だなんて、これは私が模擬戦で戦ってやったお陰だな」
「ソウデスネ」
俺は感情を殺した声で答える。
俺達の首に手を回してきたのはシズルさんだった。
この人トラブルメーカーっぽいから、出来ればもう会いたくなかった。
あの時もし妙齢な女性に模擬戦を止めてもらえなかったら、俺は確実に怪我をしていたからな。
「何だ? 私にまた会えて嬉しいのか? それとも抱きしめられて喜んでいるのか?」
「シズルサンニアエテウレシイデス」
「そうだろうそうだろう」
本当はどっちも違うと言いたかったけど、機嫌を損ねると何をしてくるかわからないので、とりあえず無難な答えを返す。
「それよりこれから受付をするので離して下さい。ルリシアさんだって嫌がって⋯⋯」
「本当にそうかな?」
そういえばルリシアさんがさっきから無反応だ。最初は突然のことで驚いて硬直していたかもしれないけど今は⋯⋯顔を赤くしていた!
えっ? 何で?
まさかルリシアさんは女性に抱きしめられると喜ぶ人なのか?
だが俺の疑問はすぐに氷解した。
「あの! Sランク冒険者のシズル様ですよね!」
「そうだが?」
「私、ルリシアと言います。シズル様のファンです! 握手して下さい!」
ルリシアさんはさながらアイドルに会ったファンのように感激していた。
「今、君のことを抱きしめているんだが、それじゃあ満足出来ないのかい?」
「そ、そんなことないです」
改めて、自分がシズルさんに抱きしめられていることに気づいたのか、さらに顔が赤くなる。
それにしてもこの人、Sランク冒険者なんだ。
Sランク冒険者は国に数えるくらいしかいない。
拳聖のジョブを持っているということも関係していると思うが、だからみんなシズルさんのことを知っていたんだ。
「それより少年、今暇か? 暇なら昨日の続きをしよう」
「暇じゃないです。これから合格の手続きをしなくちゃいけないので」
冗談じゃない。今戦ったら確実にボコボコにされるのが目に見えている。これは何としてでも回避しなければ。
「そんなもの後でいいだろ? 私と楽しくバトルするぞ」
この人しつこい。このままだと無理矢理戦うことになってしまう。
だが女神は俺を見捨てなかった。何故なら背後からシズルさんに声をかける人物がいたからだ。
「残念だけど仕方ないね」
「うん⋯⋯」
筆記試験が悪かったのか、それとも模擬戦でシズルさん相手にやられたのが不味かったのか。
とにかくここにいても邪魔になるだけだ。
結果を知りたがっている受験生はまだいるからな。
「ルリシアさん行こうか」
「そうだね⋯⋯」
俺は落ち込んでいるルリシアさんの手を引き、この場から離れようとする。
すると周囲にいた一人から声が上がった。
「今年の首席は六百六十六番か! もしかしてシズル様と戦った子じゃないか」
「えっ? それってユートくんの番号じゃない!」
俯き気味だったルリシアさんが、顔を上げて掲示板を確認する。
俺ももう一度掲示板を探す。
六百六十六番は⋯⋯やっぱりない。
「六百六十六番は見当たらないね。けどさっきユートくんの番号は首席だって言ってたのに」
しかもシズルさんと戦った子となると俺で間違いないはず。
もう一度掲示板をよく見てみる。今度は下の方だけではなく上の方も見てみると⋯⋯
「あ、あった! ルリシアさんの番号もあったよ!」
「えっ? 本当?」
「うん。真ん中の一番上の所に」
「本当だ! やったあ!」
ルリシアさんは自分の番号を見つけたことで、喜びを爆発させる。そしていつも通り抱きしめてきたので、俺も抱きしめ返す。
「そうだよね。ユートくんが落ちるなんておかしいと思ったもん」
「僕はルリシアさんが落ちる訳ないって思ってたよ」
「番号があって嬉しいけど、少し紛らわしいよね」
ルリシアさんの言いたいことはわかる。
首席、次席、三席までの番号は、掲示板の中央上に表示してあったからだ。
ちなみに首席が俺で、ルリシアさんは次席だった。
「でもこれでユートくんと一緒に学園に通えるね」
「僕もルリシアさんと学園に通えて嬉しいです」
新生活で知っている人がいるというのは安心する。それがルリシアさんならなおさらだ。
「合格した方はこちらで受付をして下さい」
校舎の入口で、学園の関係者らしき人が声を上げていた。
「ユートくん行こっか」
「うん」
そして俺達は受付へと向かうのだが、突如背後から首に手を回された。
「なっ!」
気配を全く感じなかったぞ! いったい誰がこんなことを。
ルリシアさんも突然のことで驚き、声を上げることが出来ないでいる。
皇帝時間発動しなかった。攻撃の意思はないということか。
俺は誰がこんなことをしてきたか確認するため、後ろを振り向くとそこには⋯⋯関わりたくない人がいた。
「少年、合格おめでとう。しかも首席だなんて、これは私が模擬戦で戦ってやったお陰だな」
「ソウデスネ」
俺は感情を殺した声で答える。
俺達の首に手を回してきたのはシズルさんだった。
この人トラブルメーカーっぽいから、出来ればもう会いたくなかった。
あの時もし妙齢な女性に模擬戦を止めてもらえなかったら、俺は確実に怪我をしていたからな。
「何だ? 私にまた会えて嬉しいのか? それとも抱きしめられて喜んでいるのか?」
「シズルサンニアエテウレシイデス」
「そうだろうそうだろう」
本当はどっちも違うと言いたかったけど、機嫌を損ねると何をしてくるかわからないので、とりあえず無難な答えを返す。
「それよりこれから受付をするので離して下さい。ルリシアさんだって嫌がって⋯⋯」
「本当にそうかな?」
そういえばルリシアさんがさっきから無反応だ。最初は突然のことで驚いて硬直していたかもしれないけど今は⋯⋯顔を赤くしていた!
えっ? 何で?
まさかルリシアさんは女性に抱きしめられると喜ぶ人なのか?
だが俺の疑問はすぐに氷解した。
「あの! Sランク冒険者のシズル様ですよね!」
「そうだが?」
「私、ルリシアと言います。シズル様のファンです! 握手して下さい!」
ルリシアさんはさながらアイドルに会ったファンのように感激していた。
「今、君のことを抱きしめているんだが、それじゃあ満足出来ないのかい?」
「そ、そんなことないです」
改めて、自分がシズルさんに抱きしめられていることに気づいたのか、さらに顔が赤くなる。
それにしてもこの人、Sランク冒険者なんだ。
Sランク冒険者は国に数えるくらいしかいない。
拳聖のジョブを持っているということも関係していると思うが、だからみんなシズルさんのことを知っていたんだ。
「それより少年、今暇か? 暇なら昨日の続きをしよう」
「暇じゃないです。これから合格の手続きをしなくちゃいけないので」
冗談じゃない。今戦ったら確実にボコボコにされるのが目に見えている。これは何としてでも回避しなければ。
「そんなもの後でいいだろ? 私と楽しくバトルするぞ」
この人しつこい。このままだと無理矢理戦うことになってしまう。
だが女神は俺を見捨てなかった。何故なら背後からシズルさんに声をかける人物がいたからだ。
21
お気に入りに追加
1,211
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる