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俺とルリシアさんの間にどんよりした空気が流れる。
「残念だけど仕方ないね」
「うん⋯⋯」
筆記試験が悪かったのか、それとも模擬戦でシズルさん相手にやられたのが不味かったのか。
とにかくここにいても邪魔になるだけだ。
結果を知りたがっている受験生はまだいるからな。
「ルリシアさん行こうか」
「そうだね⋯⋯」
俺は落ち込んでいるルリシアさんの手を引き、この場から離れようとする。
すると周囲にいた一人から声が上がった。
「今年の首席は六百六十六番か! もしかしてシズル様と戦った子じゃないか」
「えっ? それってユートくんの番号じゃない!」
俯き気味だったルリシアさんが、顔を上げて掲示板を確認する。
俺ももう一度掲示板を探す。
六百六十六番は⋯⋯やっぱりない。
「六百六十六番は見当たらないね。けどさっきユートくんの番号は首席だって言ってたのに」
しかもシズルさんと戦った子となると俺で間違いないはず。
もう一度掲示板をよく見てみる。今度は下の方だけではなく上の方も見てみると⋯⋯
「あ、あった! ルリシアさんの番号もあったよ!」
「えっ? 本当?」
「うん。真ん中の一番上の所に」
「本当だ! やったあ!」
ルリシアさんは自分の番号を見つけたことで、喜びを爆発させる。そしていつも通り抱きしめてきたので、俺も抱きしめ返す。
「そうだよね。ユートくんが落ちるなんておかしいと思ったもん」
「僕はルリシアさんが落ちる訳ないって思ってたよ」
「番号があって嬉しいけど、少し紛らわしいよね」
ルリシアさんの言いたいことはわかる。
首席、次席、三席までの番号は、掲示板の中央上に表示してあったからだ。
ちなみに首席が俺で、ルリシアさんは次席だった。
「でもこれでユートくんと一緒に学園に通えるね」
「僕もルリシアさんと学園に通えて嬉しいです」
新生活で知っている人がいるというのは安心する。それがルリシアさんならなおさらだ。
「合格した方はこちらで受付をして下さい」
校舎の入口で、学園の関係者らしき人が声を上げていた。
「ユートくん行こっか」
「うん」
そして俺達は受付へと向かうのだが、突如背後から首に手を回された。
「なっ!」
気配を全く感じなかったぞ! いったい誰がこんなことを。
ルリシアさんも突然のことで驚き、声を上げることが出来ないでいる。
皇帝時間発動しなかった。攻撃の意思はないということか。
俺は誰がこんなことをしてきたか確認するため、後ろを振り向くとそこには⋯⋯関わりたくない人がいた。
「少年、合格おめでとう。しかも首席だなんて、これは私が模擬戦で戦ってやったお陰だな」
「ソウデスネ」
俺は感情を殺した声で答える。
俺達の首に手を回してきたのはシズルさんだった。
この人トラブルメーカーっぽいから、出来ればもう会いたくなかった。
あの時もし妙齢な女性に模擬戦を止めてもらえなかったら、俺は確実に怪我をしていたからな。
「何だ? 私にまた会えて嬉しいのか? それとも抱きしめられて喜んでいるのか?」
「シズルサンニアエテウレシイデス」
「そうだろうそうだろう」
本当はどっちも違うと言いたかったけど、機嫌を損ねると何をしてくるかわからないので、とりあえず無難な答えを返す。
「それよりこれから受付をするので離して下さい。ルリシアさんだって嫌がって⋯⋯」
「本当にそうかな?」
そういえばルリシアさんがさっきから無反応だ。最初は突然のことで驚いて硬直していたかもしれないけど今は⋯⋯顔を赤くしていた!
えっ? 何で?
まさかルリシアさんは女性に抱きしめられると喜ぶ人なのか?
だが俺の疑問はすぐに氷解した。
「あの! Sランク冒険者のシズル様ですよね!」
「そうだが?」
「私、ルリシアと言います。シズル様のファンです! 握手して下さい!」
ルリシアさんはさながらアイドルに会ったファンのように感激していた。
「今、君のことを抱きしめているんだが、それじゃあ満足出来ないのかい?」
「そ、そんなことないです」
改めて、自分がシズルさんに抱きしめられていることに気づいたのか、さらに顔が赤くなる。
それにしてもこの人、Sランク冒険者なんだ。
Sランク冒険者は国に数えるくらいしかいない。
拳聖のジョブを持っているということも関係していると思うが、だからみんなシズルさんのことを知っていたんだ。
「それより少年、今暇か? 暇なら昨日の続きをしよう」
「暇じゃないです。これから合格の手続きをしなくちゃいけないので」
冗談じゃない。今戦ったら確実にボコボコにされるのが目に見えている。これは何としてでも回避しなければ。
「そんなもの後でいいだろ? 私と楽しくバトルするぞ」
この人しつこい。このままだと無理矢理戦うことになってしまう。
だが女神は俺を見捨てなかった。何故なら背後からシズルさんに声をかける人物がいたからだ。
「残念だけど仕方ないね」
「うん⋯⋯」
筆記試験が悪かったのか、それとも模擬戦でシズルさん相手にやられたのが不味かったのか。
とにかくここにいても邪魔になるだけだ。
結果を知りたがっている受験生はまだいるからな。
「ルリシアさん行こうか」
「そうだね⋯⋯」
俺は落ち込んでいるルリシアさんの手を引き、この場から離れようとする。
すると周囲にいた一人から声が上がった。
「今年の首席は六百六十六番か! もしかしてシズル様と戦った子じゃないか」
「えっ? それってユートくんの番号じゃない!」
俯き気味だったルリシアさんが、顔を上げて掲示板を確認する。
俺ももう一度掲示板を探す。
六百六十六番は⋯⋯やっぱりない。
「六百六十六番は見当たらないね。けどさっきユートくんの番号は首席だって言ってたのに」
しかもシズルさんと戦った子となると俺で間違いないはず。
もう一度掲示板をよく見てみる。今度は下の方だけではなく上の方も見てみると⋯⋯
「あ、あった! ルリシアさんの番号もあったよ!」
「えっ? 本当?」
「うん。真ん中の一番上の所に」
「本当だ! やったあ!」
ルリシアさんは自分の番号を見つけたことで、喜びを爆発させる。そしていつも通り抱きしめてきたので、俺も抱きしめ返す。
「そうだよね。ユートくんが落ちるなんておかしいと思ったもん」
「僕はルリシアさんが落ちる訳ないって思ってたよ」
「番号があって嬉しいけど、少し紛らわしいよね」
ルリシアさんの言いたいことはわかる。
首席、次席、三席までの番号は、掲示板の中央上に表示してあったからだ。
ちなみに首席が俺で、ルリシアさんは次席だった。
「でもこれでユートくんと一緒に学園に通えるね」
「僕もルリシアさんと学園に通えて嬉しいです」
新生活で知っている人がいるというのは安心する。それがルリシアさんならなおさらだ。
「合格した方はこちらで受付をして下さい」
校舎の入口で、学園の関係者らしき人が声を上げていた。
「ユートくん行こっか」
「うん」
そして俺達は受付へと向かうのだが、突如背後から首に手を回された。
「なっ!」
気配を全く感じなかったぞ! いったい誰がこんなことを。
ルリシアさんも突然のことで驚き、声を上げることが出来ないでいる。
皇帝時間発動しなかった。攻撃の意思はないということか。
俺は誰がこんなことをしてきたか確認するため、後ろを振り向くとそこには⋯⋯関わりたくない人がいた。
「少年、合格おめでとう。しかも首席だなんて、これは私が模擬戦で戦ってやったお陰だな」
「ソウデスネ」
俺は感情を殺した声で答える。
俺達の首に手を回してきたのはシズルさんだった。
この人トラブルメーカーっぽいから、出来ればもう会いたくなかった。
あの時もし妙齢な女性に模擬戦を止めてもらえなかったら、俺は確実に怪我をしていたからな。
「何だ? 私にまた会えて嬉しいのか? それとも抱きしめられて喜んでいるのか?」
「シズルサンニアエテウレシイデス」
「そうだろうそうだろう」
本当はどっちも違うと言いたかったけど、機嫌を損ねると何をしてくるかわからないので、とりあえず無難な答えを返す。
「それよりこれから受付をするので離して下さい。ルリシアさんだって嫌がって⋯⋯」
「本当にそうかな?」
そういえばルリシアさんがさっきから無反応だ。最初は突然のことで驚いて硬直していたかもしれないけど今は⋯⋯顔を赤くしていた!
えっ? 何で?
まさかルリシアさんは女性に抱きしめられると喜ぶ人なのか?
だが俺の疑問はすぐに氷解した。
「あの! Sランク冒険者のシズル様ですよね!」
「そうだが?」
「私、ルリシアと言います。シズル様のファンです! 握手して下さい!」
ルリシアさんはさながらアイドルに会ったファンのように感激していた。
「今、君のことを抱きしめているんだが、それじゃあ満足出来ないのかい?」
「そ、そんなことないです」
改めて、自分がシズルさんに抱きしめられていることに気づいたのか、さらに顔が赤くなる。
それにしてもこの人、Sランク冒険者なんだ。
Sランク冒険者は国に数えるくらいしかいない。
拳聖のジョブを持っているということも関係していると思うが、だからみんなシズルさんのことを知っていたんだ。
「それより少年、今暇か? 暇なら昨日の続きをしよう」
「暇じゃないです。これから合格の手続きをしなくちゃいけないので」
冗談じゃない。今戦ったら確実にボコボコにされるのが目に見えている。これは何としてでも回避しなければ。
「そんなもの後でいいだろ? 私と楽しくバトルするぞ」
この人しつこい。このままだと無理矢理戦うことになってしまう。
だが女神は俺を見捨てなかった。何故なら背後からシズルさんに声をかける人物がいたからだ。
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