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入学試験(7)
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もう少しでシズルさんの攻撃範囲に入ってしまう。
そうなったら俺はまた、一方的に殴られるだけになるだろう。
その前にシズルさんから隙を作る。
俺は念じてあるものを動かす。
「こんなものを私に向けてどうにか出来ると思っているのか?」
シズルさんは自分の顔面に向かってきた物を拳で払う⋯⋯が。
「なに!? すり抜けた!」
だがそれをシズルさんは触れることが出来なかった。
そして俺はそれをシズルさんの顔の前で止めて、こちらの姿を悟らせないようにした。
「この本は何!」
シズルさんは再び本を払おうとするが、やはり触れることは出来ない。
そう。俺が念じて飛ばしたのは古文書だ。
以前古文書とカードは俺しか触れることが出来ないのは、実証済みなため、シズルさんの目を塞げば、僅かだが隙を作ることが出来ると考えた。
そして作戦は成功し、シズルさんは狼狽えている。
このチャンスを逃がす訳には行かない!
俺はシズルさんの胸部目掛けて、おもいっきり蹴りを放つ。
「くっ!」
さすがのシズルさんも突然目を隠された状態ではかわすことが出来ず、まともに俺の蹴りを食らった。
だけどシズルさんを後方へと吹き飛ばすことに成功するが、倒すまでには至らず、地面に膝をつかすことしかできなかった。
「今のは少し効いたよ。まさか目を塞いでくるとは思わなかった。でも次は食らわない」
「残念ですけど次はないですよ」
俺はシズルさんを蹴り飛ばした後、すぐに次の種を蒔いていた。
「悪いけどこれも勝つためです。せめて死なないように祈っててあげるよ」
シズルさんの上空でカードが光を放ち、大岩が具現化する。
これはグリフォンを倒した時と同じ戦法だ。
だけどグリフォンと違ってシズルさんなら、ただ大岩を具現化するだけなら避けられる可能性があった。
そのため、俺は隙を作るために古文書を利用したのだ。
「岩だと!」
「あんなものどこから現れたんだ!」
「シズル様が潰されてしまうぞ!」
周囲の受験生達は目の前の光景が信じられないのか、騒ぎ立てていた。
いくら拳聖だろうとあの大岩に潰されたらただでは済まないだろう。
別に命を奪うことが目的ではないので、大岩はすぐにカードに戻そう。
俺は⋯⋯いや、この場にいる者は拳聖の敗北を疑わなかった⋯⋯ただ一人を除いて。
「この程度で私を倒せると思っているのかい?」
シズルさんは余裕の笑みを浮かべている。タイミング的にはもう避けられないはずだ。
ハッタリだ。一瞬そのような甘い考えが浮かんだが、すぐに間違いだと気づかされた。
「私を倒すなら、この十倍の岩を持ってきな!」
シズルさんが膝を落とし構えると、右腕が眩しい光に包まれる。
まさか破壊するつもりなのか! どれだけ大きな岩だと思っているんだ! 俺の身長の五倍はあるんだぞ! そんなこと出来るはずがない。
シズルさんが発していた光が右手に集束していく。
そして岩に向かって天高く拳を繰り出した。
「オーラナックル!」
シズルさんの拳が大岩に届く。すると凄まじい破壊音と共に大岩が粉々に砕け、シズルさんはその場に無傷で立ち尽くしていた。
「し、信じられない。まさか大岩が壊されるなんて」
拳聖というのはどれだけ強力なジョブなんだ。いや、ジョブだけじゃない。シズルさんの研鑽あってのことなんだろう。
だけどこれで俺は勝機の道を失った。もうシズルさんを倒す方法が思い浮かばない。
だけど諦めてたまるものか。俺はトアのためにブレイヴ学園の試験に合格するんだ!
「ふふ⋯⋯いいぞ。奥の手が破られてもまだ目が死んでいない。私はお前のような若人が大好きだ」
シズルさんが益々狂気染みた目をしてきた。
人に好かれて嬉しくない気持ちになったのは初めてだ。
だけどどうやって攻めればいい。生半可なことではシズルさんを倒すことは出来ないぞ。
考えろ。どうすれば俺はシズルさんに勝てる。何か、何か方法があるはずだ。
俺は頭の中であらゆる策を浮かべ、シズルさんに勝つ方法を探していた。
だがこの時異変が起きた。
シズルさんが両腕を下ろし、構えを解いたのだ。
どういうことだ? これも作戦か?
それにさっきから痛いほど伝わってきていた殺気もなくなっている。
俺は意味もわからず、動揺してしまう。
「やれやれ。せっかく良いところだったのにここまでだな」
「どういうことですか?」
「邪魔が入ったから戦いは終わりだ」
邪魔? 誰のことを言ってるんだ?
この時俺は周囲がざわめき始めているのを感じた。
そして受験生達の波が割れると、一人の女性がこちらに向かってくるのであった。
そうなったら俺はまた、一方的に殴られるだけになるだろう。
その前にシズルさんから隙を作る。
俺は念じてあるものを動かす。
「こんなものを私に向けてどうにか出来ると思っているのか?」
シズルさんは自分の顔面に向かってきた物を拳で払う⋯⋯が。
「なに!? すり抜けた!」
だがそれをシズルさんは触れることが出来なかった。
そして俺はそれをシズルさんの顔の前で止めて、こちらの姿を悟らせないようにした。
「この本は何!」
シズルさんは再び本を払おうとするが、やはり触れることは出来ない。
そう。俺が念じて飛ばしたのは古文書だ。
以前古文書とカードは俺しか触れることが出来ないのは、実証済みなため、シズルさんの目を塞げば、僅かだが隙を作ることが出来ると考えた。
そして作戦は成功し、シズルさんは狼狽えている。
このチャンスを逃がす訳には行かない!
俺はシズルさんの胸部目掛けて、おもいっきり蹴りを放つ。
「くっ!」
さすがのシズルさんも突然目を隠された状態ではかわすことが出来ず、まともに俺の蹴りを食らった。
だけどシズルさんを後方へと吹き飛ばすことに成功するが、倒すまでには至らず、地面に膝をつかすことしかできなかった。
「今のは少し効いたよ。まさか目を塞いでくるとは思わなかった。でも次は食らわない」
「残念ですけど次はないですよ」
俺はシズルさんを蹴り飛ばした後、すぐに次の種を蒔いていた。
「悪いけどこれも勝つためです。せめて死なないように祈っててあげるよ」
シズルさんの上空でカードが光を放ち、大岩が具現化する。
これはグリフォンを倒した時と同じ戦法だ。
だけどグリフォンと違ってシズルさんなら、ただ大岩を具現化するだけなら避けられる可能性があった。
そのため、俺は隙を作るために古文書を利用したのだ。
「岩だと!」
「あんなものどこから現れたんだ!」
「シズル様が潰されてしまうぞ!」
周囲の受験生達は目の前の光景が信じられないのか、騒ぎ立てていた。
いくら拳聖だろうとあの大岩に潰されたらただでは済まないだろう。
別に命を奪うことが目的ではないので、大岩はすぐにカードに戻そう。
俺は⋯⋯いや、この場にいる者は拳聖の敗北を疑わなかった⋯⋯ただ一人を除いて。
「この程度で私を倒せると思っているのかい?」
シズルさんは余裕の笑みを浮かべている。タイミング的にはもう避けられないはずだ。
ハッタリだ。一瞬そのような甘い考えが浮かんだが、すぐに間違いだと気づかされた。
「私を倒すなら、この十倍の岩を持ってきな!」
シズルさんが膝を落とし構えると、右腕が眩しい光に包まれる。
まさか破壊するつもりなのか! どれだけ大きな岩だと思っているんだ! 俺の身長の五倍はあるんだぞ! そんなこと出来るはずがない。
シズルさんが発していた光が右手に集束していく。
そして岩に向かって天高く拳を繰り出した。
「オーラナックル!」
シズルさんの拳が大岩に届く。すると凄まじい破壊音と共に大岩が粉々に砕け、シズルさんはその場に無傷で立ち尽くしていた。
「し、信じられない。まさか大岩が壊されるなんて」
拳聖というのはどれだけ強力なジョブなんだ。いや、ジョブだけじゃない。シズルさんの研鑽あってのことなんだろう。
だけどこれで俺は勝機の道を失った。もうシズルさんを倒す方法が思い浮かばない。
だけど諦めてたまるものか。俺はトアのためにブレイヴ学園の試験に合格するんだ!
「ふふ⋯⋯いいぞ。奥の手が破られてもまだ目が死んでいない。私はお前のような若人が大好きだ」
シズルさんが益々狂気染みた目をしてきた。
人に好かれて嬉しくない気持ちになったのは初めてだ。
だけどどうやって攻めればいい。生半可なことではシズルさんを倒すことは出来ないぞ。
考えろ。どうすれば俺はシズルさんに勝てる。何か、何か方法があるはずだ。
俺は頭の中であらゆる策を浮かべ、シズルさんに勝つ方法を探していた。
だがこの時異変が起きた。
シズルさんが両腕を下ろし、構えを解いたのだ。
どういうことだ? これも作戦か?
それにさっきから痛いほど伝わってきていた殺気もなくなっている。
俺は意味もわからず、動揺してしまう。
「やれやれ。せっかく良いところだったのにここまでだな」
「どういうことですか?」
「邪魔が入ったから戦いは終わりだ」
邪魔? 誰のことを言ってるんだ?
この時俺は周囲がざわめき始めているのを感じた。
そして受験生達の波が割れると、一人の女性がこちらに向かってくるのであった。
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