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入学試験(5)
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誰だこの人は?
突然模擬戦を止めるなんて⋯⋯
「シズル様どうしてここに?」
シズル? それがこの人の名前か。
少なくとも試験官の知り合いのようだ。
「私もこの学園の教員の一人だ。受験生の実力を確認したくてね」
「どういうことですか」
「察しが悪いな⋯⋯そこの少年の模擬戦は私がしてやるよ」
この人いきなり乱入してきて、とんでもないことを言い始めたぞ。
年齢は試験官の方が上に見えるのに、女性には敬語を使っている。立場的には女性の方が上ということか。
「理事長の許可は取っているのですか?」
「そんなものは終わってから取ればいい」
「そうはいきません。あなたの動向には気をつけるよう、理事長にも言われていますし」
「ここで問答をしていると、試験時間に支障が出るぞ。この少年だけ私にやらせてくれればいい」
「どうなっても知りませんよ」
「感謝する。夜に酒場で一杯奢ってやろう」
「やめときます。明日も仕事があるので」
どうやら話し合いの結果、シズルという女性が俺の相手をするようだ。
今のやり取りを見て、シズルさんは自分勝手な人だということがわかった。
こういうタイプは相手を待つのではなく、ガンガン攻めてくるタイプだ。
模擬戦が開始したら、すぐに迫ってくると考えた方がいいだろう。
「おい、あいつシズル様と戦うのか?」
「可哀想に。ボコボコにされて終わるだろ」
「まさかシズル様の戦いが見れるなんて。それだけで試験を受けに来た甲斐があったわ」
俺は知らないけど、この人はかなり強いらしい。
でもそれは周りの声を聞かなくてもわかる。
普通に話しているように見えるけど、恐ろしい程の殺気をずっとこちらに向けたままだからだ。
こんなに強烈な殺気を受けたのは、セリカさんのケーキを間違って食べてしまった時以来だな。
これは油断したら一瞬で殺られてしまいそうだ。
「またせたね」
「ううん。待ってないよ」
「私が出て来てやったんだ。簡単に負けてくれるなよ」
「そうならないように頑張ります」
シズルさんは武器を持っていない。どうやら素手で戦うスタイルのようだ。
「それでは模擬戦を始めます。シズル様はやり過ぎないように。もしもの時はすぐに止めますからね」
「君に私が止められるかな」
この人、恐ろしいことを言うな。
もし俺がピンチになっても、試験官は当てに出来ないということか。
これは自分で何とかするしかないな。
「それでは⋯⋯はじめ!」
シズルさんは構えを取っていない。
だが皇帝時間が発動した。
今俺が持っているカードは八枚。
さっきトールとの戦いで使った五枚と、皇帝からもらった白金貨五枚のカード、テレポート、キュアキャットだ。
この三枚のカードは使うわけにいかないので、やはり保管用にセットしてある五枚のカードで戦うしかないな。
俺は裏面になったカードを引き、バトル用のページにセットする。
すると再び時が動き出した。
まずはトール戦と同じ様に、パワーブースターのカードを手に取る。
「僕に力を! パワーブースター!」
身体に力が漲ってくる。これで身体能力はかなり上昇した。
「その本とカード、面白いね。見たところカードに書いてある能力を使えるって所かな」
「さあ、どうですかね」
わざわざ相手に情報を与える必要はないため、俺はシズルさんの問いに答えない。
「まあどっちでもいいけどね。私を楽しませてくれれば」
シズルさんは言葉を言い終えると⋯⋯消えた!
いや、目にも止まらぬスピードでこちらに迫ってるんだ!
俺は剣を構え迎撃しようとするが、シズルさんの動きに目が追いついてなかった。
シズルさんは右足から蹴りを放つ。
狙いは⋯⋯剣!?
予想外の場所に蹴りを放ったため、俺は反応が遅れてしまう。
「くっ!」
鋭い蹴りを剣に受ける。俺はその衝撃で剣を手放してしまう。
「どうしたの? まさかこれで終わりだなんて言わないよね?」
「刃が潰してあるとはいえ、剣の面部分⋯⋯剣背に蹴りが来るなんて普通思いませんよ」
もしかしたら刃が潰れているからこそ、狙ってやった可能性もあるけど。でもこの人なら刃があったとしても、やるような気がする。
「武器はなくなった。これで終わりにするか続けるか、どうする?」
もしこのままやめても、トールを倒したから俺は合格するのだろうか? 合格が決まってるならここで敢えて無理をする必要はないか。
「ちなみに私に負けたら君は不合格にする」
「シズル様それは⋯⋯」
「私にはそれくらいの権限はあるはずだ。さあ少年、まだ続けるか」
「そんなことを言われて、やめるなんて言えないよ」
逃げ道を塞いでくるなんてずるい大人だ。
「それでいい。本気で私を倒しに来い」
「わかりました」
剣はない。だけど俺は素手で戦う方法もセリカさんから教わっている。
勝たなきゃ不合格だって言うなら、勝ってやろうじゃないか。
俺はシズルさんを倒すため、構えるのであった。
突然模擬戦を止めるなんて⋯⋯
「シズル様どうしてここに?」
シズル? それがこの人の名前か。
少なくとも試験官の知り合いのようだ。
「私もこの学園の教員の一人だ。受験生の実力を確認したくてね」
「どういうことですか」
「察しが悪いな⋯⋯そこの少年の模擬戦は私がしてやるよ」
この人いきなり乱入してきて、とんでもないことを言い始めたぞ。
年齢は試験官の方が上に見えるのに、女性には敬語を使っている。立場的には女性の方が上ということか。
「理事長の許可は取っているのですか?」
「そんなものは終わってから取ればいい」
「そうはいきません。あなたの動向には気をつけるよう、理事長にも言われていますし」
「ここで問答をしていると、試験時間に支障が出るぞ。この少年だけ私にやらせてくれればいい」
「どうなっても知りませんよ」
「感謝する。夜に酒場で一杯奢ってやろう」
「やめときます。明日も仕事があるので」
どうやら話し合いの結果、シズルという女性が俺の相手をするようだ。
今のやり取りを見て、シズルさんは自分勝手な人だということがわかった。
こういうタイプは相手を待つのではなく、ガンガン攻めてくるタイプだ。
模擬戦が開始したら、すぐに迫ってくると考えた方がいいだろう。
「おい、あいつシズル様と戦うのか?」
「可哀想に。ボコボコにされて終わるだろ」
「まさかシズル様の戦いが見れるなんて。それだけで試験を受けに来た甲斐があったわ」
俺は知らないけど、この人はかなり強いらしい。
でもそれは周りの声を聞かなくてもわかる。
普通に話しているように見えるけど、恐ろしい程の殺気をずっとこちらに向けたままだからだ。
こんなに強烈な殺気を受けたのは、セリカさんのケーキを間違って食べてしまった時以来だな。
これは油断したら一瞬で殺られてしまいそうだ。
「またせたね」
「ううん。待ってないよ」
「私が出て来てやったんだ。簡単に負けてくれるなよ」
「そうならないように頑張ります」
シズルさんは武器を持っていない。どうやら素手で戦うスタイルのようだ。
「それでは模擬戦を始めます。シズル様はやり過ぎないように。もしもの時はすぐに止めますからね」
「君に私が止められるかな」
この人、恐ろしいことを言うな。
もし俺がピンチになっても、試験官は当てに出来ないということか。
これは自分で何とかするしかないな。
「それでは⋯⋯はじめ!」
シズルさんは構えを取っていない。
だが皇帝時間が発動した。
今俺が持っているカードは八枚。
さっきトールとの戦いで使った五枚と、皇帝からもらった白金貨五枚のカード、テレポート、キュアキャットだ。
この三枚のカードは使うわけにいかないので、やはり保管用にセットしてある五枚のカードで戦うしかないな。
俺は裏面になったカードを引き、バトル用のページにセットする。
すると再び時が動き出した。
まずはトール戦と同じ様に、パワーブースターのカードを手に取る。
「僕に力を! パワーブースター!」
身体に力が漲ってくる。これで身体能力はかなり上昇した。
「その本とカード、面白いね。見たところカードに書いてある能力を使えるって所かな」
「さあ、どうですかね」
わざわざ相手に情報を与える必要はないため、俺はシズルさんの問いに答えない。
「まあどっちでもいいけどね。私を楽しませてくれれば」
シズルさんは言葉を言い終えると⋯⋯消えた!
いや、目にも止まらぬスピードでこちらに迫ってるんだ!
俺は剣を構え迎撃しようとするが、シズルさんの動きに目が追いついてなかった。
シズルさんは右足から蹴りを放つ。
狙いは⋯⋯剣!?
予想外の場所に蹴りを放ったため、俺は反応が遅れてしまう。
「くっ!」
鋭い蹴りを剣に受ける。俺はその衝撃で剣を手放してしまう。
「どうしたの? まさかこれで終わりだなんて言わないよね?」
「刃が潰してあるとはいえ、剣の面部分⋯⋯剣背に蹴りが来るなんて普通思いませんよ」
もしかしたら刃が潰れているからこそ、狙ってやった可能性もあるけど。でもこの人なら刃があったとしても、やるような気がする。
「武器はなくなった。これで終わりにするか続けるか、どうする?」
もしこのままやめても、トールを倒したから俺は合格するのだろうか? 合格が決まってるならここで敢えて無理をする必要はないか。
「ちなみに私に負けたら君は不合格にする」
「シズル様それは⋯⋯」
「私にはそれくらいの権限はあるはずだ。さあ少年、まだ続けるか」
「そんなことを言われて、やめるなんて言えないよ」
逃げ道を塞いでくるなんてずるい大人だ。
「それでいい。本気で私を倒しに来い」
「わかりました」
剣はない。だけど俺は素手で戦う方法もセリカさんから教わっている。
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