58 / 86
新たなカード
しおりを挟む
ルリシアさんは六日後に迎えにくると言って、再び城へと戻っていた。
そして俺はトアにブレイヴ学園のことを伝えるため、部屋と訪れる。
「そっか⋯⋯それじゃあしばらくの間お兄ちゃんに会えなくなっちゃうね」
トアは伏し目がちになり、悲しそうな表情をする。
「そんな寂しいですよぉぉ⋯⋯今回だってユートくんに会えなくて毎日枕を濡らしていたのにぃ」
トアは我慢してくれているが、セリカさんは本当に涙を流していた。
そんな顔を見ると、ブレイヴ学園に行く決意が揺らいでしまう。だけど俺はトアとこれからもずっと過ごしていきたいんだ。だから心を鬼にして堪えることにする。
セレノアの街からブレイヴ学園までは徒歩で十日程かかるため、気軽に帰ることも出来ない。
ルビーさんに送ってもらえばすぐに行き来できると思うけど、毎回頼むのも申し訳ない。
「キュアちゃんがいるからお兄ちゃんに会えなくても我慢します」
キュアがいてくれて本当に良かった。俺の代わりにトアの寂しさを紛らわしてくれよ。
「ミーミー」
「あっ! キュアちゃん」
トアに撫でられていたキュアが、突然俺の元までやってきた。
一応俺は飼い主的な感じだけど、キュアはトアとセリカさんに懐いている。
俺の元に来るなんて初めてのことだ。
「ミー」
「どうしたの?」
「ミーミー」
キュアが俺の方を見上げてずっと鳴いている。
何かを訴えているようにも見えるけど、ネコ語がわからない俺にはさっぱりだ。
「ユートくん、キュアちゃんが古文書を出してって言ってるよ」
「えっ? セリカさんキュアの言葉がわかるの?」
「何となくだけど」
少し気まぐれっぽい所があるから、キュアと何か波長でも合うのだろうか。
ともかくセリカさんの言うとおり古文書を出してみるか。
「アーカイブ⋯⋯それでどうすればいいの?」
古文書は俺の前でフワフワと浮いている。特段何か変わった様子は⋯⋯あった!
「レベルがⅩからXIになってる。でも何か変化があるのかな?」
俺は古文書のページを捲ってみる。するとキュアの時のように最後のページに見慣れぬカードが収まっていた。
「テレポート?」
カードにはテレポート(⭐4)と書かれており、俺は説明文を読む。
瞬時に移動出来るカード。
拠点と定めた場所に一瞬で戻ることができる。もう一度カードを使用した場合は、前回テレポートをした場所に移動する。
「それってユートくんがブレイヴ学園に行っても、すぐに私達に会いに戻れるということですか?」
「うん。たぶんそうみたい」
この屋敷を拠点にしておけば、テレポートのカードを使った時、ここに戻って来れる。そしてもう一度カードを使えば、ブレイヴ学園に帰ることが出来るということか。
「本当!? これでお兄ちゃんと毎日会えるね」
トアは俺と毎日会いたいのか。兄冥利に尽きる言葉だな。
「それじゃあちょっと待っててね」
トアの部屋を拠点に設置するわけにはいかないからな。
俺はテレポートのカードを持ったまま、屋敷のエントランスへと向かう。
そしてカードに念じると光のサークルが現れ、エントランスの床に魔方陣のようなものが描かれる。
「これでいいのかな?」
俺はまたトアの部屋に戻る。
「お兄ちゃんお帰りなさい」
「ただいまトア。それじゃあテレポートのカードを使ってみるぞ」
「うん」
俺は再びカードに念じる。
すると一瞬にして景色が変わり、エントランスに移動することが出来た。
「本当に移動出来ちゃったよ」
俺は改めてカードマスターの力に驚いてしまう。
これは控えめに言ってもプラチナランク以上のジョブなのでは?
これまでジョブのお陰で何度も助けられてきた。俺は改めてカードマスターの力を授けてくれた女神様に感謝する。
そして俺は再度テレポートのカードを使うと、トアの部屋に一瞬で戻ることができた。
「突然ユートくんが現れてびっくりしました」
「お兄ちゃんすごいすごい! これでいつでも会えるね」
「うん」
「毎日トアに会いに来てね。絶対だよ」
「わかった。約束だ」
こうして俺はブレイヴ学園を離れるに当たって、しばらくトアに会えなくなる所だったが、テレポートのカードを手に入れたことで、その憂いはなくなるのであった。
そして俺はトアにブレイヴ学園のことを伝えるため、部屋と訪れる。
「そっか⋯⋯それじゃあしばらくの間お兄ちゃんに会えなくなっちゃうね」
トアは伏し目がちになり、悲しそうな表情をする。
「そんな寂しいですよぉぉ⋯⋯今回だってユートくんに会えなくて毎日枕を濡らしていたのにぃ」
トアは我慢してくれているが、セリカさんは本当に涙を流していた。
そんな顔を見ると、ブレイヴ学園に行く決意が揺らいでしまう。だけど俺はトアとこれからもずっと過ごしていきたいんだ。だから心を鬼にして堪えることにする。
セレノアの街からブレイヴ学園までは徒歩で十日程かかるため、気軽に帰ることも出来ない。
ルビーさんに送ってもらえばすぐに行き来できると思うけど、毎回頼むのも申し訳ない。
「キュアちゃんがいるからお兄ちゃんに会えなくても我慢します」
キュアがいてくれて本当に良かった。俺の代わりにトアの寂しさを紛らわしてくれよ。
「ミーミー」
「あっ! キュアちゃん」
トアに撫でられていたキュアが、突然俺の元までやってきた。
一応俺は飼い主的な感じだけど、キュアはトアとセリカさんに懐いている。
俺の元に来るなんて初めてのことだ。
「ミー」
「どうしたの?」
「ミーミー」
キュアが俺の方を見上げてずっと鳴いている。
何かを訴えているようにも見えるけど、ネコ語がわからない俺にはさっぱりだ。
「ユートくん、キュアちゃんが古文書を出してって言ってるよ」
「えっ? セリカさんキュアの言葉がわかるの?」
「何となくだけど」
少し気まぐれっぽい所があるから、キュアと何か波長でも合うのだろうか。
ともかくセリカさんの言うとおり古文書を出してみるか。
「アーカイブ⋯⋯それでどうすればいいの?」
古文書は俺の前でフワフワと浮いている。特段何か変わった様子は⋯⋯あった!
「レベルがⅩからXIになってる。でも何か変化があるのかな?」
俺は古文書のページを捲ってみる。するとキュアの時のように最後のページに見慣れぬカードが収まっていた。
「テレポート?」
カードにはテレポート(⭐4)と書かれており、俺は説明文を読む。
瞬時に移動出来るカード。
拠点と定めた場所に一瞬で戻ることができる。もう一度カードを使用した場合は、前回テレポートをした場所に移動する。
「それってユートくんがブレイヴ学園に行っても、すぐに私達に会いに戻れるということですか?」
「うん。たぶんそうみたい」
この屋敷を拠点にしておけば、テレポートのカードを使った時、ここに戻って来れる。そしてもう一度カードを使えば、ブレイヴ学園に帰ることが出来るということか。
「本当!? これでお兄ちゃんと毎日会えるね」
トアは俺と毎日会いたいのか。兄冥利に尽きる言葉だな。
「それじゃあちょっと待っててね」
トアの部屋を拠点に設置するわけにはいかないからな。
俺はテレポートのカードを持ったまま、屋敷のエントランスへと向かう。
そしてカードに念じると光のサークルが現れ、エントランスの床に魔方陣のようなものが描かれる。
「これでいいのかな?」
俺はまたトアの部屋に戻る。
「お兄ちゃんお帰りなさい」
「ただいまトア。それじゃあテレポートのカードを使ってみるぞ」
「うん」
俺は再びカードに念じる。
すると一瞬にして景色が変わり、エントランスに移動することが出来た。
「本当に移動出来ちゃったよ」
俺は改めてカードマスターの力に驚いてしまう。
これは控えめに言ってもプラチナランク以上のジョブなのでは?
これまでジョブのお陰で何度も助けられてきた。俺は改めてカードマスターの力を授けてくれた女神様に感謝する。
そして俺は再度テレポートのカードを使うと、トアの部屋に一瞬で戻ることができた。
「突然ユートくんが現れてびっくりしました」
「お兄ちゃんすごいすごい! これでいつでも会えるね」
「うん」
「毎日トアに会いに来てね。絶対だよ」
「わかった。約束だ」
こうして俺はブレイヴ学園を離れるに当たって、しばらくトアに会えなくなる所だったが、テレポートのカードを手に入れたことで、その憂いはなくなるのであった。
22
お気に入りに追加
1,217
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる