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新たなカード

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 ルリシアさんは六日後に迎えにくると言って、再び城へと戻っていた。
 そして俺はトアにブレイヴ学園のことを伝えるため、部屋と訪れる。

「そっか⋯⋯それじゃあしばらくの間お兄ちゃんに会えなくなっちゃうね」

 トアは伏し目がちになり、悲しそうな表情をする。

「そんな寂しいですよぉぉ⋯⋯今回だってユートくんに会えなくて毎日枕を濡らしていたのにぃ」

 トアは我慢してくれているが、セリカさんは本当に涙を流していた。
 そんな顔を見ると、ブレイヴ学園に行く決意が揺らいでしまう。だけど俺はトアとこれからもずっと過ごしていきたいんだ。だから心を鬼にして堪えることにする。

 セレノアの街からブレイヴ学園までは徒歩で十日程かかるため、気軽に帰ることも出来ない。
 ルビーさんに送ってもらえばすぐに行き来できると思うけど、毎回頼むのも申し訳ない。

「キュアちゃんがいるからお兄ちゃんに会えなくても我慢します」

 キュアがいてくれて本当に良かった。俺の代わりにトアの寂しさを紛らわしてくれよ。

「ミーミー」
「あっ! キュアちゃん」

 トアに撫でられていたキュアが、突然俺の元までやってきた。
 一応俺は飼い主的な感じだけど、キュアはトアとセリカさんに懐いている。
 俺の元に来るなんて初めてのことだ。

「ミー」
「どうしたの?」
「ミーミー」

 キュアが俺の方を見上げてずっと鳴いている。
 何かを訴えているようにも見えるけど、ネコ語がわからない俺にはさっぱりだ。

「ユートくん、キュアちゃんが古文書を出してって言ってるよ」
「えっ? セリカさんキュアの言葉がわかるの?」
「何となくだけど」

 少し気まぐれっぽい所があるから、キュアと何か波長でも合うのだろうか。
 ともかくセリカさんの言うとおり古文書を出してみるか。

  「アーカイブ⋯⋯それでどうすればいいの?」

 古文書は俺の前でフワフワと浮いている。特段何か変わった様子は⋯⋯あった!

「レベルがⅩからXIになってる。でも何か変化があるのかな?」

 俺は古文書のページを捲ってみる。するとキュアの時のように最後のページに見慣れぬカードが収まっていた。

「テレポート?」

 カードにはテレポート(⭐4)と書かれており、俺は説明文を読む。

 瞬時に移動出来るカード。
 拠点と定めた場所に一瞬で戻ることができる。もう一度カードを使用した場合は、前回テレポートをした場所に移動する。

「それってユートくんがブレイヴ学園に行っても、すぐに私達に会いに戻れるということですか?」
「うん。たぶんそうみたい」

 この屋敷を拠点にしておけば、テレポートのカードを使った時、ここに戻って来れる。そしてもう一度カードを使えば、ブレイヴ学園に帰ることが出来るということか。

「本当!? これでお兄ちゃんと毎日会えるね」

 トアは俺と毎日会いたいのか。兄冥利に尽きる言葉だな。

「それじゃあちょっと待っててね」

 トアの部屋を拠点に設置するわけにはいかないからな。
 俺はテレポートのカードを持ったまま、屋敷のエントランスへと向かう。
 そしてカードに念じると光のサークルが現れ、エントランスの床に魔方陣のようなものが描かれる。

「これでいいのかな?」

 俺はまたトアの部屋に戻る。

「お兄ちゃんお帰りなさい」
「ただいまトア。それじゃあテレポートのカードを使ってみるぞ」
「うん」

 俺は再びカードに念じる。
 すると一瞬にして景色が変わり、エントランスに移動することが出来た。

「本当に移動出来ちゃったよ」

 俺は改めてカードマスターの力に驚いてしまう。
 これは控えめに言ってもプラチナランク以上のジョブなのでは?
 これまでジョブのお陰で何度も助けられてきた。俺は改めてカードマスターの力を授けてくれた女神様に感謝する。
 そして俺は再度テレポートのカードを使うと、トアの部屋に一瞬で戻ることができた。

「突然ユートくんが現れてびっくりしました」
「お兄ちゃんすごいすごい! これでいつでも会えるね」
「うん」
「毎日トアに会いに来てね。絶対だよ」
「わかった。約束だ」

 こうして俺はブレイヴ学園を離れるに当たって、しばらくトアに会えなくなる所だったが、テレポートのカードを手に入れたことで、その憂いはなくなるのであった。
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