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家族へのプレゼント
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「お前どこに行ってたんだよ! 毎日ここで待ってたんだぞ!」
「えっ? 僕、君と約束してたっけ?」
毎日ここで待ってたって、もしかして街が襲撃された日からいたのか?
「いや、約束はしてねえけどよ。やっと魔物にやられた傷が治ってきて、一昨日からここにいたんだ」
「僕に会いたかったなら屋敷にくれば良かったのに」
まあ俺は帝都に行っていて不在だったけど、毎日待つようなことはしなくて済むはずだ。
「でもユートくんが住んでいるお屋敷には鬼がいるってドイズくんが」
一人の少女が俺の問いに答える。
物陰に隠れてわからなかったけど、どうやらネネちゃんもいたみたいだ。
まさかネネちゃんも一昨日から待っていたのかな?
それより鬼ってなんだ?
「俺なんて前に殺されかけたからな。見てくれよこの額を。デコピンで一週間くらい跡が残るなんて普通じゃねえよ」
「ああ⋯⋯そう言えばそんなこともあったね」
屋敷の前で騒いでいて、セリカさんに注意された時のことだ。尻餅をつく程のデコピンを食らったんだっけ。
「今日は鬼メイドはいないよな?」
「いないよ」
「なら良かったぜ」
ドイズは安堵のため息をつく。
セリカさんがいなくて本当に安心している顔だった。
「それで僕に何か用があるの?」
「え~と⋯⋯それな⋯⋯」
何だか煮え切らない態度だな。
ドイズの性格上、思ったことをハッキリと口にしそうな感じがするけど。
「何もないなら僕は行くよ」
「ドイズくんはね。助けてもらったお礼が言いたくてここでユートくんを待ってたんだよ」
「あ~⋯⋯まあそんな感じだ。この間は助けてくれてありがとうよ。それと没落貴族ってバカにして悪かったな。それだけだ⋯⋯じゃあな」
ドイズは言いたいことを言って、そのまま逃げるように走り去ってしまった。
「ドイズくん顔が真っ赤だったね。恥ずかしかったのかな?」
「そうみたいだね」
「私も⋯⋯魔物から助けてくれてありがとう。おじいちゃんもユートくんにお礼が言いたいって言ってたよ」
「あの時は間に合って良かったよ」
「ユートくんってすごく強いんだね」
「昔から訓練していたのが、良かったのかな」
「訓練してるんだ。今度見に行ってもいい?」
「いいけど、冒険者になってからあまり家にいないことが多いから」
「そっか。じゃあタイミングがあったら見学させてね」
「うん」
「それじゃあお母さんにおつかいを頼まれているから行くね。じゃあねユートくん」
「ネネちゃんばいばい」
俺は去っていくネネちゃんに手を振る。
それにしても二人はいつ俺が来るのかわからないのに、ここで待っていてくれたのか。
律儀な子達だな。
俺は子供達の行動を嬉しく思いながら、街の中央区画へと向かう。
そして露店でプレゼントを買って、屋敷へと戻るのであった。
トアの部屋に行くと、そこにはトア、セリカさん、ソルトさんの三人が揃っていた。
これはちょうどいいタイミングだな。
「ユートくん今日は帰ってくるのが早いですね」
「え~と⋯⋯今日は三人に渡したいものがあって」
「渡したいもの?」
俺は背中から三つの袋を出す。
プレゼントを渡す時は緊張するなあ。これで喜んでもらえるのか、もし喜んでくれなかったらどうしようと、あれこれ考えてしまう。
「いつもお世話になっているから、せめてもお礼に⋯⋯受け取ってくれると嬉しいな。トアも身体が良くなってきたお祝いに」
まずはソルトさんに向かって袋を一つ渡す。
「これは⋯⋯ネクタイですか」
「うん」
俺が渡したのは黒のネクタイだ。シンプルだけどソルトさんにきっと似合うはずだ。
「ありがとうございます。我が家の家宝として大切に飾っておきます」
「そんなことしなくていいよ! 普通に使って下さい」
「わかりました。それでは明日からさっそく使わせて頂きますね」
良かった。どうやらソルトさんは喜んでくれたようだ。
そして俺は次に二つの袋を出す。
セリカさんはワクワクした様子で、トアはどこかソワソワしているように感じた。
「実は中身は二つ共同じなんだ」
俺はセリカさんに二つの袋を渡す。そしてセリカさんからトアに袋を渡してもらった。
「ユートくん、開けてもいい?」
「お兄ちゃん、開けてもいい?」
「いいよ」
袋の中に入っていたのはハート型のネックレスだ。
「二人は姉妹みたいに仲がいいから、お揃いの物にしたけどどう?」
「とっても可愛いです」
「私、このデザイン好きです。それにトアちゃんと同じっていう所がとても嬉しいです」
「私も」
どうやら二人共喜んでくれたようだ。
そして二人は互いにネックレスをつけて、こちらに見せてくれる。
「ユートくんどうですか?」
「似合ってるかな?」
「二人共似合ってるよ」
こうして俺は、この世界で初めて稼いだお金で家族にプレゼントをした。
そしてこの日から一週間後、突如帝都方面から飛んで来た竜が、屋敷の近くに降り立つのであった。
「えっ? 僕、君と約束してたっけ?」
毎日ここで待ってたって、もしかして街が襲撃された日からいたのか?
「いや、約束はしてねえけどよ。やっと魔物にやられた傷が治ってきて、一昨日からここにいたんだ」
「僕に会いたかったなら屋敷にくれば良かったのに」
まあ俺は帝都に行っていて不在だったけど、毎日待つようなことはしなくて済むはずだ。
「でもユートくんが住んでいるお屋敷には鬼がいるってドイズくんが」
一人の少女が俺の問いに答える。
物陰に隠れてわからなかったけど、どうやらネネちゃんもいたみたいだ。
まさかネネちゃんも一昨日から待っていたのかな?
それより鬼ってなんだ?
「俺なんて前に殺されかけたからな。見てくれよこの額を。デコピンで一週間くらい跡が残るなんて普通じゃねえよ」
「ああ⋯⋯そう言えばそんなこともあったね」
屋敷の前で騒いでいて、セリカさんに注意された時のことだ。尻餅をつく程のデコピンを食らったんだっけ。
「今日は鬼メイドはいないよな?」
「いないよ」
「なら良かったぜ」
ドイズは安堵のため息をつく。
セリカさんがいなくて本当に安心している顔だった。
「それで僕に何か用があるの?」
「え~と⋯⋯それな⋯⋯」
何だか煮え切らない態度だな。
ドイズの性格上、思ったことをハッキリと口にしそうな感じがするけど。
「何もないなら僕は行くよ」
「ドイズくんはね。助けてもらったお礼が言いたくてここでユートくんを待ってたんだよ」
「あ~⋯⋯まあそんな感じだ。この間は助けてくれてありがとうよ。それと没落貴族ってバカにして悪かったな。それだけだ⋯⋯じゃあな」
ドイズは言いたいことを言って、そのまま逃げるように走り去ってしまった。
「ドイズくん顔が真っ赤だったね。恥ずかしかったのかな?」
「そうみたいだね」
「私も⋯⋯魔物から助けてくれてありがとう。おじいちゃんもユートくんにお礼が言いたいって言ってたよ」
「あの時は間に合って良かったよ」
「ユートくんってすごく強いんだね」
「昔から訓練していたのが、良かったのかな」
「訓練してるんだ。今度見に行ってもいい?」
「いいけど、冒険者になってからあまり家にいないことが多いから」
「そっか。じゃあタイミングがあったら見学させてね」
「うん」
「それじゃあお母さんにおつかいを頼まれているから行くね。じゃあねユートくん」
「ネネちゃんばいばい」
俺は去っていくネネちゃんに手を振る。
それにしても二人はいつ俺が来るのかわからないのに、ここで待っていてくれたのか。
律儀な子達だな。
俺は子供達の行動を嬉しく思いながら、街の中央区画へと向かう。
そして露店でプレゼントを買って、屋敷へと戻るのであった。
トアの部屋に行くと、そこにはトア、セリカさん、ソルトさんの三人が揃っていた。
これはちょうどいいタイミングだな。
「ユートくん今日は帰ってくるのが早いですね」
「え~と⋯⋯今日は三人に渡したいものがあって」
「渡したいもの?」
俺は背中から三つの袋を出す。
プレゼントを渡す時は緊張するなあ。これで喜んでもらえるのか、もし喜んでくれなかったらどうしようと、あれこれ考えてしまう。
「いつもお世話になっているから、せめてもお礼に⋯⋯受け取ってくれると嬉しいな。トアも身体が良くなってきたお祝いに」
まずはソルトさんに向かって袋を一つ渡す。
「これは⋯⋯ネクタイですか」
「うん」
俺が渡したのは黒のネクタイだ。シンプルだけどソルトさんにきっと似合うはずだ。
「ありがとうございます。我が家の家宝として大切に飾っておきます」
「そんなことしなくていいよ! 普通に使って下さい」
「わかりました。それでは明日からさっそく使わせて頂きますね」
良かった。どうやらソルトさんは喜んでくれたようだ。
そして俺は次に二つの袋を出す。
セリカさんはワクワクした様子で、トアはどこかソワソワしているように感じた。
「実は中身は二つ共同じなんだ」
俺はセリカさんに二つの袋を渡す。そしてセリカさんからトアに袋を渡してもらった。
「ユートくん、開けてもいい?」
「お兄ちゃん、開けてもいい?」
「いいよ」
袋の中に入っていたのはハート型のネックレスだ。
「二人は姉妹みたいに仲がいいから、お揃いの物にしたけどどう?」
「とっても可愛いです」
「私、このデザイン好きです。それにトアちゃんと同じっていう所がとても嬉しいです」
「私も」
どうやら二人共喜んでくれたようだ。
そして二人は互いにネックレスをつけて、こちらに見せてくれる。
「ユートくんどうですか?」
「似合ってるかな?」
「二人共似合ってるよ」
こうして俺は、この世界で初めて稼いだお金で家族にプレゼントをした。
そしてこの日から一週間後、突如帝都方面から飛んで来た竜が、屋敷の近くに降り立つのであった。
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