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竜の血の効果
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互いに自己紹介をした後、俺達は全員で屋敷へと向かう。
「突然竜が現れてビックリしましたよ⋯⋯チラッ」
「トア様の治療方法を見つけるとは、さすがはユート様です⋯⋯チラッ」
ルリシアさんのことが気になるのか、先程からセリカさんとソルトさんが一瞥している。まあいきなり帝国のお姫様が現れたんだ。無理もないか。
でも帝国のお姫様もレアだけど、人間になる竜の方が珍しいと思うけどね。
「これも我のお陰じゃ。もっと褒めるがよい」
「ルビーちゃんありがとう」
「さすがは最強種と言われる竜ですね。ルビー様⋯⋯トア様の従者として感謝申し上げます」
「う、うむ⋯⋯そんなに素直にお礼を言われてると照れてしまうぞ」
ルビーさんは冗談で言ったようだが、セリカさんとソルトさんは素直に答える。
トアを治してくれるルビーさんに対して、それだけ感謝しているということだろう。
「も、もし血が足りなかったら好きなだけ持ってくがいい」
「そんなことをしたら、ルビーさんが死んじゃいますよ」
ルビーさんはもしかして煽てられることに弱いのか?
竜と言えば何となく厳かな存在だと思っていたけど、それはこの世界では当てはまらないのかもしれない。
だけど俺として人間味のある竜の方が好きだな。
「ねえねえ」
ルリシアさんが突然耳元で語りかけてきた。
いきなり美少女が顔を近づけてきたから、びっくりしたぞ。
俺は動揺したことを悟らせないように、冷静に答える。
「なに?」
「え~とセリカさんとソルトさんだけど⋯⋯私に対してよそよそしくない?」
やはりルリシアさんも感じていたか。
俺の経験上、二人が人見知りをする所なんて見たことがない。
「たぶんその内慣れると思うよ。気にしなくても大丈夫じゃないかな」
「そう? ユートくんの家族のような人達でしょ? 出来れば仲良くしたいなあ」
俺もそうしてほしい。
でも三人とも良い人だからきっと仲良くなれるさ。
そして俺達は屋敷に到着し、トアの部屋へと向かった。
俺はドアをノックして部屋の中に入る。
「トア、調子はどうだ?」
「うん⋯⋯大丈夫だよ。キュアちゃんが⋯⋯いてくれるから」
トアはベッドの上だが、身体を起こしていた。最近はずっと寝たきりだったから、本当に体調がよくなっているのがわかる。
「ミーミー⋯⋯」
そしてキュアはトアに撫でられて気持ち良さそうに鳴いていた。
「キュア、ありがとな」
「ミー」
キュアがいたらトアは一命を取り留めることが出来た。あの時キュアがいてくれて本当に良かった。
「でも一つだけ⋯⋯」
「なに?」
「お兄ちゃんがいなくて⋯⋯少し寂しかったの」
「そっか⋯⋯お兄ちゃんも寂しかったぞ」
本当はここで抱きしめてあげたい。だけど俺が何かの細菌やウイルスを持ち込んでいる可能性があるため、それは出来ない。
「今日はトアに飲んでもらいたい物があるんだ」
「何?」
「え~と竜の血なんだけど」
「うん」
トアは躊躇いもせず答える。
「僕が言うのもなんだけど驚かないの?」
「お兄ちゃんが⋯⋯私のために⋯⋯取ってきてくれたんでしょ? それなら私は⋯⋯信じて飲むだけだよ」
俺だったら竜の血を飲めと言われたら、躊躇ってしまうかもしれない。トアの信頼が嬉しい反面、これは絶対に裏切れないと思った。
「これを飲めば筋力の低下の症状が治るかもしれない。だから飲んでほしい」
俺はセリカさんに竜の血が入った小瓶を渡す。
「トアちゃん飲める? 私が手伝おうか?」
「ううん⋯⋯今日は身体の⋯⋯調子がいいから」
トアは小瓶の蓋を開けると、ゆっくりと竜の血を飲みほしていく。
俺はトアの身体にどのような変化があるのか、見逃さないように観察する。
そしてトアは竜の血を全て飲み終えた。
ルビーさんに最上級ポーションを使った時は身体が光っていたが、そのような効果はないらしい。
「ト、トア⋯⋯どう?」
俺は緊張してカラカラになった喉で問いかける。
これでダメだったら、また一から振り出しに戻ってしまう。
頼む! 竜の血よ効いてくれ!
俺は祈るような気持ちでトアの返答を待つのであった。
「突然竜が現れてビックリしましたよ⋯⋯チラッ」
「トア様の治療方法を見つけるとは、さすがはユート様です⋯⋯チラッ」
ルリシアさんのことが気になるのか、先程からセリカさんとソルトさんが一瞥している。まあいきなり帝国のお姫様が現れたんだ。無理もないか。
でも帝国のお姫様もレアだけど、人間になる竜の方が珍しいと思うけどね。
「これも我のお陰じゃ。もっと褒めるがよい」
「ルビーちゃんありがとう」
「さすがは最強種と言われる竜ですね。ルビー様⋯⋯トア様の従者として感謝申し上げます」
「う、うむ⋯⋯そんなに素直にお礼を言われてると照れてしまうぞ」
ルビーさんは冗談で言ったようだが、セリカさんとソルトさんは素直に答える。
トアを治してくれるルビーさんに対して、それだけ感謝しているということだろう。
「も、もし血が足りなかったら好きなだけ持ってくがいい」
「そんなことをしたら、ルビーさんが死んじゃいますよ」
ルビーさんはもしかして煽てられることに弱いのか?
竜と言えば何となく厳かな存在だと思っていたけど、それはこの世界では当てはまらないのかもしれない。
だけど俺として人間味のある竜の方が好きだな。
「ねえねえ」
ルリシアさんが突然耳元で語りかけてきた。
いきなり美少女が顔を近づけてきたから、びっくりしたぞ。
俺は動揺したことを悟らせないように、冷静に答える。
「なに?」
「え~とセリカさんとソルトさんだけど⋯⋯私に対してよそよそしくない?」
やはりルリシアさんも感じていたか。
俺の経験上、二人が人見知りをする所なんて見たことがない。
「たぶんその内慣れると思うよ。気にしなくても大丈夫じゃないかな」
「そう? ユートくんの家族のような人達でしょ? 出来れば仲良くしたいなあ」
俺もそうしてほしい。
でも三人とも良い人だからきっと仲良くなれるさ。
そして俺達は屋敷に到着し、トアの部屋へと向かった。
俺はドアをノックして部屋の中に入る。
「トア、調子はどうだ?」
「うん⋯⋯大丈夫だよ。キュアちゃんが⋯⋯いてくれるから」
トアはベッドの上だが、身体を起こしていた。最近はずっと寝たきりだったから、本当に体調がよくなっているのがわかる。
「ミーミー⋯⋯」
そしてキュアはトアに撫でられて気持ち良さそうに鳴いていた。
「キュア、ありがとな」
「ミー」
キュアがいたらトアは一命を取り留めることが出来た。あの時キュアがいてくれて本当に良かった。
「でも一つだけ⋯⋯」
「なに?」
「お兄ちゃんがいなくて⋯⋯少し寂しかったの」
「そっか⋯⋯お兄ちゃんも寂しかったぞ」
本当はここで抱きしめてあげたい。だけど俺が何かの細菌やウイルスを持ち込んでいる可能性があるため、それは出来ない。
「今日はトアに飲んでもらいたい物があるんだ」
「何?」
「え~と竜の血なんだけど」
「うん」
トアは躊躇いもせず答える。
「僕が言うのもなんだけど驚かないの?」
「お兄ちゃんが⋯⋯私のために⋯⋯取ってきてくれたんでしょ? それなら私は⋯⋯信じて飲むだけだよ」
俺だったら竜の血を飲めと言われたら、躊躇ってしまうかもしれない。トアの信頼が嬉しい反面、これは絶対に裏切れないと思った。
「これを飲めば筋力の低下の症状が治るかもしれない。だから飲んでほしい」
俺はセリカさんに竜の血が入った小瓶を渡す。
「トアちゃん飲める? 私が手伝おうか?」
「ううん⋯⋯今日は身体の⋯⋯調子がいいから」
トアは小瓶の蓋を開けると、ゆっくりと竜の血を飲みほしていく。
俺はトアの身体にどのような変化があるのか、見逃さないように観察する。
そしてトアは竜の血を全て飲み終えた。
ルビーさんに最上級ポーションを使った時は身体が光っていたが、そのような効果はないらしい。
「ト、トア⋯⋯どう?」
俺は緊張してカラカラになった喉で問いかける。
これでダメだったら、また一から振り出しに戻ってしまう。
頼む! 竜の血よ効いてくれ!
俺は祈るような気持ちでトアの返答を待つのであった。
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