没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
51 / 86

伝説のアイテム

しおりを挟む
 俺が古文書に二枚のカードをセットしたのは、三ページ目の枠だ。
 そしてこのページが持っている力は合成だ。
 合成は二枚のカードを一枚にすることで、より強力なカードを産み出すことができる。
 使うのはこれが初めてだけど、合成以外にルビーさんを助けられる方法は思い浮かばない。
 俺は一縷の望みをかけながら、カードを合成する。
 するとセットしたカードは光輝き合わさると、一枚のカードに生まれ変わった。

「カードよ! ルビーさんの傷を癒してくれ!」

 そして俺は合成されたカードを手に取り、ルビーさんへと投げる。
 カードの表面には体力を全快させ、如何なる傷も治すことができると記載してあった。
 これならきっと⋯⋯いや、必ずルビーさんの傷を治療することが出来るはず。

 カードがルビーに触れると、先程の最上級ポーションの時とは比べ物にならない程、周囲が光に包まれる。

「何なのこの光は!」
「眩しくて目を開けることができんのじゃ!」

 俺は咄嗟に目を閉じて、光から自分の瞳を守る。
 そしてやがて光が収まり、少しずつ周囲の様子がわかるようになってきた。

「ルビーさん、傷はどう?」

 俺は恐る恐るルビーさんに尋ね、首筋に目を向ける。
 するとそこには大きな傷はなく、ルビーさんの綺麗な首が見えるだけだった。

「し、信じられんのじゃ! 何をしても治らなかった傷がないのじゃ!」

 良かった。これでダメだったらもう打つ手がなかった。
 俺はルビーさんの喜ぶ姿を見て、思わず地面に座り込んでしまう。

「本当に⋯⋯本当に良かった」

 そしてルリシアさんはルビーさんの傷が治って嬉しいのか、感極まって涙を流していた。

「ユートよ。我はこのまま命を散らすことを覚悟していた。じゃがお主のお陰で我は生き延びることができた。感謝するぞ」
「これはルリシアさんのお陰だから」
「私の? そういえばユートくんが使ったカードって何だったの?」
「僕が使ったカードは⋯⋯エリクサーだよ」
「エリクサー!?」
「エリクサーじゃと!?」

 ルリシアさんとルビーさんの驚きの声が、辺りに響き渡る。

「最上級ポーションと最上級ポーションを合成して作ったんだ」

 この国宝級のアイテムがあったからこそ、エリクサーを作ることができた。だからルビーさんを治療することが出来たのは、ルリシアさんのお陰だ。

「エリクサーは女神が作ったと言われる奇跡の秘薬じゃ! それを合成して作ったじゃと? そのようなスキル聞いたこともない!」
「ユートくんは遂に伝説のアイテムを作り出してしまったのね。もう凄すぎて何て言えばいいのかわからないよ」

 そういえばトアの治療法を探す時に、本でエリクサーを見たことあった。
 でも病を治すのではなく、傷と体力を回復するだけだったから特に気にしてなかったな。
 でもルビーさんの傷が治って本当に良かった。

「それでは約束通り、お主の妹を助けるために我の血を授けよう」
「あ、ありがとうございます」

 これで⋯⋯これでトアの病を治すことが出来る! 全部の症状がなくなる訳ではないけど、大きく前進したことは間違いないだろう。

「少しここで待っておれ。我の血を瓶に詰めてくる」

 ルビーはこの場を離れる。
 正直どうやって血を瓶に詰めるのか気になるが、ここはルビーに任せよう。あまり痛い方法じゃなきゃいいんだが。

「ユートくん良かったね」
「うん。でもルリシアさんが国宝級のアイテムを僕にくれたからだよ。本当にありがとう」
「ふふ⋯⋯私ばっかりユートくんのお世話になっていたから、役に立てたなら嬉しい」

 ルリシアさんは本当に良い人だ。爵位が高い人が下位の者を見下すなどよくある話だ。だけどルリシアさんは初めて会った俺にも偉ぶることはなく、普通に接してくれた。
 彼女ならきっとこれからもルビーさんと良い関係を築いてくれそうだ。

「またせたのう」

 俺とルリシアさんが話をしていると、ルビーさんが戻ってきた。
 手には小瓶を持っており、赤ワインのようなルビー色をしたものが入っている。
 あれが竜の血なのかな?
 どうやら人の血のようにどす黒い色をしている訳じゃなさそうだ。

「これが竜の血じゃ。受け取るがいい」
「ありがとうございます」
「良かったね。トアちゃんに早く飲ませてあげよ」
「うん」

 俺はルビーさんに改めて頭を下げる。
 そして急ぎセレノアの街へと駆け出そうとするが⋯⋯

「なんじゃ? 急いでおるのか?」
「はい。早くトアに飲ませたくて」
「なら我の背中に乗るがよい」

 ルビーさんはそう口にすると、再び竜の姿へと戻った。

「どこまで送ればいいのじゃ? 我の翼なら一瞬で目的地にたどり着くことが出来るぞ」
「本当ですか? ありがとうございます」

 俺とルリシアさんは、ルビーの背中に乗らせてもらう。

「さあ行くぞ。ちゃんと掴まっておれ」

 そしてルビーさんは翼をはためかせて、空高く舞い上がるのであった。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話

湯島二雨
恋愛
彼女いない歴イコール年齢、アラサー平社員の『俺』はとあるラブコメ漫画のお色気担当ヒロインにガチ恋していた。とても可愛くて優しくて巨乳の年上お姉さんだ。 しかしそのヒロインはあくまでただの『お色気要員』。扱いも悪い上にあっさりと負けヒロインになってしまい、俺は大ダメージを受ける。 その後俺はしょうもない理由で死んでしまい、そのラブコメの主人公に転生していた。 俺はこの漫画の主人公になって報われない運命のお色気担当負けヒロインを絶対に幸せにしてみせると誓った。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しております。

処理中です...