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誰に似ている?
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「⋯⋯お主達はまさか⋯⋯いやそんなはずはない」
竜は何かを呟いたが、何を言ってるのか聞こえなかった。
「お主らはヴィンセント帝国の皇族の者じゃな⋯⋯初めて見る顔じゃが新しい皇帝の御披露目にでも来たのか」
一言喋るだけで威圧感が半端ない。
竜の体躯が大きいからそう感じているのかもしれないけど。
「私はルリシア・ウィル・デ・ヴィンセントと申します。突然で申し訳ありませんが、本日はお願いがあり⋯⋯」
「帰れ」
「えっ?」
「帰れと言ったのが聞こえんのか?」
竜はルリシアさんが話している最中に割り込み、有無を言わさず帰れと言ってきた。
「あの! 僕はユートです! 話を聞いてもらえませんか?」
「⋯⋯⋯⋯やはり違うな」
えっ? なに今の間は? 滅茶苦茶気になるんですけど。しかも違うって何? けど今はそのことよりトアの病について伝えたい。
「人間の願い事⋯⋯などろくなものがない」
ん? 今一瞬顔を歪めなかったか?
相手は竜だからなんとも言えないけど、俺には何かを痛がっているように見えた。
「五十年程前にも皇帝になりたいから⋯⋯対抗馬を殺してくれじゃと⋯⋯お主らの身勝手な言い分には呆れるばかりじゃ」
五十年前って確か後継者争いが起きた時だよな?
誰だかわからないが、本当に余計なことをしてくれたようだ。
「少しは初代皇帝のランフォードを見習え」
竜は初代皇帝陛下に助けられたと聞く。どうやら今でもその時の想いはなくなっていないようだ。
「ともかく帰るのじゃ。我は人間の争いには巻き込まれとうない」
「待って下さい! 私達がここに来たのは争いのためではありません」
「どういうことじゃ?」
「ユートくんの妹のトアちゃんが、不治の病にかかっていて、その治療方法を教えて頂きたくここを訪れました」
「⋯⋯⋯⋯話だけは聞いてやる」
全く聞き耳持たなかった所が、話だけは聞いてくれることになった。これはルリシアさんが必至に訴えてくれたおかげだ。
そして俺はトアの症状を竜に伝える。
「筋力の低下か⋯⋯ルセリアも同じようなことになっていたような」
「ルセリア?」
「初代皇帝の奥さんよ。どうかルセリア様を治療した方法を教えてくれませんか。お願いします!」
「お、お願いします!」
ルリシアさんは帝国のお姫様なのに、トアのために頭を下げてくれている。そのようなことをさせて申し訳ない。だけどその気持ちが嬉しくて、感謝してもしきれない。
だけど竜にルリシアさんの、俺の気持ちは伝わるかわからない。俺達は頭を下げたまま竜の返答を待つ。
「⋯⋯だめじゃ」
しかし俺達の思いは伝わらなかったのか、竜からはノーの返答を受ける。
「どうしてか教えてもらってもいいですか?」
俺はどんな理由で断られたのか知りたかった。それに竜が何故断ったのか原因がわかれば、そのことを解決することで、トアの病を治す方法を教えてくれるかもしれない。
「⋯⋯人はすぐに忘れ、自分達が困った時にだけ助けを求めてくる。それに今の帝都の現状は我も知っておる。また皇帝の座を狙って争いが起きているのじゃろ? もう我はかかわりとうない」
全くもって正論だ。
竜は俺達人間より長生きなため、強さも経験も遥かに持っている。長い時間の中で、その力を何度も人間に貸してきたのだろう。だけど困り事が解消されると人は竜を忘れる。そしてまた何かあれば、今の俺達のように助けを求めてくる。そんなことを何回も繰り返していたら、人間に不信感を持つのは当然なのかもしれない。
それにしても、何でサハディンやデルカルトのことも知っているんだろう? 何か竜にしか出来ない力で情報を仕入れているのか?
「私はあなたに助けて頂いたことは一生忘れません! でもこんなことを言っても信じてもらえないですよね」
「⋯⋯⋯⋯」
「だから私にもあなたのことを助けさせて下さい!」
「なんじゃと?」
「今困ってることはありませんか? なければこの先困ったことがあったら必ず私が助けてみせます! だから今はトアちゃんの病を治す方法を教えて下さい」
ルリシアさんは真っ直ぐな瞳で、竜に問いかけた。
俺はルリシアさんの人となりを知っているから、この言葉が嘘ではないと確信できる。でも初めて会った人でも、今のルリシアなら信じられると思わせる程、清廉に見えた。
「⋯⋯お主はそっくりじゃな」
「えっ?」
「ルセリアにそっくりじゃ。澄みきった瞳、そして優しさの中に品格が感じられる」
「初代皇后様に似ているなんて光栄です」
「それにそのユートも⋯⋯初代皇帝、ランフォードそっくりじゃ」
「ぼ、僕が!?」
ルリシアさんはルセリアさんの血を引いているから、似ていることはあり得るかもしれないけど、俺は初代皇帝とは縁もゆかりもないからな。雰囲気とかが似ているのだろうか。
もしかして最初に会った時、竜に戸惑いが見れたのはそのためか。
「わかったのじゃ⋯⋯もう一度だけ人間を⋯⋯そなたら二人を信じてみよう」
「「ありがとうございます」」
これでトアの病の一部を治すことが出来る。俺は心の中で喜びを爆発させる。
「それでお主らにやってほしいことがあるのじゃが⋯⋯」
「何でも行って下さい。出来る限りののことはやらせてもらいます」
「この姿だと説明しにくいから、少し姿を変えさせてもらうぞ」
竜がそういうと、突然身体が光出し、目を開けられなくなる。
そして光が収まった後、竜がいた場所にいたのは⋯⋯人間の女の子だった。
竜は何かを呟いたが、何を言ってるのか聞こえなかった。
「お主らはヴィンセント帝国の皇族の者じゃな⋯⋯初めて見る顔じゃが新しい皇帝の御披露目にでも来たのか」
一言喋るだけで威圧感が半端ない。
竜の体躯が大きいからそう感じているのかもしれないけど。
「私はルリシア・ウィル・デ・ヴィンセントと申します。突然で申し訳ありませんが、本日はお願いがあり⋯⋯」
「帰れ」
「えっ?」
「帰れと言ったのが聞こえんのか?」
竜はルリシアさんが話している最中に割り込み、有無を言わさず帰れと言ってきた。
「あの! 僕はユートです! 話を聞いてもらえませんか?」
「⋯⋯⋯⋯やはり違うな」
えっ? なに今の間は? 滅茶苦茶気になるんですけど。しかも違うって何? けど今はそのことよりトアの病について伝えたい。
「人間の願い事⋯⋯などろくなものがない」
ん? 今一瞬顔を歪めなかったか?
相手は竜だからなんとも言えないけど、俺には何かを痛がっているように見えた。
「五十年程前にも皇帝になりたいから⋯⋯対抗馬を殺してくれじゃと⋯⋯お主らの身勝手な言い分には呆れるばかりじゃ」
五十年前って確か後継者争いが起きた時だよな?
誰だかわからないが、本当に余計なことをしてくれたようだ。
「少しは初代皇帝のランフォードを見習え」
竜は初代皇帝陛下に助けられたと聞く。どうやら今でもその時の想いはなくなっていないようだ。
「ともかく帰るのじゃ。我は人間の争いには巻き込まれとうない」
「待って下さい! 私達がここに来たのは争いのためではありません」
「どういうことじゃ?」
「ユートくんの妹のトアちゃんが、不治の病にかかっていて、その治療方法を教えて頂きたくここを訪れました」
「⋯⋯⋯⋯話だけは聞いてやる」
全く聞き耳持たなかった所が、話だけは聞いてくれることになった。これはルリシアさんが必至に訴えてくれたおかげだ。
そして俺はトアの症状を竜に伝える。
「筋力の低下か⋯⋯ルセリアも同じようなことになっていたような」
「ルセリア?」
「初代皇帝の奥さんよ。どうかルセリア様を治療した方法を教えてくれませんか。お願いします!」
「お、お願いします!」
ルリシアさんは帝国のお姫様なのに、トアのために頭を下げてくれている。そのようなことをさせて申し訳ない。だけどその気持ちが嬉しくて、感謝してもしきれない。
だけど竜にルリシアさんの、俺の気持ちは伝わるかわからない。俺達は頭を下げたまま竜の返答を待つ。
「⋯⋯だめじゃ」
しかし俺達の思いは伝わらなかったのか、竜からはノーの返答を受ける。
「どうしてか教えてもらってもいいですか?」
俺はどんな理由で断られたのか知りたかった。それに竜が何故断ったのか原因がわかれば、そのことを解決することで、トアの病を治す方法を教えてくれるかもしれない。
「⋯⋯人はすぐに忘れ、自分達が困った時にだけ助けを求めてくる。それに今の帝都の現状は我も知っておる。また皇帝の座を狙って争いが起きているのじゃろ? もう我はかかわりとうない」
全くもって正論だ。
竜は俺達人間より長生きなため、強さも経験も遥かに持っている。長い時間の中で、その力を何度も人間に貸してきたのだろう。だけど困り事が解消されると人は竜を忘れる。そしてまた何かあれば、今の俺達のように助けを求めてくる。そんなことを何回も繰り返していたら、人間に不信感を持つのは当然なのかもしれない。
それにしても、何でサハディンやデルカルトのことも知っているんだろう? 何か竜にしか出来ない力で情報を仕入れているのか?
「私はあなたに助けて頂いたことは一生忘れません! でもこんなことを言っても信じてもらえないですよね」
「⋯⋯⋯⋯」
「だから私にもあなたのことを助けさせて下さい!」
「なんじゃと?」
「今困ってることはありませんか? なければこの先困ったことがあったら必ず私が助けてみせます! だから今はトアちゃんの病を治す方法を教えて下さい」
ルリシアさんは真っ直ぐな瞳で、竜に問いかけた。
俺はルリシアさんの人となりを知っているから、この言葉が嘘ではないと確信できる。でも初めて会った人でも、今のルリシアなら信じられると思わせる程、清廉に見えた。
「⋯⋯お主はそっくりじゃな」
「えっ?」
「ルセリアにそっくりじゃ。澄みきった瞳、そして優しさの中に品格が感じられる」
「初代皇后様に似ているなんて光栄です」
「それにそのユートも⋯⋯初代皇帝、ランフォードそっくりじゃ」
「ぼ、僕が!?」
ルリシアさんはルセリアさんの血を引いているから、似ていることはあり得るかもしれないけど、俺は初代皇帝とは縁もゆかりもないからな。雰囲気とかが似ているのだろうか。
もしかして最初に会った時、竜に戸惑いが見れたのはそのためか。
「わかったのじゃ⋯⋯もう一度だけ人間を⋯⋯そなたら二人を信じてみよう」
「「ありがとうございます」」
これでトアの病の一部を治すことが出来る。俺は心の中で喜びを爆発させる。
「それでお主らにやってほしいことがあるのじゃが⋯⋯」
「何でも行って下さい。出来る限りののことはやらせてもらいます」
「この姿だと説明しにくいから、少し姿を変えさせてもらうぞ」
竜がそういうと、突然身体が光出し、目を開けられなくなる。
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