47 / 86
竜への道
しおりを挟む
竜へと続く道を進み始めて三十分程が過ぎた。
「前に進んでいるのかわからないね」
「うん」
ルリシアさんの言いたいことはわかる。
関所からここまで、前方の景色がほとんど変わらないのだ。
森には竜の結界が張られているらしいから、もしかして落雷以外に同じ所をグルグル回る効果もあったりして。
そんな不安も抱えつつ俺達は前へと進んでいく。
「竜っておっきいのかなあ」
「本で見た竜は大きな身体、剣を通さない硬い皮膚、角が生えてて鋭い牙を持ち、爪は大地を引き裂き、炎を吐くらしいです」
「ユートくんよく知ってるね。物知りだ」
前の世界の竜と特徴が同じだったからね。
とりあえず怒らせてバトル的な展開は避けたい所だ。俺なんか一瞬でやられてしまうだろう。
「竜に会うの楽しみだね」
「僕は少し怖いかな。機嫌が悪いって言うし」
もしかして竜が激昂する逆鱗にでも触れたのだろうか。そうだとしたらどうやって怒りを静めればいいのかわからない。
とにかく竜を怒らせてしまったら、トアの病を治すことも出来なくなる。
言葉は慎重に選んだ方が良さそうだ。
「ユートくん私がついているから大丈夫よ」
ルリシアさんはそう言うと、俺の手を取る。
「何があってもユートくんは私が守るから」
「あ、ありがとう」
普段は抱きつかれているから手を握られてびっくりしてしまった。
少し照れくさいけど、子供のユートだったら振り払うことはしないので、このままの状態で進む。
ん?
ルリシアさんと手を繋ぎながら歩いて、十分程が経った頃。
俺は周囲の景色の異変に感じた。
「ルリシアさん止まって」
「どうしたの?」
「何かがおかしいよ」
前方を飛んでいた蝶が突然消えたのだ。
何かに攻撃された気配はないし、蝶が地面に落ちたり上空に飛び去った訳ではもない。本当に目の前から消えたのだ。
「私には全然わからないけど」
「僕もわからない。でも飛んでいた蝶が消えたんだ」
「蝶が?」
前方には変わらぬ一本道が目に映っている。
わからない。いったい何が起きているんだ。
「どうするのユートくん。進んでみる?」
「いや、何が起きているのかわからないのに進むのは⋯⋯」
俺だけならともかく、ルリシアさんを危険な目に遭わせる訳にはいかない。だけど前に進まないとトアの病を治す方法が⋯⋯
現状俺に対して何か攻撃を仕掛けられているわけじゃない。もし俺を狙っているなら皇帝時間が発動しているはずだ。
とにかく何が起きているのか状況を把握しないと、これ以上進むことは出来ない。
俺は地面に落ちている石を手に取る。
そしてさっき蝶が消えた所に投げてみた。
すると⋯⋯
「「消えた!」」
やはり蝶が消えたのは見間違いじゃなかったんだ!
「どど、どういうこと? 石が消えるなんて⋯⋯」
「わからない。でも僕達も進んだら消えちゃうのかな」
これは益々先に進むことが出来なくなった。これは竜がやったことなのか?
ルリシアさんもこのことは知らなかったようだ。
もし竜の仕業なら皇帝陛下も事前に教えておいて欲しい。結界のことも一言も言ってなかったしな。
それともこの消える現象はイレギュラーなものなのか?
俺とルリシアさんは、これ以上足を前に進めることが出来ないでいた。
だがその時。
「前に進むのじゃ」
どこからか声が聞こえてきた。
「えっ? 誰?」
俺は剣を手に取り、左右を見渡すが誰もいない。
今の声は女性のように感じたが、視認出来ないし気配も感じない。どうする? 声に従って前に進むか? だけどもし罠だとしたら⋯⋯
前にも後ろにも進めず時間だけが過ぎていく。
「我の結界の力で認識出来ないようにしているだけじゃ。我としてはこのまま帰ってもらっても問題ないが」
結界? 結界ということはこの声はもしかして⋯⋯
「竜⋯⋯ですか」
ルリシアさんも俺と同じ結論にたどり着いたようだ。
それにしても竜は喋るのか。だけどこれで意志疎通が出来るので、トアの病を治す方法を聞くことが出来る。
「行こう。前に進もう」
「うん」
俺とルリシアさんは手を繋いだまま、足を前に進める。
すると石が消えた辺りを過ぎると、突然景色が変わり、目の前には人の数十倍はありそうな赤い竜の姿が見えた。
「前に進んでいるのかわからないね」
「うん」
ルリシアさんの言いたいことはわかる。
関所からここまで、前方の景色がほとんど変わらないのだ。
森には竜の結界が張られているらしいから、もしかして落雷以外に同じ所をグルグル回る効果もあったりして。
そんな不安も抱えつつ俺達は前へと進んでいく。
「竜っておっきいのかなあ」
「本で見た竜は大きな身体、剣を通さない硬い皮膚、角が生えてて鋭い牙を持ち、爪は大地を引き裂き、炎を吐くらしいです」
「ユートくんよく知ってるね。物知りだ」
前の世界の竜と特徴が同じだったからね。
とりあえず怒らせてバトル的な展開は避けたい所だ。俺なんか一瞬でやられてしまうだろう。
「竜に会うの楽しみだね」
「僕は少し怖いかな。機嫌が悪いって言うし」
もしかして竜が激昂する逆鱗にでも触れたのだろうか。そうだとしたらどうやって怒りを静めればいいのかわからない。
とにかく竜を怒らせてしまったら、トアの病を治すことも出来なくなる。
言葉は慎重に選んだ方が良さそうだ。
「ユートくん私がついているから大丈夫よ」
ルリシアさんはそう言うと、俺の手を取る。
「何があってもユートくんは私が守るから」
「あ、ありがとう」
普段は抱きつかれているから手を握られてびっくりしてしまった。
少し照れくさいけど、子供のユートだったら振り払うことはしないので、このままの状態で進む。
ん?
ルリシアさんと手を繋ぎながら歩いて、十分程が経った頃。
俺は周囲の景色の異変に感じた。
「ルリシアさん止まって」
「どうしたの?」
「何かがおかしいよ」
前方を飛んでいた蝶が突然消えたのだ。
何かに攻撃された気配はないし、蝶が地面に落ちたり上空に飛び去った訳ではもない。本当に目の前から消えたのだ。
「私には全然わからないけど」
「僕もわからない。でも飛んでいた蝶が消えたんだ」
「蝶が?」
前方には変わらぬ一本道が目に映っている。
わからない。いったい何が起きているんだ。
「どうするのユートくん。進んでみる?」
「いや、何が起きているのかわからないのに進むのは⋯⋯」
俺だけならともかく、ルリシアさんを危険な目に遭わせる訳にはいかない。だけど前に進まないとトアの病を治す方法が⋯⋯
現状俺に対して何か攻撃を仕掛けられているわけじゃない。もし俺を狙っているなら皇帝時間が発動しているはずだ。
とにかく何が起きているのか状況を把握しないと、これ以上進むことは出来ない。
俺は地面に落ちている石を手に取る。
そしてさっき蝶が消えた所に投げてみた。
すると⋯⋯
「「消えた!」」
やはり蝶が消えたのは見間違いじゃなかったんだ!
「どど、どういうこと? 石が消えるなんて⋯⋯」
「わからない。でも僕達も進んだら消えちゃうのかな」
これは益々先に進むことが出来なくなった。これは竜がやったことなのか?
ルリシアさんもこのことは知らなかったようだ。
もし竜の仕業なら皇帝陛下も事前に教えておいて欲しい。結界のことも一言も言ってなかったしな。
それともこの消える現象はイレギュラーなものなのか?
俺とルリシアさんは、これ以上足を前に進めることが出来ないでいた。
だがその時。
「前に進むのじゃ」
どこからか声が聞こえてきた。
「えっ? 誰?」
俺は剣を手に取り、左右を見渡すが誰もいない。
今の声は女性のように感じたが、視認出来ないし気配も感じない。どうする? 声に従って前に進むか? だけどもし罠だとしたら⋯⋯
前にも後ろにも進めず時間だけが過ぎていく。
「我の結界の力で認識出来ないようにしているだけじゃ。我としてはこのまま帰ってもらっても問題ないが」
結界? 結界ということはこの声はもしかして⋯⋯
「竜⋯⋯ですか」
ルリシアさんも俺と同じ結論にたどり着いたようだ。
それにしても竜は喋るのか。だけどこれで意志疎通が出来るので、トアの病を治す方法を聞くことが出来る。
「行こう。前に進もう」
「うん」
俺とルリシアさんは手を繋いだまま、足を前に進める。
すると石が消えた辺りを過ぎると、突然景色が変わり、目の前には人の数十倍はありそうな赤い竜の姿が見えた。
21
お気に入りに追加
1,217
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる