没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
34 / 86

ご乱心

しおりを挟む
 この親バカ皇帝は何かするかと思っていたけど、まさか褒賞と見せかけて剣で斬りつけてくるとは。
 昨日も追いかけ回されたし、元気になったということか。これなら遠慮はいらなそうだ。

 皇帝時間インペリアルタイムが発動したことで古文書が現れる。
 ん? 古文書の表紙をよく見るとⅤだった数字がⅦに変わっていた。
 ルリシアさんを狙った刺客を倒したことで、レベルが上がったのかな?
 だけど最後のページ⋯⋯保管するページの枠は十二のままだ。最初のページ⋯⋯バトル用のページも五のまま。常時発動型のページも二つのまま。ⅤからⅦでは何も変化なしか。
 何か枠が増える法則でもあるのだろうか?
 だけどとりあえず今は皇帝陛下を何とかしよう。

 現れた古文書の最後のページにセットされたカードが、裏表示で重なり、俺はカードを引く。
 カードの中身はパワーブースター(⭐3)、マジックブースター(⭐3)、大岩(⭐1)、ポイズンスネークの毒(⭐2)、真実の目(⭐2)だ。そしてバトル用のページに五枚をセットする。
 すると世界の時が動き始めた。

「死ねぇぇぇっ!」

 皇帝陛下は上段から剣を振り下ろす。
 早い! これが病み上がりの人の剣速なのか!
 だが接近してから皇帝時間インペリアルタイムが発動していたので、初期動作が丸見えだ。それに皇帝時間インペリアルタイム中に一歩前に詰めていたため、皇帝陛下は目測が狂っているはずだ。
 そして俺は向かってくる剣に対して引くのではなくさらに前に進み、皇帝陛下との距離を詰める。

「なに!」

 皇帝陛下は予想外の行動だったのか、はたまたいるはずの場所に俺がいなかったため、驚きの声をあげる。

 俺は剣が振り下ろされる前に腕を掴み、そのままの勢いで投げ飛ばす。
 すると皇帝陛下は、弧を描きながら床に叩きつけられるのであった。

「ぐはっ!」

 皇帝陛下は苦悶の声をあげながら、床でうずくまっている。
 少しやり過ぎてしまったか? でも突然斬りつけてきたんだ。投げられても仕方ないだろう。

「大丈夫ですか?」

 俺は一応心配する振りをするため、声をかける。

「ル、ルリシア⋯⋯この小僧は皇帝である私に手を挙げたぞ。父の代わりに成敗してくれ」
「わかったわ」

 ルリシアさんが皇帝陛下の命令通り剣を抜く。
 だが剣を向けたのは俺の方ではなく、皇帝陛下の方だった。

「よくもユートくんを攻撃したわね。お父様でも許さないんだから!」

 そしてルリシアさんは皇帝陛下に向かって剣を突き刺す。

「くっ!」

 だけど残念ながら皇帝陛下は立ち上がり、紙一重でルリシアさんの攻撃をかわしてしまう。
 ちっ! 後少しだったのに。がんばれルリシアさん。
 俺は心の中でルリシアさんを応援する。

「ルリシア⋯⋯先程のは冗談だ。小僧の実力を知りたくて試したのだ。だからその物騒な剣はしまいなさい」

 嘘だ。皇帝時間インペリアルタイムが発動したということは、冗談ではなく、本気で俺を殺そうとしたんだ。

「嘘を言わないで下さい。お父様の殺気は本物でした」
「ちっ! バレたか」

 褒賞を渡す振りをして奇襲をかけるなんて、最低な皇帝だな。

「この小僧はルリシアのキスを受け、昨日は同じ部屋で寝たというではないか」
「それの何が悪いの?」
「悪いに決まっている! お前はこの国の姫だぞ! もっと自分の立場を考えろ!」
「ユートくんは私の護衛よ。一緒にいるのは当然じゃない」
「護衛か。それでは何もやましいことはなかったのだな」
「⋯⋯⋯⋯」

 ええっ!
 何故そこで伏し目がちになって黙っちゃうの! しかも顔も赤くなっちゃてる!
 それじゃあ何かあったって言ってるようなものじゃないか! 
 まあ確かに一緒にベッドで寝たり、お風呂に入ったり、胸を触ってしまったけど⋯⋯

 俺はこの後の展開が読めたので、急ぎ古文書にセットされたパワーブースターを手に取り使用する。
 すると俺の身体能力が劇的に向上した。
 そして保管用のページにある、最後の一枚が裏表示で目の前にきたので、引く。
 カードはポイズンスネークの毒(⭐2)だ。
 俺はポイズンスネークの毒をバトル用の枠にセットする。

「小僧⋯⋯いや、ガキ⋯⋯いや、くそ野郎⋯⋯」

 段々と扱いがひどくなっていくな。
 それに目が完全にイッテしまっている。皇帝陛下が快楽殺人の犯人と言われても信じてしまいそうだ。

「貴様の血は何色だぁぁぁっ!」

 皇帝陛下がまるで獣のように、ものすごいスピードでこちらに迫ってくる。
 そして右に左にと剣を振り回し、攻撃してきた。

「くっ!」

 剣を受ける度に手が痺れていく。
 皇帝陛下の攻撃は重く速い。もしパワーブースターを使っていなかったら、すぐに殺られていた。
 このまま防御一辺倒だと、いつか殺られてしまうかもしれない。
 本当はルリシアさんに助けてもらいたい。だけどルリシアさんは恍惚な表情を浮かべ、何やら独り言をぶつぶつと呟いており、こちらが見えていない。
 こうなったらこっちも本気を出して、皇帝陛下を止めるしかないか。多少怪我をするかもしれないが覚悟しろよ。

 俺は皇帝陛下に対して、本気でいくことを決意する。

「娘を惑わす不埒者め! このミスリルの剣の錆にしてくれるわ!」

 皇帝陛下が再びこちらに迫ってくる。
 俺は振り下ろされた剣をいなし、隙が出来た所にむかって右拳を顔面に叩き込む⋯⋯はずだった。

「ぎゃっ!」

 俺が拳を叩き込む前に、横から木剣が飛んできて、見事皇帝陛下の脳天に直撃したのだ。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話

湯島二雨
恋愛
彼女いない歴イコール年齢、アラサー平社員の『俺』はとあるラブコメ漫画のお色気担当ヒロインにガチ恋していた。とても可愛くて優しくて巨乳の年上お姉さんだ。 しかしそのヒロインはあくまでただの『お色気要員』。扱いも悪い上にあっさりと負けヒロインになってしまい、俺は大ダメージを受ける。 その後俺はしょうもない理由で死んでしまい、そのラブコメの主人公に転生していた。 俺はこの漫画の主人公になって報われない運命のお色気担当負けヒロインを絶対に幸せにしてみせると誓った。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しております。

処理中です...