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褒賞?
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俺とルリシアさんは食堂で朝食を取り、部屋に戻った。
トントン
するとドアがノックされたので、俺が来客に対応する。
「ユート、皇帝陛下が玉座の間でお待ちだ。大至急向かってほしい」
「僕をですか?」
皇帝陛下からの呼び出しか。何だか嫌な予感しかしないな。
なにせ昨日は剣を振り回され、殺されかけたし。
だけど一国の王の呼び出しを断る訳にはいかない。
「わかりました」
俺は百パーセントNOと言えない選択に頷く。
「お父様はどうしてユートくんを玉座に呼んだのかしら? まだ体調も万全ではないのでしょ?」
「そ、それは⋯⋯褒賞を渡すためだと聞いています」
「お父様もわかっているわね。ヴィンセント帝国の姫を刺客から助け、皇后と皇帝を毒から救ったもの。褒美の四つや五つくらいあってもおかしくないわ」
四つや五つってそんなに?
だけど俺は褒賞のことより、ボルゲーノさんの様子が気になる。
ルリシアさんの問いかけに対して、躊躇いがあった。
これは何か隠していると考えた方が良さそうだ。
「もちろん私も一緒に行くね」
「あっ! いえ、ルリシア様はその⋯⋯」
「ダメなの? でも今誰かの襲撃を受けたらどうするの?」
「そ、そうですね。わかりました」
「ボルゲーノ何か変よ? もしかして隠し事でもあるの?」
「そのようなことはありません。ルリシア様も同行して頂いても大丈夫です」
俺とルリシアさんはボルゲーノさんの後に続いて、城の廊下を進む。
すると一際大きな扉があり、その前には二人の兵が配置されていた。
「ここが玉座の間になる。くれぐれも注意してくれ」
「えっ?」
注意してくれ? やはりこの呼び出しはただ事ではなさそうだ。
「何か聞こえても入って来なくていい? そして聞いたことは全て忘れろ。わかったな」
「「はっ!」」
ん? 今ボルゲーノさんは兵士の人達に向かって、とんでもないことを言わなかったか?
これは絶対嫌なことが起きるパターンだろ。
益々玉座の間に入りたくなくなってきた。
「ごめんなさい。ちょっとお腹の調子が⋯⋯」
「後にしてくれ。皇帝陛下を待たせる訳にはいかない」
ですよね。
これは覚悟を決めるしかないな。
「ユートくん。もしお父様が変なことをしてきたら、投げちゃっていいけら」
さすがに善人のルリシアさんも、ボルゲーノさんと兵士の人達の会話を聞いて、ただ事ではないと思い始めたようだ。
「本当にいいの?」
俺は庇護欲を出すために、ウルウルした瞳でルリシアを上目遣いで見つめる。
「私が許可するわ。ボルゲーノもいいわね?」
「えっ? いや、それはその⋯⋯」
皇帝と姫、二人の間に挟まれた中間管理職だな。
「い・い・わ・ね」
「はい⋯⋯」
そしてボルゲーノさんは、ルリシアさんにイエスかはいを強要され、はいと答えるしかなかった。
「それでは中に入るぞ」
ボルゲーノさんの命令で、兵士の人達が扉を開ける。
やばい。こういう時どういう所作をするんだっけ? 前の世界でも経験したことがないからわからないぞ。
だけど今の俺は子供だ。多少わからないことがあっても許される⋯⋯と思いたい。
俺はボルゲーノさんの後に続いて玉座の間に入る。
ん? 誰もいない?
こういう褒賞を与える時って、左右に貴族が並んでいると思っていたけど。
いるのは玉座に座っている皇帝陛下だけだった。
とりあえず俺はボルゲーノさんについていく。そして片膝を床についたので、俺も真似をする。
「余はヴィンセント帝国九代皇帝、ゼノス・ウィル・デ・ヴィンセントだ。ユート⋯⋯面をあげよ」
俺は皇帝陛下の命に従い、顔をあげる。
「此度はルリシアを刺客から守り、余と皇后をよくぞ毒の脅威から救ってくれた。その働きにより褒美を取らせる」
「ありがとうございます」
「まずは爵位として男爵を叙する」
ええっ! 爵位がもらえるの! まさか自分が貴族になるなんて思わなかった。だけど貴族のしがらみとかめんどくさいな。そのせいで、トアの病を治す方法を探しに行けないなんてことにならないかな?
「男爵となれば街の代官の任に着くのだが、ユートはまだ成人ではない。代官の仕事は成人してからやってもらう」
なるほど。それなら後五年の猶予がある。男爵の爵位を受けても問題ないな。それに貴族になれば情報も手に入りやすいし、悪い条件ではない。
「ありがたく、受けさせていただきます」
「うむ。そして爵位とは別に白金貨五枚とこのミスリルの剣を授けよう」
白金貨五枚!? 日本円にして五億円だぞ。
もしこれが前の世界だったら一生遊んで暮らせる額だ。
「褒美は余が直接渡してやろう。余の側に来るがいい」
「はい」
俺は立ち上がり皇帝陛下の元へと向かう。
「これが白金貨だ」
皇帝陛下が手渡しで白金貨を渡してくる。
ん? こういうのって手渡しで渡すのが普通なのか? 何かおかしい気がしてきた。
とりあえず差し出されてものを受け取らない訳にはいかない。
俺は白金貨五枚を受け取った。
「そしてこれがミスリルの剣だ。受け取るがいい!」
突然皇帝が剣を抜き、叫び声をあげると、皇帝時間が発動するのであった。
トントン
するとドアがノックされたので、俺が来客に対応する。
「ユート、皇帝陛下が玉座の間でお待ちだ。大至急向かってほしい」
「僕をですか?」
皇帝陛下からの呼び出しか。何だか嫌な予感しかしないな。
なにせ昨日は剣を振り回され、殺されかけたし。
だけど一国の王の呼び出しを断る訳にはいかない。
「わかりました」
俺は百パーセントNOと言えない選択に頷く。
「お父様はどうしてユートくんを玉座に呼んだのかしら? まだ体調も万全ではないのでしょ?」
「そ、それは⋯⋯褒賞を渡すためだと聞いています」
「お父様もわかっているわね。ヴィンセント帝国の姫を刺客から助け、皇后と皇帝を毒から救ったもの。褒美の四つや五つくらいあってもおかしくないわ」
四つや五つってそんなに?
だけど俺は褒賞のことより、ボルゲーノさんの様子が気になる。
ルリシアさんの問いかけに対して、躊躇いがあった。
これは何か隠していると考えた方が良さそうだ。
「もちろん私も一緒に行くね」
「あっ! いえ、ルリシア様はその⋯⋯」
「ダメなの? でも今誰かの襲撃を受けたらどうするの?」
「そ、そうですね。わかりました」
「ボルゲーノ何か変よ? もしかして隠し事でもあるの?」
「そのようなことはありません。ルリシア様も同行して頂いても大丈夫です」
俺とルリシアさんはボルゲーノさんの後に続いて、城の廊下を進む。
すると一際大きな扉があり、その前には二人の兵が配置されていた。
「ここが玉座の間になる。くれぐれも注意してくれ」
「えっ?」
注意してくれ? やはりこの呼び出しはただ事ではなさそうだ。
「何か聞こえても入って来なくていい? そして聞いたことは全て忘れろ。わかったな」
「「はっ!」」
ん? 今ボルゲーノさんは兵士の人達に向かって、とんでもないことを言わなかったか?
これは絶対嫌なことが起きるパターンだろ。
益々玉座の間に入りたくなくなってきた。
「ごめんなさい。ちょっとお腹の調子が⋯⋯」
「後にしてくれ。皇帝陛下を待たせる訳にはいかない」
ですよね。
これは覚悟を決めるしかないな。
「ユートくん。もしお父様が変なことをしてきたら、投げちゃっていいけら」
さすがに善人のルリシアさんも、ボルゲーノさんと兵士の人達の会話を聞いて、ただ事ではないと思い始めたようだ。
「本当にいいの?」
俺は庇護欲を出すために、ウルウルした瞳でルリシアを上目遣いで見つめる。
「私が許可するわ。ボルゲーノもいいわね?」
「えっ? いや、それはその⋯⋯」
皇帝と姫、二人の間に挟まれた中間管理職だな。
「い・い・わ・ね」
「はい⋯⋯」
そしてボルゲーノさんは、ルリシアさんにイエスかはいを強要され、はいと答えるしかなかった。
「それでは中に入るぞ」
ボルゲーノさんの命令で、兵士の人達が扉を開ける。
やばい。こういう時どういう所作をするんだっけ? 前の世界でも経験したことがないからわからないぞ。
だけど今の俺は子供だ。多少わからないことがあっても許される⋯⋯と思いたい。
俺はボルゲーノさんの後に続いて玉座の間に入る。
ん? 誰もいない?
こういう褒賞を与える時って、左右に貴族が並んでいると思っていたけど。
いるのは玉座に座っている皇帝陛下だけだった。
とりあえず俺はボルゲーノさんについていく。そして片膝を床についたので、俺も真似をする。
「余はヴィンセント帝国九代皇帝、ゼノス・ウィル・デ・ヴィンセントだ。ユート⋯⋯面をあげよ」
俺は皇帝陛下の命に従い、顔をあげる。
「此度はルリシアを刺客から守り、余と皇后をよくぞ毒の脅威から救ってくれた。その働きにより褒美を取らせる」
「ありがとうございます」
「まずは爵位として男爵を叙する」
ええっ! 爵位がもらえるの! まさか自分が貴族になるなんて思わなかった。だけど貴族のしがらみとかめんどくさいな。そのせいで、トアの病を治す方法を探しに行けないなんてことにならないかな?
「男爵となれば街の代官の任に着くのだが、ユートはまだ成人ではない。代官の仕事は成人してからやってもらう」
なるほど。それなら後五年の猶予がある。男爵の爵位を受けても問題ないな。それに貴族になれば情報も手に入りやすいし、悪い条件ではない。
「ありがたく、受けさせていただきます」
「うむ。そして爵位とは別に白金貨五枚とこのミスリルの剣を授けよう」
白金貨五枚!? 日本円にして五億円だぞ。
もしこれが前の世界だったら一生遊んで暮らせる額だ。
「褒美は余が直接渡してやろう。余の側に来るがいい」
「はい」
俺は立ち上がり皇帝陛下の元へと向かう。
「これが白金貨だ」
皇帝陛下が手渡しで白金貨を渡してくる。
ん? こういうのって手渡しで渡すのが普通なのか? 何かおかしい気がしてきた。
とりあえず差し出されてものを受け取らない訳にはいかない。
俺は白金貨五枚を受け取った。
「そしてこれがミスリルの剣だ。受け取るがいい!」
突然皇帝が剣を抜き、叫び声をあげると、皇帝時間が発動するのであった。
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