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推定だけで裁ければどんなに楽だろう
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ヴィンセント帝国は建国して三百年の歴史があり、その生産力、兵力、人材は他国にとって驚異になっている。
けど昔と比べてかなり国力は下がったようだ。何でも俺が生まれるずっと前にお家騒動があって、ほとんどの皇族が死んでしまったらしい。
どこの世界も権力を欲しがる奴はいるようだ。
俺は今、馬車に乗ってセレノアの街の北にある、帝都グランツヴァインに向かっていた。そして周囲には馬に乗った護衛が十人程いる。
帝都と呼ばれるくらいだから、セレノアの街より栄えているのだろう。
少し楽しみでもある。
「ユート⋯⋯帝都に到着する前に一つだけ言っておく」
「うん」
「帝都では誰も信用するな。特に皇帝陛下の弟であるサハディンと息子であるデルカルト、そして騎士団長のジクルド。この三人はルリシア様の命を狙っている可能性がある」
「もしかして今朝襲ってきた人達は、今の三人が命令したんですか?」
「ハッキリと証拠がある訳ではないが、私はそう思っている」
「もしかしてルリシアさんが狙われる理由は、後継者問題だったりして」
皇帝の弟とその息子が怪しいとくれば、その可能性が高い。だけど俺は子供だから、少しおどけた口調で指摘する。
「その通りだ。城の中は誰が味方で誰が敵かわからない。実際に信じていた者に裏切られ、襲撃されたたこともあったのだ。そのため、皇帝の命令でルリシア様は私の家に匿っていた」
またお家騒動か。
以前そのせいで国が衰退したのにまた同じことをやるとは。反省という言葉を知らないのだろうか。
「本来ならばデルカルトが次の皇帝になるはずだった」
現皇帝の子供はルリシアさんだけど、女性だから継承権が後回しにされたということかな。
「だがデルカルトは素行が悪く、次期皇帝に相応しくないという声が城の中で上がってきたのだ」
うわ⋯⋯よくあるパターンだな。
皇族という高い地位に生まれたことで、権力を使いたい放題という訳か。
「私も命をかけてルリシア様をお守りする。ユートも力を貸してくれ」
「うん。任せて下さい」
自分勝手に政治をする者が皇帝になってしまったら、トアとの平和な暮らしもが脅かされてしまう。それにルリシアさんの命を狙うなんて許せないな。
俺は改めてルリシアさんを守ることを決意する。
「そうよ。だからユートくんは私の側を離れたらダメなんだから」
そう言ってルリシアさんはまた抱きついてきた。
確かに近くにいた方が皇帝時間が発動した時、都合がいいけど⋯⋯
だけど一国の姫が男に抱きつくのはどうかと思う。
俺はボルゲーノさんがどう考えているのか見るため、チラリと視線を向ける。
「ふう⋯⋯まあそれも仕方ないでしょう。ユート⋯⋯ルリシア様から離れるなよ」
「う、うん」
なんとボルゲーノさんからも認められてしまった。
こうしてルリシアさんが俺に抱きつく行為は許可されてしまい、俺達は馬車に揺られ、帝都グランツヴァインへと向かうのであった。
セレノアの街を出発して六時間程経った頃。
空には夕日が輝き、目の前にある城壁を紅く染めていた。
俺達はグランツヴァインに到着すると、城門で検問を受けることもなく城に入ることが出来た。
さて、何が出るか。
出来れば平和的に行きたい所どけど、権力は人を惑わしてくる。きっとルリシアさんに対して何かしてくるだろう。
俺はルリシアさんのお母さんに会うため、城の廊下を進んでいる。
さすがは帝国の城というべきか、道幅が広く天井も高い。それにこれから会うのはこの国の皇后様だ。
何だか少し緊張してきたぞ。もし無礼なことをしてしまったら、打ち首にされるなんてことはないよな。
俺は嫌な想像をしながら歩いていると、突然前を行く二人の足が止まった。
どうしたんだろう? ルリシアさんのお母さんの部屋についたのか?
俺はルリシアさんとボルゲーノさんの前方に視線を向けると、そこには二人の人物が立っていた。
一人は中年で少し太った男性。もう一人は金髪イケメンで二十歳前後くらいの若者だ。
誰だこの二人は?
下卑笑みを浮かべながらルリシアさんに視線を向けている。
そのため誰かはわからないけど、俺達に対して好意的ではないことは、すぐにわかった。
「これはルリシア姫、よくぞお戻りになられました。城内ではボルゲーノ侯爵が姫を拐ったと噂されていましたが、間違いだったようですね」
「私がルリシア様を? それは根も葉もない噂ですね。よもやサハディン様のような聡明な方が、そのような低俗な噂を信じておられるのですか?」
「いや、最近ルリシア姫は何者かに命を狙われてると聞く。もしルリシア姫の命が奪われたら、匿っていたボルゲーノ侯爵の責任になると思い、忠告しただけだ」
「ご忠告ありがとうございます。ですがルリシア様には優秀な護衛がいるので、心配なさらなくて大丈夫です。今朝も三人の刺客がルリシア様のお命を狙っていましたが、一瞬で倒してしまいました」
「ほ、ほう⋯⋯頼もしい護衛がいるようですな。私も安心しました」
サハディンは言葉とは裏腹に、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
もうこの反応で誰が刺客を送ったか明白だな。
「ルリシア姫、相変わらず美しいな。その美しさを愛でるのはこのデルカルトこそが相応しい」
「残念だけどその話は何度もお断りしているわ。私は自立した人が好きなの。何か問題を起こす度に、権力や人を使って揉み消している人は一生好きにならないから」
「それは誰のことを言っているのだ? 姫は命を狙われているのだろ? 俺の妻になれば守ってやるぞ」
「結構です」
「俺は姫より強い。もし刺客が襲ってきても返り討ちにしてやろう」
「さっきのボルゲーノの言葉を聞いてなかったの? 私には優秀な護衛がいるから遠慮しておくわ」
四人とも殺気がだだ漏れだ。一瞬穏やかに話しているように見えるけど内心ではバチバチとやり合っているな。
それにしてもこの二人がサハディンとデルカルトか。初対面だけどいけすかない奴らだな。こいつらに権力を握らせたら、帝国が衰退していくのが俺でもわかるぞ。俺とトアの平和な生活のためにも、何とか排除出来ないだろうか。
「それに私は急いでいるの。話があるのならまた後で聞くわ」
「フィリス皇后にお会いになるのですか?」
「そうよ」
「残念ですが、フィリス皇后は間もなく息を引き取るでしょう」
「なんですって!」
「ルリシア姫、怒りをお静め下さい。これは私ではなく医者が口にしていたことです。皇帝陛下も最近体調が思わしくないですし、これは早々にデルカルトを次期皇帝に指名して頂かないと困りますなあ」
「お母様⋯⋯お父様⋯⋯」
「ルリシア様お待ち下さい!」
ボルゲーノさんの静止も聞かず、ルリシアさんは走り出す。
護衛として離れる訳にはいかないため、俺もルリシアさんな後を追う。
そしてルリシアさんは一室の部屋の前で立ち止まると、ドアを開ける。
ここが皇后様の部屋なのか?
俺もルリシアさんの後に続いて部屋に入る。するとベッドには、綺麗な女性が目を閉じて横たわっている姿が目に入るのだった。
けど昔と比べてかなり国力は下がったようだ。何でも俺が生まれるずっと前にお家騒動があって、ほとんどの皇族が死んでしまったらしい。
どこの世界も権力を欲しがる奴はいるようだ。
俺は今、馬車に乗ってセレノアの街の北にある、帝都グランツヴァインに向かっていた。そして周囲には馬に乗った護衛が十人程いる。
帝都と呼ばれるくらいだから、セレノアの街より栄えているのだろう。
少し楽しみでもある。
「ユート⋯⋯帝都に到着する前に一つだけ言っておく」
「うん」
「帝都では誰も信用するな。特に皇帝陛下の弟であるサハディンと息子であるデルカルト、そして騎士団長のジクルド。この三人はルリシア様の命を狙っている可能性がある」
「もしかして今朝襲ってきた人達は、今の三人が命令したんですか?」
「ハッキリと証拠がある訳ではないが、私はそう思っている」
「もしかしてルリシアさんが狙われる理由は、後継者問題だったりして」
皇帝の弟とその息子が怪しいとくれば、その可能性が高い。だけど俺は子供だから、少しおどけた口調で指摘する。
「その通りだ。城の中は誰が味方で誰が敵かわからない。実際に信じていた者に裏切られ、襲撃されたたこともあったのだ。そのため、皇帝の命令でルリシア様は私の家に匿っていた」
またお家騒動か。
以前そのせいで国が衰退したのにまた同じことをやるとは。反省という言葉を知らないのだろうか。
「本来ならばデルカルトが次の皇帝になるはずだった」
現皇帝の子供はルリシアさんだけど、女性だから継承権が後回しにされたということかな。
「だがデルカルトは素行が悪く、次期皇帝に相応しくないという声が城の中で上がってきたのだ」
うわ⋯⋯よくあるパターンだな。
皇族という高い地位に生まれたことで、権力を使いたい放題という訳か。
「私も命をかけてルリシア様をお守りする。ユートも力を貸してくれ」
「うん。任せて下さい」
自分勝手に政治をする者が皇帝になってしまったら、トアとの平和な暮らしもが脅かされてしまう。それにルリシアさんの命を狙うなんて許せないな。
俺は改めてルリシアさんを守ることを決意する。
「そうよ。だからユートくんは私の側を離れたらダメなんだから」
そう言ってルリシアさんはまた抱きついてきた。
確かに近くにいた方が皇帝時間が発動した時、都合がいいけど⋯⋯
だけど一国の姫が男に抱きつくのはどうかと思う。
俺はボルゲーノさんがどう考えているのか見るため、チラリと視線を向ける。
「ふう⋯⋯まあそれも仕方ないでしょう。ユート⋯⋯ルリシア様から離れるなよ」
「う、うん」
なんとボルゲーノさんからも認められてしまった。
こうしてルリシアさんが俺に抱きつく行為は許可されてしまい、俺達は馬車に揺られ、帝都グランツヴァインへと向かうのであった。
セレノアの街を出発して六時間程経った頃。
空には夕日が輝き、目の前にある城壁を紅く染めていた。
俺達はグランツヴァインに到着すると、城門で検問を受けることもなく城に入ることが出来た。
さて、何が出るか。
出来れば平和的に行きたい所どけど、権力は人を惑わしてくる。きっとルリシアさんに対して何かしてくるだろう。
俺はルリシアさんのお母さんに会うため、城の廊下を進んでいる。
さすがは帝国の城というべきか、道幅が広く天井も高い。それにこれから会うのはこの国の皇后様だ。
何だか少し緊張してきたぞ。もし無礼なことをしてしまったら、打ち首にされるなんてことはないよな。
俺は嫌な想像をしながら歩いていると、突然前を行く二人の足が止まった。
どうしたんだろう? ルリシアさんのお母さんの部屋についたのか?
俺はルリシアさんとボルゲーノさんの前方に視線を向けると、そこには二人の人物が立っていた。
一人は中年で少し太った男性。もう一人は金髪イケメンで二十歳前後くらいの若者だ。
誰だこの二人は?
下卑笑みを浮かべながらルリシアさんに視線を向けている。
そのため誰かはわからないけど、俺達に対して好意的ではないことは、すぐにわかった。
「これはルリシア姫、よくぞお戻りになられました。城内ではボルゲーノ侯爵が姫を拐ったと噂されていましたが、間違いだったようですね」
「私がルリシア様を? それは根も葉もない噂ですね。よもやサハディン様のような聡明な方が、そのような低俗な噂を信じておられるのですか?」
「いや、最近ルリシア姫は何者かに命を狙われてると聞く。もしルリシア姫の命が奪われたら、匿っていたボルゲーノ侯爵の責任になると思い、忠告しただけだ」
「ご忠告ありがとうございます。ですがルリシア様には優秀な護衛がいるので、心配なさらなくて大丈夫です。今朝も三人の刺客がルリシア様のお命を狙っていましたが、一瞬で倒してしまいました」
「ほ、ほう⋯⋯頼もしい護衛がいるようですな。私も安心しました」
サハディンは言葉とは裏腹に、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
もうこの反応で誰が刺客を送ったか明白だな。
「ルリシア姫、相変わらず美しいな。その美しさを愛でるのはこのデルカルトこそが相応しい」
「残念だけどその話は何度もお断りしているわ。私は自立した人が好きなの。何か問題を起こす度に、権力や人を使って揉み消している人は一生好きにならないから」
「それは誰のことを言っているのだ? 姫は命を狙われているのだろ? 俺の妻になれば守ってやるぞ」
「結構です」
「俺は姫より強い。もし刺客が襲ってきても返り討ちにしてやろう」
「さっきのボルゲーノの言葉を聞いてなかったの? 私には優秀な護衛がいるから遠慮しておくわ」
四人とも殺気がだだ漏れだ。一瞬穏やかに話しているように見えるけど内心ではバチバチとやり合っているな。
それにしてもこの二人がサハディンとデルカルトか。初対面だけどいけすかない奴らだな。こいつらに権力を握らせたら、帝国が衰退していくのが俺でもわかるぞ。俺とトアの平和な生活のためにも、何とか排除出来ないだろうか。
「それに私は急いでいるの。話があるのならまた後で聞くわ」
「フィリス皇后にお会いになるのですか?」
「そうよ」
「残念ですが、フィリス皇后は間もなく息を引き取るでしょう」
「なんですって!」
「ルリシア姫、怒りをお静め下さい。これは私ではなく医者が口にしていたことです。皇帝陛下も最近体調が思わしくないですし、これは早々にデルカルトを次期皇帝に指名して頂かないと困りますなあ」
「お母様⋯⋯お父様⋯⋯」
「ルリシア様お待ち下さい!」
ボルゲーノさんの静止も聞かず、ルリシアさんは走り出す。
護衛として離れる訳にはいかないため、俺もルリシアさんな後を追う。
そしてルリシアさんは一室の部屋の前で立ち止まると、ドアを開ける。
ここが皇后様の部屋なのか?
俺もルリシアさんの後に続いて部屋に入る。するとベッドには、綺麗な女性が目を閉じて横たわっている姿が目に入るのだった。
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