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ユートVSルリシア(6)
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ルリシアさんの動きが⋯⋯いや、世界の動きが止まった。
「どういうことだ? 何故皇帝時間が発動したんだ? ルリシアさんの攻撃? そんなことはないか。ルリシアさんは優しい笑顔を浮かべたままだ」
俺は周囲の様子を確認する。
皇帝時間中は攻撃をすることは出来ないけど、半径一メートル以内なら動くことが出来る。
前方、左右には特に怪しい人物はいない。そうなると⋯⋯後ろか。
俺は振り向くとそこには、外套で顔を隠した黒ずくめの者が三人いた。そしてその内の一人は手に投げナイフを持っており、まさに今こちらに向かって投擲しようとしている。
狙われているのはルリシアさんか!
どうしてルリシアさんが、屋敷内で襲われなくちゃいけないんだ。
気になるが今はこいつらを倒す方が先だ。
俺は現れた古文書から裏表示で重なっているカードを四枚引く。
カードの内容はパワーブースター(⭐3)、フォースブースター(⭐3)、大岩(⭐1)、真実の眼(⭐2)だ。
そして最初のページにセットにすると、時が動き出したので、大岩(⭐1)のカードを手に取りルリシアさんの前に召喚した。
大岩が投擲されたナイフから俺達を守る。
「ルリシアさん敵襲です! 背後から三人の黒ずくめの者が襲ってきています!」
「えっ?」
ルリシアさんは一瞬驚いた表情をするが、すぐに腰に差した剣を取り、臨戦態勢に入る。
突然の状況変化でも対応するとは、護衛をいらないと言っていただけはあるな。
「この岩は何!? それに襲撃!?」
「僕が倒しますから、ここに隠れていて下さい」
「ユートくんだけ戦わせる訳にはいかないわ」
護衛泣かせなことを言ってくれる。護衛対象が前に出るのは勘弁してほしい所だ。だけどボルゲーノさんが言っていたが、ルリシアさんは一度言い出したら聞いてくれないらしい。それならこいつらをさっさと片付けた方が良さそうだ。
俺は新たに一枚カードを手に取り、使用する。
「パワーブースター!」
カードのおかげで、俺の力が湧いてくるのがわかる。
俺は剣を右手に取り、大岩の陰から飛び出した。
「えっ? ユートくん危ないわ!」
ルリシアさんは俺の行動に驚きつつ、自分も岩陰から出て黒ずくめに接近する。
ルリシアさんも出て来てしまった。
こうなったら仕方ない。幸いにも先に岩から飛び出したせいか、黒ずくめの二人は俺の方に向かってきている。
俺は黒ずくめの一人に対して、上段から斬りつける。
すると黒ずくめは剣を横にして防御の体勢を取るが甘い。
「ぐっ!」
剣を受けた黒ずくめは、苦悶に満ちた声をあげ、手に持った剣を地面に落とす。
どうせ子供の剣なら軽く受け止められると考えていたのだろう。しかし今の俺はパワーブースターのおかげで、驚異的なパワーを有している。並みの力では受け止めることなど出来やしない。
俺は剣を落とし、隙だらけになった黒ずくめの顔面に蹴りを入れる。
すると黒ずくめはまるでボールのように、後方へと吹き飛ぶのであった。
「次だ」
もう一人の黒ずくめは手に短剣を持っており、こちらに向かって突き刺してきた。
「遅い」
セリカさんのスピードと比べると天と地ほどの差がある。このような攻撃を俺が食らうはずがない。
俺は剣で黒ずくめの短剣をいなす。
短剣に予想外の力が加わったのか、黒ずくめはバランスを崩した。
「これで終わりだ」
俺はがら空きになった腹部に向かって、拳を叩き込む。
すると黒ずくめは後方へと吹き飛び、さっき蹴り飛ばした奴の上に乗っかり動かなくなる。
後はルリシアさんの方に向かった一人を片付けるだけだ。
しかしその必要はなかった。
最後の一人はルリシアの剣によって、胸をを突かれて倒れているからだ。
「ユートくん大丈夫?」
ルリシアさんは黒ずくめから剣を引き抜くと、こちらに向かって走ってきた。
「僕は大丈夫です。ルリシアさんはお怪我はないですか?」
「私? 私は大丈夫よ」
良かった。敵を倒したとしてもルリシアさんが傷を負ってしまったら、護衛失格だからな。
「それにしてもユートくんは本当に強いね」
「僕に剣を教えてくれた人が優秀なだけだよ」
「私、後ろから襲われていることに気づかなかった。昨日グラスに睡眠薬が入っていることも見破っていたし、ボルゲーノが推薦するだけはあるわ」
俺には皇帝時間があるからな。自分で言うのもなんだけど、俺は護衛に向いていると思う。
「ユートくんは私の護衛になってくれるの? もし護衛にならなくても、トアちゃんの病については調べるつもりよ。それに今のを見てわかったと思うけど、私の側はとても危険なの」
正直護衛になると付きっきりになってしまうので、トアの治療を探してくれるなら、わざわざやる必要はないだろう。
だけど俺やトアのために泣いてくれる、心優しいルリシアさんが狙われているとわかった今、断るという選択肢はない。
「僕にルリシアさんの護衛をさせて下さい。どんな敵が来ても必ず守ってみせますから」
「ユートくん⋯⋯ありがとう」
ルリシアさんは優しく俺を抱きしめてきたので、俺も抱きしめ返す。
こうして俺はルリシアさんの信頼を得ることができ、護衛の依頼を受けることになるのであった。
「どういうことだ? 何故皇帝時間が発動したんだ? ルリシアさんの攻撃? そんなことはないか。ルリシアさんは優しい笑顔を浮かべたままだ」
俺は周囲の様子を確認する。
皇帝時間中は攻撃をすることは出来ないけど、半径一メートル以内なら動くことが出来る。
前方、左右には特に怪しい人物はいない。そうなると⋯⋯後ろか。
俺は振り向くとそこには、外套で顔を隠した黒ずくめの者が三人いた。そしてその内の一人は手に投げナイフを持っており、まさに今こちらに向かって投擲しようとしている。
狙われているのはルリシアさんか!
どうしてルリシアさんが、屋敷内で襲われなくちゃいけないんだ。
気になるが今はこいつらを倒す方が先だ。
俺は現れた古文書から裏表示で重なっているカードを四枚引く。
カードの内容はパワーブースター(⭐3)、フォースブースター(⭐3)、大岩(⭐1)、真実の眼(⭐2)だ。
そして最初のページにセットにすると、時が動き出したので、大岩(⭐1)のカードを手に取りルリシアさんの前に召喚した。
大岩が投擲されたナイフから俺達を守る。
「ルリシアさん敵襲です! 背後から三人の黒ずくめの者が襲ってきています!」
「えっ?」
ルリシアさんは一瞬驚いた表情をするが、すぐに腰に差した剣を取り、臨戦態勢に入る。
突然の状況変化でも対応するとは、護衛をいらないと言っていただけはあるな。
「この岩は何!? それに襲撃!?」
「僕が倒しますから、ここに隠れていて下さい」
「ユートくんだけ戦わせる訳にはいかないわ」
護衛泣かせなことを言ってくれる。護衛対象が前に出るのは勘弁してほしい所だ。だけどボルゲーノさんが言っていたが、ルリシアさんは一度言い出したら聞いてくれないらしい。それならこいつらをさっさと片付けた方が良さそうだ。
俺は新たに一枚カードを手に取り、使用する。
「パワーブースター!」
カードのおかげで、俺の力が湧いてくるのがわかる。
俺は剣を右手に取り、大岩の陰から飛び出した。
「えっ? ユートくん危ないわ!」
ルリシアさんは俺の行動に驚きつつ、自分も岩陰から出て黒ずくめに接近する。
ルリシアさんも出て来てしまった。
こうなったら仕方ない。幸いにも先に岩から飛び出したせいか、黒ずくめの二人は俺の方に向かってきている。
俺は黒ずくめの一人に対して、上段から斬りつける。
すると黒ずくめは剣を横にして防御の体勢を取るが甘い。
「ぐっ!」
剣を受けた黒ずくめは、苦悶に満ちた声をあげ、手に持った剣を地面に落とす。
どうせ子供の剣なら軽く受け止められると考えていたのだろう。しかし今の俺はパワーブースターのおかげで、驚異的なパワーを有している。並みの力では受け止めることなど出来やしない。
俺は剣を落とし、隙だらけになった黒ずくめの顔面に蹴りを入れる。
すると黒ずくめはまるでボールのように、後方へと吹き飛ぶのであった。
「次だ」
もう一人の黒ずくめは手に短剣を持っており、こちらに向かって突き刺してきた。
「遅い」
セリカさんのスピードと比べると天と地ほどの差がある。このような攻撃を俺が食らうはずがない。
俺は剣で黒ずくめの短剣をいなす。
短剣に予想外の力が加わったのか、黒ずくめはバランスを崩した。
「これで終わりだ」
俺はがら空きになった腹部に向かって、拳を叩き込む。
すると黒ずくめは後方へと吹き飛び、さっき蹴り飛ばした奴の上に乗っかり動かなくなる。
後はルリシアさんの方に向かった一人を片付けるだけだ。
しかしその必要はなかった。
最後の一人はルリシアの剣によって、胸をを突かれて倒れているからだ。
「ユートくん大丈夫?」
ルリシアさんは黒ずくめから剣を引き抜くと、こちらに向かって走ってきた。
「僕は大丈夫です。ルリシアさんはお怪我はないですか?」
「私? 私は大丈夫よ」
良かった。敵を倒したとしてもルリシアさんが傷を負ってしまったら、護衛失格だからな。
「それにしてもユートくんは本当に強いね」
「僕に剣を教えてくれた人が優秀なだけだよ」
「私、後ろから襲われていることに気づかなかった。昨日グラスに睡眠薬が入っていることも見破っていたし、ボルゲーノが推薦するだけはあるわ」
俺には皇帝時間があるからな。自分で言うのもなんだけど、俺は護衛に向いていると思う。
「ユートくんは私の護衛になってくれるの? もし護衛にならなくても、トアちゃんの病については調べるつもりよ。それに今のを見てわかったと思うけど、私の側はとても危険なの」
正直護衛になると付きっきりになってしまうので、トアの治療を探してくれるなら、わざわざやる必要はないだろう。
だけど俺やトアのために泣いてくれる、心優しいルリシアさんが狙われているとわかった今、断るという選択肢はない。
「僕にルリシアさんの護衛をさせて下さい。どんな敵が来ても必ず守ってみせますから」
「ユートくん⋯⋯ありがとう」
ルリシアさんは優しく俺を抱きしめてきたので、俺も抱きしめ返す。
こうして俺はルリシアさんの信頼を得ることができ、護衛の依頼を受けることになるのであった。
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