没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

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ユートVSルリシア(1)

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「それなら僕を試してもらえませんか?」
「試す? どういうこと?」
「ルリシアさんは腕に自信があるんですよね?」
「そうね。幼い頃から何かあった時に自衛出来るよう言われていたから、毎日の鍛練はかかしてないわよ。ジョブだって⋯⋯」
「ルリシア様。それ以上は⋯⋯」
「コホンッ! 私の正体がバレちゃうからジョブは秘密ね」

 ジョブで正体がバレる?
 う~ん⋯⋯今の答えでルリシアさんの正体がわかってしまった。とりあえず今は触れない方が良さそうだな。

「え~と⋯⋯時間を決めてルリシアさんが僕を倒せれば、ルリシアさんの勝ちで。倒すことが出来なかったら、僕の勝ちっていうのはどうでしょうか」
「おもしろそうね。その勝負、受けて立つわ。ボルゲーノもそれでいいわね?」

 しかしボルゲーノさんは、やれやれっといった様子でため息をつく。

「ダメですと言いたい所ですが、ルリシア様は一度言い出したら、私の言うことを聞いてくれませんから」
「そんなことないわよ。今朝嫌いなニンジンも食べたじゃない」

 それはまたちょっと違うような。やはりルリシアさんは少しずれているのだろうか。

「⋯⋯ルールは私が決めてもよろしいですか?」

 俺とルリシアさんは頷く。

「この屋敷の敷地内で行うこと。時間は今から二十四時としましましょう。それと大怪我を負わせる行動はしないこと。ルリシア様が屋敷の外に行く時は、必ず誰か一緒に行くこと。これでどうでしょうか?」
「異論はありません」
「僕も大丈夫です。だけどすみませんが、今日は家に帰らないことを僕の家に伝えてもらえませんか?」
「わかった。そちらは私が手配しておこう」
「ありがとうございます」

 良かった。さすがに何も言わずに家に帰らなかったら、心配をかけてしまう。セリカさんが俺を探しに行く姿が目に浮かぶな。

「ふふ⋯⋯ユートくん。今夜は寝かさないよ」

 これは夜、俺に奇襲攻撃をしてくるという予告だろうか。
 その台詞、別のシチュエーションで聞いてみたいものだ。
 だけど残念ながら俺に

「だけど夜更かしは身体に悪いから、その前に終わらせてあげるね」

 ルリシアさんは言葉を言い終えると、突然俺の肩に向かって右手を突き出してきた。
 だが既に俺はルリシアさんの一挙手一投足に注視していたので、その攻撃は食らわない。
 もちろんルリシアさんの攻撃を見切っていたこともあるが、俺には皇帝時間インペリアルタイムがあるからだ。
 時が止まり、古文書が自動で出現する。動ける範囲は狭いし、攻撃することも出来ないけど、ルリシアさんがやろうとしていることが丸見えだ。
 カードの力を使うつもりはないけど、ゼロ枚になると死んでしまうので、俺は最後のページに入っている四枚のカードを引き、最初のページにセットする。

 すると時が動き始めたので、向かって来たルリシアさんの手を掴み、そのままの勢いで一本背負いで投げる。
 普通ならこのまま床に叩きつけるけど、ルリシアさんは敵ではないので、床に着く前に止めた。

「うそ! 完全に隙をついたと思ってたのに」

 残念だけど皇帝時間インペリアルタイムがある限り、奇襲攻撃は無駄だ。何故なら攻撃を向けられた際に必ず世界の時が止まるからだ。

「これで僕のことを認めてくれますか?」
「まだ勝負は始まったばかりよ」

 これで認めてくれれば楽だったのに。

 俺は床に投げ飛ばしたルリシアさんを引き上げた。

「ありがとう。次こそユートくんから一本取ってみせるから」

 そう宣言するとルリシアさんは応接室から出ていってしまった。
 何か作戦を立てるつもりなのか、それとも俺の警戒心が緩んだ所を襲ってくるのか。
 まあどんな攻撃が来ようと、必ず凌いでルリシアさんの護衛になってみせる。

「ユート、今の動き見事だったぞ」
「ありがとうございます」
「ガーランドの奇襲攻撃もかわしたと聞いていたので、問題ないと思っていたが⋯⋯お前を護衛に推薦して良かったぞ」
「それはルリシアさんの試練に合格してから言ってください」
「そうだな」

 なるほど。俺の情報源はガーランドさんだったのか。ボルゲーノさんは優秀な人材を探しているから、冒険者ギルドのギルドマスターと繋がっててもおかしくはないよな。

「ルリシア様はやると決めたら猪突猛進⋯⋯いや、真っ直ぐなお方だから油断するなよ」
「はい。必ずルリシアさんの護衛になってみせます」
「良い返事だ。それと今日休む部屋を用意させる。こちらへ来てくれ」
「わかりました」

 そして屋敷の一室へに案内された俺は部屋で少し休む。するとメイドさんから夕食の準備が出来たと言われ、食堂へと向かった。

 食堂に到着すると、笑顔で機嫌が良さそうなルリシアさんの姿があった。

「ボルゲーノの屋敷の料理は美味しいわよ。ユートくん楽しみにしててね」
「本当ですか? すごく楽しみです」
「とりあえず座って座って」

 俺はルリシアさんの隣に座るよう促される。
 もしかして食べている時に攻撃してくるつもりなのか?
 せっかくの料理を台無しにしたくない。対処する時は料理をぶちまけないよう気をつけないと。

「ユートくんお水飲む? 私が注いであげるわね」

 ルリシアさんは、ウォーターポットに入っている水をグラスに注いでくれた。

「はい、どうぞ」

 俺はルリシアさんからグラスを受け取った。
 すると皇帝時間インペリアルタイムが発動するのであった。
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