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奇妙な依頼
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俺とバッツ達は街の中央にある、ボルゲーノの屋敷へと向かう。
その際に三人のことを観察していたが、だいたい人間関係がわかってきた。
猪突猛進で思ったことを口にするバッツ。
そのバッツを諌めるカリンさん。
寡黙だが二人から一歩引いた所で、状況を見ているテットくん。
どうやらこの三人は孤児院で育った幼なじみのようだ。
そしてジョブは戦士、猟兵、槍兵といずれもシルバーランクだった。
「ユートのカードマスター? 聞いたことねえな」
俺もジョブを聞かれたから答えたが、三人は懐疑的な表情をする。
やはり聞きなれないジョブは蔑まされるのか。
女神様から祝福をもらった時も、あまり良い目で見られなかったしな。
「だけど自分だけのジョブってかっこよくね?」
「そうね。もしユートくんが初めて授かった人なら、ユートくんの働きでそのジョブのランクが決まるってことね」
「うぉぉぉぉっ! マジか! ブラックやプラチナのランクを手に入れたら、ずっと語られる存在になるってことだろ? 滅茶苦茶羨ましいな」
どうやらこの三人にはカードマスターのジョブについて、偏見のようなものはないようで少しほっとした。
「⋯⋯着いたよ」
テットくんが言うとおり、俺達はサラさんが指定した建物の前に到着した。
「でけえ家だな」
「そうね。お金がある所にはあるって感じだわ」
依頼者であるボルゲーノさんの屋敷は、うちの屋敷と比べても数倍はありそうだ。
「これ、どうすればいいんだ?」
「あそこに門番の人がいるから聞いて見ましょう」
そして俺達は俺達は門の前にいる人に話しかけると、屋敷の一室へ案内された。
部屋には高そうな絵画や壺などがあり、この屋敷の主は相当なお金持ちであることが窺える。
「おお、俺⋯⋯こんな高級そうな部屋に入ったの初めてだよ」
「何びびってんのよ! いつもの強気なバッツはどこにいったの」
そう言いつつ、カリンさんの足も震えていた。
「ユートくんは凄いわね。全然動じてる感じがしないわ」
「そんなことないよ。心の中では心臓がドキドキしているから」
それよりテットくんも落ち着いているように見える。
バッツはテットくんのことをボーッとしているって言ってたけど、実は冷静に物事を見れる人なのかもな。
トントン
そしてドアがノックされると、メイドさんと中年の男性が部屋に入ってきた。
「私が冒険者ギルドに依頼を出したボルゲーノだ」
ボルゲーノさんは低い威圧感のある声で挨拶してきた。
「ユートです」
「バ、バッツです」
「カ、カリンと言います」
「⋯⋯テットです」
子供相手に圧をかけないでほしい。
おかげでバッツとカリンさんがびびってしまっているぞ。
もしかしてこんな子供に依頼が達成出来るわけがないと思わているのだろうか。
「手短に話そう。アルニアの商家タニアにある荷物を今日の午後五時時までにここまで運んで欲しい。報酬は金貨が二枚。ただし五時を過ぎた場合は報酬はゼロだ」
「わかりました」
「それともし運搬が不可能だと思ったら、すぐにタニアの店員に伝えてくれ」
ん? どういうことだ?
俺達が依頼を達成出来ないなら、商家タニアの人達が行うってことなのか?
「それではよろしく頼む」
ボルゲーノさんはそう言うと部屋から出ていき、俺達はメイドさんから屋敷の外に行くよう促された。
「よっしゃー! それじゃあ気合い入れてアルニアへ行くぜ」
屋敷の外に出ると、バッツは急に叫びだし始めた。
「さっきと全然違うわね。ボルゲーノさんにビビりまくってたのに」
「そ、そんなことねえよ」
「そんなことあるわよ」
俺とテットはカリンの言葉に頷く。
「と、とにかく時間が惜しい。早く行こうぜ」
「そうね。そのことには同意だわ」
バッツは誤魔化すように話題を逸らし、俺達はセレノアの街の西門からアルニアへの街へと向かう。
アルニアの街までは、西門を出て街道沿いに歩いて行けば二時間程で到着する。
だけど今回の依頼はただ行って荷物を貰い、ボルゲーノさんに届けて終わりという簡単なものではないだろう。
そのことをバッツ達がわかっているのか不安だ。
「それにしてもこの程度の依頼で金貨二枚だなんて、美味しい仕事だぜ」
どうやらバッツは、この依頼に何か裏があることをわかっていないようだ。
「⋯⋯僕はそう簡単には行かないと思うよ」
しかしバッツはわかっていなくても、テットくんはわかっているようだ。
「僕もテットくんの言うとおりだと思う」
「どういうことだよ?」
俺の中でいくつかの考えがあるけど、先にテットくんの意見を聞いてみよう。
俺が黙ってるとテットくんが語り出した。
「⋯⋯僕達が依頼を失敗した時は、タニアの人に伝えるよう言ってた。だから僕は荷物に秘密があると思う」
テットくんの言葉通り、ボルゲーノさんの言い方では、少なくともタニアの人達なら達成出来る依頼という訳だ。
俺達では無理でタニアの人達なら大丈夫。そのことから俺も荷物に秘密があると思う。
「それはどういうこと?」
「⋯⋯そこまではわからない」
「ユートくんはどう思う?」
「う~ん⋯⋯荷物が生きている危険なものとか」
「生きてるもの!? まさか魔物とかかな」
「それはわからない。後は⋯⋯」
「「後は?」」
「荷物が違法な物とか」
一番考えられるのは違法な荷物だ。これなら依頼料が高いのも頷ける。
「い、違法な荷物!? 私、そんな依頼受けたくないわよ」
「衛兵に報告した方がいいんじゃねえか!」
「飽くまで推測だから。普通の荷物の可能性もあるよ」
「そうね。確証もないのに衛兵の人に報告する訳には行かないわ」
「とにかく油断せずに、用心した方がいいよ」
俺の言葉に三人は頷く。
ボルゲーノさんの依頼である荷物とはどんな物なのか? 俺達は嫌な予感を持ちながら、アルニアの街へと向かうのだった。
その際に三人のことを観察していたが、だいたい人間関係がわかってきた。
猪突猛進で思ったことを口にするバッツ。
そのバッツを諌めるカリンさん。
寡黙だが二人から一歩引いた所で、状況を見ているテットくん。
どうやらこの三人は孤児院で育った幼なじみのようだ。
そしてジョブは戦士、猟兵、槍兵といずれもシルバーランクだった。
「ユートのカードマスター? 聞いたことねえな」
俺もジョブを聞かれたから答えたが、三人は懐疑的な表情をする。
やはり聞きなれないジョブは蔑まされるのか。
女神様から祝福をもらった時も、あまり良い目で見られなかったしな。
「だけど自分だけのジョブってかっこよくね?」
「そうね。もしユートくんが初めて授かった人なら、ユートくんの働きでそのジョブのランクが決まるってことね」
「うぉぉぉぉっ! マジか! ブラックやプラチナのランクを手に入れたら、ずっと語られる存在になるってことだろ? 滅茶苦茶羨ましいな」
どうやらこの三人にはカードマスターのジョブについて、偏見のようなものはないようで少しほっとした。
「⋯⋯着いたよ」
テットくんが言うとおり、俺達はサラさんが指定した建物の前に到着した。
「でけえ家だな」
「そうね。お金がある所にはあるって感じだわ」
依頼者であるボルゲーノさんの屋敷は、うちの屋敷と比べても数倍はありそうだ。
「これ、どうすればいいんだ?」
「あそこに門番の人がいるから聞いて見ましょう」
そして俺達は俺達は門の前にいる人に話しかけると、屋敷の一室へ案内された。
部屋には高そうな絵画や壺などがあり、この屋敷の主は相当なお金持ちであることが窺える。
「おお、俺⋯⋯こんな高級そうな部屋に入ったの初めてだよ」
「何びびってんのよ! いつもの強気なバッツはどこにいったの」
そう言いつつ、カリンさんの足も震えていた。
「ユートくんは凄いわね。全然動じてる感じがしないわ」
「そんなことないよ。心の中では心臓がドキドキしているから」
それよりテットくんも落ち着いているように見える。
バッツはテットくんのことをボーッとしているって言ってたけど、実は冷静に物事を見れる人なのかもな。
トントン
そしてドアがノックされると、メイドさんと中年の男性が部屋に入ってきた。
「私が冒険者ギルドに依頼を出したボルゲーノだ」
ボルゲーノさんは低い威圧感のある声で挨拶してきた。
「ユートです」
「バ、バッツです」
「カ、カリンと言います」
「⋯⋯テットです」
子供相手に圧をかけないでほしい。
おかげでバッツとカリンさんがびびってしまっているぞ。
もしかしてこんな子供に依頼が達成出来るわけがないと思わているのだろうか。
「手短に話そう。アルニアの商家タニアにある荷物を今日の午後五時時までにここまで運んで欲しい。報酬は金貨が二枚。ただし五時を過ぎた場合は報酬はゼロだ」
「わかりました」
「それともし運搬が不可能だと思ったら、すぐにタニアの店員に伝えてくれ」
ん? どういうことだ?
俺達が依頼を達成出来ないなら、商家タニアの人達が行うってことなのか?
「それではよろしく頼む」
ボルゲーノさんはそう言うと部屋から出ていき、俺達はメイドさんから屋敷の外に行くよう促された。
「よっしゃー! それじゃあ気合い入れてアルニアへ行くぜ」
屋敷の外に出ると、バッツは急に叫びだし始めた。
「さっきと全然違うわね。ボルゲーノさんにビビりまくってたのに」
「そ、そんなことねえよ」
「そんなことあるわよ」
俺とテットはカリンの言葉に頷く。
「と、とにかく時間が惜しい。早く行こうぜ」
「そうね。そのことには同意だわ」
バッツは誤魔化すように話題を逸らし、俺達はセレノアの街の西門からアルニアへの街へと向かう。
アルニアの街までは、西門を出て街道沿いに歩いて行けば二時間程で到着する。
だけど今回の依頼はただ行って荷物を貰い、ボルゲーノさんに届けて終わりという簡単なものではないだろう。
そのことをバッツ達がわかっているのか不安だ。
「それにしてもこの程度の依頼で金貨二枚だなんて、美味しい仕事だぜ」
どうやらバッツは、この依頼に何か裏があることをわかっていないようだ。
「⋯⋯僕はそう簡単には行かないと思うよ」
しかしバッツはわかっていなくても、テットくんはわかっているようだ。
「僕もテットくんの言うとおりだと思う」
「どういうことだよ?」
俺の中でいくつかの考えがあるけど、先にテットくんの意見を聞いてみよう。
俺が黙ってるとテットくんが語り出した。
「⋯⋯僕達が依頼を失敗した時は、タニアの人に伝えるよう言ってた。だから僕は荷物に秘密があると思う」
テットくんの言葉通り、ボルゲーノさんの言い方では、少なくともタニアの人達なら達成出来る依頼という訳だ。
俺達では無理でタニアの人達なら大丈夫。そのことから俺も荷物に秘密があると思う。
「それはどういうこと?」
「⋯⋯そこまではわからない」
「ユートくんはどう思う?」
「う~ん⋯⋯荷物が生きている危険なものとか」
「生きてるもの!? まさか魔物とかかな」
「それはわからない。後は⋯⋯」
「「後は?」」
「荷物が違法な物とか」
一番考えられるのは違法な荷物だ。これなら依頼料が高いのも頷ける。
「い、違法な荷物!? 私、そんな依頼受けたくないわよ」
「衛兵に報告した方がいいんじゃねえか!」
「飽くまで推測だから。普通の荷物の可能性もあるよ」
「そうね。確証もないのに衛兵の人に報告する訳には行かないわ」
「とにかく油断せずに、用心した方がいいよ」
俺の言葉に三人は頷く。
ボルゲーノさんの依頼である荷物とはどんな物なのか? 俺達は嫌な予感を持ちながら、アルニアの街へと向かうのだった。
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