没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
11 / 86

同年代の子供の考え

しおりを挟む
「俺の方が先に依頼を取ったよな?」

 隣に俺と歳が同じくらいの少年がいた。

「タイミング的に同時だったと思うけど」
「そんなことないよな?」

 少年は後ろを振り向き同意を求める。

「⋯⋯僕の目に同じに見えたけど」
「バッツ! また問題を起こしたの? いい加減にしてよね」

 どうやら仲間が二人いるようだ。
 そして何故か少年は仲間の一人である女の子に叱られていた。

「ちげえよ! ただ依頼書を同じタイミングで取っただけで問題起こした訳じゃ」
「⋯⋯自分で同じタイミングって認めたね」
「ごめんなさい! このバカが迷惑をかけて」

 三人だけで話が解決してしまった。まるでコントを見ているようだ。

「ううん、タイミング的には同時だったから」
「ほらみろ! 別に俺は悪くないだろ!」
「あんたは自分が先だって押しきろうとしてたじゃない!」
「そ、それは⋯⋯」

 また言い争いが始まってしまった。
 これはいつまで続くのだろうか。
 だがどうやら女の子がこのパーティーで権力を持っているようで、話はすぐ終わった。

「さっきは悪かったな」
「私からも謝ります。迷惑をかけてごめんなさい」
「⋯⋯ごめんなさい」

 三人はこちらに向かって頭を下げてきた。

「気にしてないよ。それよりこの依頼どうする? 君達が受ける?」

 素直に謝罪されたなら、ここは年長者として依頼書は譲るべきだろう。

「それなら一緒に受けねえか?」
「一緒にですか?」
「ああ。これも何かの縁だ。それにそっちの方が面白そうだ」
「面白いってあんた⋯⋯いつも勝手に決めて苦労するのは私達なのよ」

 この子達と一緒に依頼を受けるのか。確かに面白そうだ。
 実際にこの世界の子供達がどんなことを考えているのか、どれくらいの実力があるのか確認してみたい。
 俺は今までトアとセリカさん、ソルトさんとしか関わってなかった。だからこの世界のことを知るために、こちらとしても望む所だ。

「いいよ。依頼を一緒に受けよう」
「えっ? 本当にいいの? 絶対バッツが迷惑をかけるわよ」
「何だと!」
「大丈夫です。僕もバッツくんと同じで皆さんと依頼を受けるのが、面白そうだと感じたので」
「さすがわかってるじゃねえか。お前名前は?」

 バッツは自分の味方をしてくれる人がいて嬉しかったのか、肩を組んでくる。
 いきなり馴れ馴れしいな。これがこの世界の子供達の基準なのか?

「僕はユート」
「俺はバッツだ。そしてこの赤髪の気が強くてうるさいのがカリン」
「誰がうるさいよ! あんたのせいでしょ!」

 どうやら気が強いは、否定しないらしい。

「この体格がいいボーッとしているやつがテットだ」
「⋯⋯よろしく」
「それでユートは何歳だ?」
「昨日十歳になったばっかりだよ」
「なるほど。それなら俺達の方が先輩冒険者だな。冒険者の心得を教えてや⋯⋯」
「あんたバカなこと言ってるんじゃないわよ!」

 バッツが胸を張って先輩面しようとしていたが、カリンさんに頭を叩かれる。

「いてえな! 何するんだよ!」
「私達だって祝福をもらったばかりで、冒険者になったのも十日前でしょ!」
「た、確かにそうだが、初めて出来た後輩だぞ。少しくらい浮かれてもいいだろ」
「もうバッツは黙ってて! これ以上私達に恥をかかせないでよ」

 十日前ということは俺と同じ歳か。
 それにしてもよく冒険者になったばかりで先輩面出来るな。今の子達はこんな感じなのか?
 そういえばドイズも無駄に自信ありげだったな。

「うるせえな。そんなことより依頼内容を見てみようぜ!」
「そんなことじゃないけど依頼内容は気になるわね」

 バッツが手に持っている依頼書を俺も横から見る。すると中にはとんでもないことが記載されていた。

 Eランク⋯⋯アルニアにある荷物を本日午後五時までに、ボルゲーノ邸まで届けること。ただし、時間を過ぎれば依頼料はなしとする。

 ここまでは良くある荷物運搬の依頼だ。
 だが依頼料が通常ではありえない金額だった。

 依頼料は金貨二枚とする。

「金貨二枚だと!」
「アルニアの街は歩いて二時間くらいよね? これなら私達でも出来そうだわ」

 バッツのパーティーは依頼料の高さに沸く。
 だけどこの依頼怪しくないか? 遠くの街ならともかく、隣街でこの金額はおかしすぎる。だって日本円にすると二百万だぞ。

「でも少し怪しくないかな。荷物運搬で金貨二枚って」
「別に依頼料が高いのはいいことじゃねえか」

 それにまだおかしいことがあるけど、バッツ達は気づいていない。

「何でこの依頼が残ってたのかな? こんなに良い条件の依頼が残ってるなんておかしいと思うけど」
「確かにそうね」
「⋯⋯気づかなかった」

 普通なら一番になくなってもいい依頼だ。

「何言ってんだ。これはチャンスだぞ。チャンスは最大限いかせっていうだろ」

 それは某アニメの名台詞では? 何故バッツが知ってるんだ。
 だけどバッツの言うことも一理ある。
 せっかく高待遇の依頼が残ってるのに逃す手はない。

「とにかくこの依頼は受ける! いいな?」

 カリンさんもテットくんも頷きはしなかったけど、否定もしなかった。
 そのため、バッツは受付へと依頼書を持っていき、俺達も後に続く。

「サラのねーちゃん。この依頼受けてもいいか?」
「はい? バッツくん達とユートくん。もしかして同じ依頼を受けるの?」
「そのとおりだ」
「わかりました⋯⋯! この依頼を本当に受けるんですか? 私としてはやめた方がいいと思いますけど⋯⋯」

 サラさんの表情が暗くなる。
 やはりこの依頼には裏があるようだ。

「依頼主のボルゲーノさんはその⋯⋯無理難題を仰る方で⋯⋯そのため今までボルゲーノさんの依頼は誰も達成したことがなく⋯⋯」

 なるほど。だから依頼書には達成できなければ金は支払わないと書いてあったのか。

「誰も達成出来ない依頼か⋯⋯おもしれえ。それなら俺がその依頼を達成してやるよ!」

 だがサラさんの話を聞いて、逆にバッツのやる気に火が着いたようだ。

「ええっ! あんた本気!?」
「ああ。仮に達成出来なかったとしても一日無駄になるだけだ。それならやるしかないだろ?」

 確かにバッツの言う通りだ。ダメだったとしてもお金を取られる訳じゃないから、どんな依頼かわからないが、やるのはありだな。

「ユートくんもやるの?」

 サラさんが最終確認なのか、問いかけてくる。

「バッツくん達がやるなら」
「う~ん⋯⋯そっか。ユートくんがいるならもしかしてボルゲーノのさんの依頼を達成出来るかも」

 神妙な顔をしてボソッと呟く。

「わかりました。それではバッツくん、カリンさん、テットくん、ユートくんでこの依頼を受注するということで。詳しい内容はボルゲーノさんに直接お聞き下さい」
「任せとけ!」

 こうして俺は出会ったばかりのバッツ達と依頼を受けることとなり、冒険者ギルドを後にするのであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話

湯島二雨
恋愛
彼女いない歴イコール年齢、アラサー平社員の『俺』はとあるラブコメ漫画のお色気担当ヒロインにガチ恋していた。とても可愛くて優しくて巨乳の年上お姉さんだ。 しかしそのヒロインはあくまでただの『お色気要員』。扱いも悪い上にあっさりと負けヒロインになってしまい、俺は大ダメージを受ける。 その後俺はしょうもない理由で死んでしまい、そのラブコメの主人公に転生していた。 俺はこの漫画の主人公になって報われない運命のお色気担当負けヒロインを絶対に幸せにしてみせると誓った。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...