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少しやり過ぎたかもしれない

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「天からの裁きを受けるといい!」

 俺が古文書から取り出し、投げたのは大岩⭐1のカードだ。
 カードはグリフォンの上空で光ると大岩に戻り、落下してくる。

「クァッ?」

 グリフォンは異変に気づいたのか、真上に目を向けるがもう遅い。
 大岩はグリフォンの上に落ちる。
 そしてグリフォンと共に、地面に落下してくるのであった。

「ギエェェェェッ!」

 グリフォンは大岩に押し潰され、悲鳴を上げている。そして大岩の下でもがき、立ち上がろうとしていた。

 真上に乗っている大岩は少しずつ持ち上がっているので、このままだと大岩から逃れてしまう。

「だがさせない!」

 俺はグリフォンに接近し、頭部に向かって剣を振り下ろす。
 すると大岩の下でかわすことの出来ないグリフォンの頭を、見事斬り裂くことに成功するのだった。

「ふう⋯⋯何とかなったな」

 カードマスターのジョブをもらって初めての実戦だったけど、上手くいったと思う。
 ドイズは上手く逃げることが出来ただろうか?
 ハーピーに切り裂かれて、怪我をしていたしな。
 少し心配なので後を追いかけるため、東側へと足を向けるが、西側から人の気配がした。

「ユートくん大丈夫!」
「サラさん?」

 何故ここにサラさんがいるんだ。
 もしかして中央区画にあった冒険者ギルドまで、魔物が侵入してきたのか?

「僕は大丈夫ですけど、何故サラさんがここにいるんですか?」
「ユートくんを助けに来たに決まってるじゃない」
「僕を?」
「左肩から血を流している男の子に言われたのよ。ユートくんが恐ろしい魔物に襲われているって。だから急いで来たけど」

 もしかしてドイズのことなのか?
 まさか魔物がいるかもしれないのに、態々ギルドまで行ってくれたのか。
 屋敷の前で騒いでいる時は、常識知らずの子供だと思ったけど、ネネちゃんを案じて助けに来たことといい、見直したぞ。

「でも良かった。魔物から逃げることが出来たのね」

 ん? サラさんは何か勘違いしてないか?

「むしろ逃げたのは魔物ですね」
「えっ?」
「ハーピーを倒したら、残りのハーピーは逃げて行きました。後倒したグリフォンの死体もそこにありますよ」

 俺は大岩に押し潰され、首と胴体が分かれているグリフォンを指差す。

「グ、グ、グリフォン!」
「はい」
「本当に死んでいる! もしかして他の方が倒したのですか?」
「いえ、僕が倒しました。後でギルドカードを確認してみて下さい」
「これを⋯⋯ユートくんが⋯⋯」

 信じられないのも無理はない。
 祝福をもらったとはいえ、十歳の子供が魔物を倒したのだ。
 俺は祝福をもらったらトアの病を治すため、すぐに冒険に出たかった。だから魔物が倒せるよう、今までセリカさんと鍛練してきたのだ。
 その成果が出てとても嬉しい。

「し、失礼しました。とにかく今はここを離れましょう。また魔物が来る可能性があるので」

 だがそのサラさんの心配は杞憂に終わる。

「魔物は逃げていったぞ!」
「俺達の勝利だ!」 

 遠くから高揚した声が聞こえてきた。
 どうやらセレノアの街を守ることが出来たようだ。
 今まで街に魔物が襲撃してくることはなかったのに。何かの前触れじゃなきゃいいけど。

「良かったです。街が守れて」
「そうですね。さすがセレノアの冒険者さんですね」
「その中にユートくんも入ってますよ!」
「僕は三匹しか倒してませんよ」
「その内の一匹はとんでもない魔物ですよ!」
「そうですか?」
「ユートくんのジョブはカードマスターですよね? 初めて聞くジョブですがもしかしてプラチナランク以上じゃ⋯⋯」
「そんなことないよ」

 俺は日本人らしく謙遜した態度で言葉を返す。
 魔物がいなくなったなら、そろそろ人が戻ってくるだろう。
 とりあえずこの大岩を何とかした方がいいな。

 俺は大岩に向かって手をかざす。

「えっ? ユートくん何を⋯⋯」
「このままあっても邪魔なので」

 俺はカードにするキーワードを口にする。

「カードとなりて我が手に集え」

 すると十秒程経つと大岩が光を発し、カードへ変わった。

「エェェェェッ! 岩がなくなった!?」
「ええ、カードにしました」
「そ、そんなことが⋯⋯これはギルドマスターにも報告した方が良さそうですね。とりあえず一旦ギルドに戻りましょう」
「うん」
「倒した魔物の素材は後でうちの職員に運んでもらいますね」

 こうして俺はカードマスターとして初めての実戦を終え、サラさんと共に冒険者ギルドへと戻るのであった。

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