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望むピンチ
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街の東側から中央に向かって十分程歩くと、一際大きな建物が見えてきた。
「これが冒険者ギルドか」
何度かこの辺りに来たことはあるけど、中に入るのは初めてだ。
俺は冒険者ギルドの扉を開くと、そこには大勢の人で賑わいを見せていた。
え~と⋯⋯冒険者になるには受付に行けばいいのかな?
受付の中に、二十歳位の綺麗な女性がいるので聞いてみよう。
「すみません。冒険者ギルドに登録しにきました。どうすればいいのかな?」
「はい、こちらの登録用紙に必要事項を記入していただき、血を一滴いただければ登録完了です」
本で見たがギルドカードに血を一滴垂らすと、本人とギルドカードがリンクするらしい。魔物の討伐もカードを見れば、いつどの魔物を狩ったのかわかると書いてあった。また、偽造もできないので身分証明書としても使われるみたいだ。
魔道具の一種なのかな。
元の世界でもギルドカードがあったらかなり重宝されそうだ。
「冒険者ギルドは初めてですか?」
「はい」
「では冒険者ギルドについて説明させて頂きます。私は冒険者ギルド受付担当のサラと言います」
「ユートです。よろしくお願いします」
「冒険者ギルドに登録して頂けると、あちらにありますボードから依頼を受けることができます」
視線を向けるとボードの近くは人でいっぱいだった。
「依頼内容は様々なものがありまして、大まかに採集、討伐、護衛の三つになります。他には掃除の依頼であったり、探し物の依頼だったり特に制限はありません。ただし依頼を受けるには一定以上の冒険者ランクが必要になります。冒険者ランクは下からF、E、D、C、B、A、S、SSとなっていてSランク以上はこの国、エルスディア帝国でも数人しかいません」
確かSランク以上の冒険者のほとんどは、ジョブランクがプラチナより上だった気がする。
「冒険者ランクを上げるためには、依頼を受けて達成していただきます。Aランクまではギルドの裁量でランクを上げることができますが、Sランクからは国の許可が必要になります」
ランクの高いジョブだったり、多大な功績を残せば一気にランクを上げられるということか。
「注意事項としまして、依頼を受けるには自分のランクの一つ上までしか受けれません。また依頼には期限があって達成できないと違約金を払うことになりますので注意してください。以上になりますが何かご質問はありますか」
「いえ、特にないです。ありがとうございます」
「それではこちらの書類に必要事項を記入して下さい」
書類の記入欄には、名前、性別、年齢の欄がある。
「ちなみに嘘をつくと重い罪になるから気をつけてね」
「わかりました」
犯罪者とかが、身分を偽造するということか。確かに必要な処置ではあるな。
俺は書類を記載し提出すると、サラさんは一度この場を離れる。そして戻ってきたサラさんの手には、何かが握られていた。
「こちらがユートくんのギルドカードになります。最後にギルドカードに血液を一滴垂らしてください」
俺は言われた通りにギルドカードに血液を一滴垂らす。
するとカードが光を放ち、垂らした血液は消えてしまった。
そしてカードの端に名前とジョブ、そしてFの文字が記載されている。
「はい、これで冒険者ギルドの登録が終了となります。お疲れさまでした」
「ありがとうございます」
このカードで何を討伐したかわかるのか。凄いな。
「それとこちらの能力測定装置にギルドカードを入れると、自分の能力を知ることを出来ますが、やっていきますか?」
「いえ、やめておきます」
「そ、そうですか。ギルドカードを受け取って能力を確認しない人は、私が担当した中で初めてです」
「ちょっと今日は用があって」
本当は用などない。
だけどこの能力測定装置は、力や素早さなどを知ることが出来るが、称号も見ることも出来る。
もしかしたら俺には、異世界転生者の称号があるかもしれない。
そのようなものを公共の場で晒す訳にはいかないからな。
自分の能力を確認するなら、出来れば誰もいない場所がいい。
「ではサラさん、ありがとうございました。僕はこれで――」
「大変だ!」
俺はサラさんの前から立ち去ろうとした時。突如若い男性が冒険者ギルドに駆け込んできた。
「どうしました。何かあったのですか?」
サラさんがすぐに若い男性に駆け寄る。
「どうしたもこうしたもあるか! ま、魔物だ!」
「魔物?」
「ああ、魔物の大群が西側からこの街に向かってきている!」
魔物の大群が迫ってるだと!
俺は自宅がある東側からじゃなくて安堵する。
「これは俺達の出番だな」
「街を守るために行くぞみんな!」
冒険者達は意気揚々とギルドを出て、街の西側へと向かう。
これはカードマスターの能力を試すチャンスだな。
俺も冒険者ギルドの外に出ようとするが、突然肩を掴まれた。
「ユートくんはダメですよ」
「えっ?」
「冒険者に成り立ての子を、危険な場所に行かせる訳にはいきません」
「⋯⋯わかりました」
ここでギルド職員と揉めても良いことはないので、おとなしく従っておく。
だからとりあえず帰る振りをしてギルドの外に出たら、西側に向かえばいい。俺はそう思っていたが考えが甘かった。
「危ないから絶対に西側に行ったらダメよ」
「大丈夫ですよ。ちゃんと家に帰りますから」
サラさんもギルドの外に出て、訝しい目でジッとこちらを見ていた。
これは余計なことをしない方がいいか。
もしかしたら規則を破ったとかで、ペナルティのようなものがあるかもしれないしな。
残念だが、俺は仕方なくサラさんの言葉に従って街の東側へと向かう。
俺は自宅へ帰るために東側へと向かっているが、どうやらそれは俺だけではなかった。
多くの住民達が何かから逃れるためか、血相をかきながら走っている。
「どうやら魔物は相当な数のようだ」
住民が東側まで来るということは、西口の門のが破られている可能性が高い。
もしかしたらここで待っていれば魔物と戦うことが出来るかもしれない。
これは自宅に帰らない方がよさそうだ。
俺は街の東側に行くのをやめて、その場に立ち止まることにした。
早く魔物よ来い来い。
俺は逸る気持ちを抑えながら魔物が来るの待つ。
「どうするんだよ!」
「じゃあドイズ様に着いていくのか?」
だが現れたのは、ドイズと一緒にいた取り巻き二人だった。
どうやらドイズはいないようだ。まあこの非常事態なら仕方ないか。
俺は特に二人と話すこともないので、声をかけずにいた。
「あっ! お前は没⋯⋯じゃなくてユート」
「どうしたんだ? 今はこいつに話しかけてる場合じゃないだろ?」
「いや、だって。今は少しでも人手があった方がよくないか」
人手? 何かあったのだろうか?
だけど今没落貴族と言おうとしたので、俺からは話しかけない。
「なあユート」
「何?」
「実はドイズ様がネネちゃんを助けに行くって言って、鍛冶屋ダインまで行っちゃったんだ。俺達はこれからドイズ様の所に行こうと思っているけど、お前も来てくれないか? 女神の祝福を受けただろ?」
「こいつは不遇職だったんだ。一緒に来ても足手まといになるだけだ」
鍛冶屋ダインか。確か街の北東地域にある武器や防具を作っている鍛冶屋だ。
それにしてもあの横暴そうなドイズが人助けか⋯⋯これは面白そうだ。
「いいよ。でも僕一人で行くから君達は先に逃げてて」
「バカいうな。お前だけに任せておけるか」
「俺達も行くぞ」
正直この二人は実戦訓練をしているように見えないから、出来れば俺一人で行きたいのだが。
これは二人も連れて、ドイズの元へ向かうしかないと諦めかけたその時。
「ザグ! レグ! こんな所で止まって何をしているの!」
「「お、お母さん!」」
「早く逃げるよ!」
「ちょっと待って!」
「俺達にはやることが」
しかし母親は二人の言葉に聞く耳を持たず、手を引かれ、街の東側へと連れていかれる。
「くそっ! 仕方ない。ユ、ユート! ドイズ様を頼む!」
「ドイズ様に何かあったら許さないからな」
どうやら女神様は俺の願いを聞き届けてくれたようだ。
これで一人でドイズの所へ行くことができる。
サラさんから危険なことをするなと言われたが、これは人助けだから仕方ないよな。
そして俺はドイズとネネを助けに行くため、急ぎ街の北東地域へと向かうのであった。
「これが冒険者ギルドか」
何度かこの辺りに来たことはあるけど、中に入るのは初めてだ。
俺は冒険者ギルドの扉を開くと、そこには大勢の人で賑わいを見せていた。
え~と⋯⋯冒険者になるには受付に行けばいいのかな?
受付の中に、二十歳位の綺麗な女性がいるので聞いてみよう。
「すみません。冒険者ギルドに登録しにきました。どうすればいいのかな?」
「はい、こちらの登録用紙に必要事項を記入していただき、血を一滴いただければ登録完了です」
本で見たがギルドカードに血を一滴垂らすと、本人とギルドカードがリンクするらしい。魔物の討伐もカードを見れば、いつどの魔物を狩ったのかわかると書いてあった。また、偽造もできないので身分証明書としても使われるみたいだ。
魔道具の一種なのかな。
元の世界でもギルドカードがあったらかなり重宝されそうだ。
「冒険者ギルドは初めてですか?」
「はい」
「では冒険者ギルドについて説明させて頂きます。私は冒険者ギルド受付担当のサラと言います」
「ユートです。よろしくお願いします」
「冒険者ギルドに登録して頂けると、あちらにありますボードから依頼を受けることができます」
視線を向けるとボードの近くは人でいっぱいだった。
「依頼内容は様々なものがありまして、大まかに採集、討伐、護衛の三つになります。他には掃除の依頼であったり、探し物の依頼だったり特に制限はありません。ただし依頼を受けるには一定以上の冒険者ランクが必要になります。冒険者ランクは下からF、E、D、C、B、A、S、SSとなっていてSランク以上はこの国、エルスディア帝国でも数人しかいません」
確かSランク以上の冒険者のほとんどは、ジョブランクがプラチナより上だった気がする。
「冒険者ランクを上げるためには、依頼を受けて達成していただきます。Aランクまではギルドの裁量でランクを上げることができますが、Sランクからは国の許可が必要になります」
ランクの高いジョブだったり、多大な功績を残せば一気にランクを上げられるということか。
「注意事項としまして、依頼を受けるには自分のランクの一つ上までしか受けれません。また依頼には期限があって達成できないと違約金を払うことになりますので注意してください。以上になりますが何かご質問はありますか」
「いえ、特にないです。ありがとうございます」
「それではこちらの書類に必要事項を記入して下さい」
書類の記入欄には、名前、性別、年齢の欄がある。
「ちなみに嘘をつくと重い罪になるから気をつけてね」
「わかりました」
犯罪者とかが、身分を偽造するということか。確かに必要な処置ではあるな。
俺は書類を記載し提出すると、サラさんは一度この場を離れる。そして戻ってきたサラさんの手には、何かが握られていた。
「こちらがユートくんのギルドカードになります。最後にギルドカードに血液を一滴垂らしてください」
俺は言われた通りにギルドカードに血液を一滴垂らす。
するとカードが光を放ち、垂らした血液は消えてしまった。
そしてカードの端に名前とジョブ、そしてFの文字が記載されている。
「はい、これで冒険者ギルドの登録が終了となります。お疲れさまでした」
「ありがとうございます」
このカードで何を討伐したかわかるのか。凄いな。
「それとこちらの能力測定装置にギルドカードを入れると、自分の能力を知ることを出来ますが、やっていきますか?」
「いえ、やめておきます」
「そ、そうですか。ギルドカードを受け取って能力を確認しない人は、私が担当した中で初めてです」
「ちょっと今日は用があって」
本当は用などない。
だけどこの能力測定装置は、力や素早さなどを知ることが出来るが、称号も見ることも出来る。
もしかしたら俺には、異世界転生者の称号があるかもしれない。
そのようなものを公共の場で晒す訳にはいかないからな。
自分の能力を確認するなら、出来れば誰もいない場所がいい。
「ではサラさん、ありがとうございました。僕はこれで――」
「大変だ!」
俺はサラさんの前から立ち去ろうとした時。突如若い男性が冒険者ギルドに駆け込んできた。
「どうしました。何かあったのですか?」
サラさんがすぐに若い男性に駆け寄る。
「どうしたもこうしたもあるか! ま、魔物だ!」
「魔物?」
「ああ、魔物の大群が西側からこの街に向かってきている!」
魔物の大群が迫ってるだと!
俺は自宅がある東側からじゃなくて安堵する。
「これは俺達の出番だな」
「街を守るために行くぞみんな!」
冒険者達は意気揚々とギルドを出て、街の西側へと向かう。
これはカードマスターの能力を試すチャンスだな。
俺も冒険者ギルドの外に出ようとするが、突然肩を掴まれた。
「ユートくんはダメですよ」
「えっ?」
「冒険者に成り立ての子を、危険な場所に行かせる訳にはいきません」
「⋯⋯わかりました」
ここでギルド職員と揉めても良いことはないので、おとなしく従っておく。
だからとりあえず帰る振りをしてギルドの外に出たら、西側に向かえばいい。俺はそう思っていたが考えが甘かった。
「危ないから絶対に西側に行ったらダメよ」
「大丈夫ですよ。ちゃんと家に帰りますから」
サラさんもギルドの外に出て、訝しい目でジッとこちらを見ていた。
これは余計なことをしない方がいいか。
もしかしたら規則を破ったとかで、ペナルティのようなものがあるかもしれないしな。
残念だが、俺は仕方なくサラさんの言葉に従って街の東側へと向かう。
俺は自宅へ帰るために東側へと向かっているが、どうやらそれは俺だけではなかった。
多くの住民達が何かから逃れるためか、血相をかきながら走っている。
「どうやら魔物は相当な数のようだ」
住民が東側まで来るということは、西口の門のが破られている可能性が高い。
もしかしたらここで待っていれば魔物と戦うことが出来るかもしれない。
これは自宅に帰らない方がよさそうだ。
俺は街の東側に行くのをやめて、その場に立ち止まることにした。
早く魔物よ来い来い。
俺は逸る気持ちを抑えながら魔物が来るの待つ。
「どうするんだよ!」
「じゃあドイズ様に着いていくのか?」
だが現れたのは、ドイズと一緒にいた取り巻き二人だった。
どうやらドイズはいないようだ。まあこの非常事態なら仕方ないか。
俺は特に二人と話すこともないので、声をかけずにいた。
「あっ! お前は没⋯⋯じゃなくてユート」
「どうしたんだ? 今はこいつに話しかけてる場合じゃないだろ?」
「いや、だって。今は少しでも人手があった方がよくないか」
人手? 何かあったのだろうか?
だけど今没落貴族と言おうとしたので、俺からは話しかけない。
「なあユート」
「何?」
「実はドイズ様がネネちゃんを助けに行くって言って、鍛冶屋ダインまで行っちゃったんだ。俺達はこれからドイズ様の所に行こうと思っているけど、お前も来てくれないか? 女神の祝福を受けただろ?」
「こいつは不遇職だったんだ。一緒に来ても足手まといになるだけだ」
鍛冶屋ダインか。確か街の北東地域にある武器や防具を作っている鍛冶屋だ。
それにしてもあの横暴そうなドイズが人助けか⋯⋯これは面白そうだ。
「いいよ。でも僕一人で行くから君達は先に逃げてて」
「バカいうな。お前だけに任せておけるか」
「俺達も行くぞ」
正直この二人は実戦訓練をしているように見えないから、出来れば俺一人で行きたいのだが。
これは二人も連れて、ドイズの元へ向かうしかないと諦めかけたその時。
「ザグ! レグ! こんな所で止まって何をしているの!」
「「お、お母さん!」」
「早く逃げるよ!」
「ちょっと待って!」
「俺達にはやることが」
しかし母親は二人の言葉に聞く耳を持たず、手を引かれ、街の東側へと連れていかれる。
「くそっ! 仕方ない。ユ、ユート! ドイズ様を頼む!」
「ドイズ様に何かあったら許さないからな」
どうやら女神様は俺の願いを聞き届けてくれたようだ。
これで一人でドイズの所へ行くことができる。
サラさんから危険なことをするなと言われたが、これは人助けだから仕方ないよな。
そして俺はドイズとネネを助けに行くため、急ぎ街の北東地域へと向かうのであった。
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