没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

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かなり使えるカードマスターの力

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俺はセレノアの街に向かう途中、カードマスターの能力について再確認していた。

「アーカイブ」

俺は古文書を呼び出すキーワードを口にする。
すると目の前に本が現れた。

「これが古文書というやつか。しかも宙に浮いてるぞ」

古文書は、手に入れたカードをセットすることが出来るようだ。
俺は身体を上下左右に動かしてみるが、古文書は同じ様についてくる。

「だけどこれは剣を使う時邪魔じゃないか」

このままだと戦いの時、古文書も斬ってしまいそうだ。
だが古文書は俺の言葉を聞いていたかのように、俺の左側に動いたり、背後に移動する。
どうやら俺の意思で古文書の場所は決められるようだ。

それと古文書の表紙にはⅠと数字が書いてあった。これはどういう意味なのだろうか?

とりあえず俺は古文書のページを捲ってみる。
最初のページは、バトル中に使用するカードをセットする場所になっており、五つの枠があった。
そして次のページを見ようとしたが、捲ることができない。

「どういうことだ? 二ページ目を見るには何か条件が必要なのか?」

他のページも見ようしたが、結局確認できたのは最後ページだけだった。
最後のページは、常時カードを保管できる場所になっていて、十の枠がある。しかし十の内三つは既にカードが入っていた。

「これは⋯⋯パワーブースター、フォースブースター、真実の眼?」

カードにはそれぞれ文字が書かれている。

パワーブースター⭐3⋯⋯身体能力が強化される。
フォースブースター⭐3⋯⋯魔力が強化される。
真実の眼⭐2⋯⋯物の能力を見ることが出来る。

これは初回特典のようなものなのか? 
だけどこれでもまだ、バトル中に使用できる枠が二つあった。
このカードマスターの能力はデメリットもある。
バトル中にカードが0枚になると命を失うのだ。そのため出来れば五枚の枠は埋めておきたい。
その時ふと目に止まった物があった。
大きな岩だ。俺の身長の五倍くらいはあるな。

「これは使えそうだ。せっかくだから試してみるか」

俺はその大岩に向かって手をかざし、言葉を発する。

「カードとなりて我が手に集え」

すると十秒程経つと大岩が光を発し、カードへ変わる。
俺はカードマスターのスキルである、カード変換を使ってみた。

「おお⋯⋯本当にカードになったぞ。これが物をカードにする力か」

カードはまるで意志があるかのように俺の手に収まる。
俺は大岩⭐1のカードを手に入れた。
これでバトル中に使えるカードは四枚になり、空いてる枠は一つとなる。

「やはり思っていた通りの力だ。この物をカードにする力だけでも、かなり使えそうだな」

後は実際の戦闘でどの程度使えるか、楽しみだ。
俺は久しく忘れていた高揚する気持ちを抑えながら、セレノアの街に向かう。
そしてセレノアの街の入口に到着すると、俺を待ち構えている三つの影があった。

やれやれ。懲りない奴らだな。

「そこの没落貴族!」

何やら大きな声で騒いでいるぽっちゃりした子供がいるが、俺は無視して街の中へと入る。

「お前! ドイズ様が呼んでいるんだぞ!」
「無礼だろ! 止まれ!」

そしてドイズと呼ばれた少年の横にいる二人も騒ぎだしたが、俺は聞こえなかった振りをして、そのまま冒険者ギルドの方へと向かう。

「ちょっと待て! 無視するな!」

ドイズが怒りを露にして話しかけてくるが、俺は何事もなかったかのように三人の横を通り過ぎていく。
失礼な奴らの話など聞く必要もない。ただの時間の無駄だからな。

「待ってくれ。ユート」

ドイズが慌てた様子で引き留めて来たので、俺は仕方なく止まってやる。
今回は一応は名前を呼んだからな。

「何か僕に用があるの?」
「貴様! 何度も呼んだのに無視しやがって!」
「今は急いでいるから手短に話してほしいなあ」
「俺達を舐めているな。不遇職の分際で!」

もしかしてカードマスターのことを言ってるのか?
カードマスターが不遇職なんて、勘違いしてるな。だけどそのようなことを教える義理もないので、答える必要はない。

「ドイズ様はお前と違って重騎士のジョブを持っているんだぞ!」
「ゴールドランクのドイズ様にひれ伏すがいい」

ジョブにはランクがあり、下から順にホワイト、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ブラックに分かれている。
これは有用なスキルを覚えたり、成長率が高いジョブが高ランクに設定されているのだ。

「何で? ゴールドランクだから強いわけじゃないよね?」

実際に下位のランクでも上位のランクの人に勝てたりもする。要は本人の戦い方と努力次第ということだ。

「没落貴族のクセに生意気な!」
「事実を言っただけだよ」
「こいつ⋯⋯本当に腹立つな。いいか! とにかくネネちゃんに近づくなよ! わかったか?」

理不尽な命令は聞く必要がないので無視する。

「もしネネちゃんに手を出すなら許さないからな!」

ネネとは確か同年代の女の子だ。精神年齢二十二歳の俺が十歳の子供に手を出す訳ない。

俺はドイズの叫び声を背に、冒険者ギルドへ向かう。

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