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プロローグ
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俺は今、セレノアの街にある教会へと来ていた。
目の前には神々しい光が祭壇を照らしている。
天城ヒイロとして二十二歳で事故に遭い、前世の記憶を持ったまま異世界転生し、ユートとしてこれまで過ごしてきた。
俺は十歳の誕生日を迎え、女神様からの祝福⋯⋯ジョブを授かるため教会に来たのだ。
ジョブには様々な種類があり、戦士系なら力が、魔法使い系なら魔力の成長率が著しく上がるなどの恩恵を受けられる。つまりは間違えた努力をすることなく、未来への方向性を決められるということだ。
これまで英雄と呼ばれた人物は、必ず稀有なジョブを授かっていた。
剣聖、ドラゴンナイト、聖戦士、聖女、賢者、大魔導師など⋯⋯誰もがそれらのジョブを授かることを願っている。
だが俺は違う。
俺が望むのは医療系のジョブだ。
何故なら俺には助けたい人⋯⋯妹のトアがいるからだ。
トアは俺が知る限り、三才の頃から不治の病に犯されていて、その症状は多岐に渡っていた。
特に味覚障害、視力障害、筋力の低下の症状が著しく、食べても味がしない、外の世界をハッキリと見ることが出来ない、そして一日中ベッドの上から起き上がることもできないのだ。
だから俺は、奇跡の力を得る日を待っていた。
「ではユートくん⋯⋯前へ」
「はい」
俺は司祭様の声に従い、祭壇へと進む。
俺は少年らしく元気良く返事をして、祭壇に降り注がれている光に飛び込む。すると頭の中にある言葉が自然と浮かんできた。
「カードマスター」
司祭様が、俺の頭に思い浮かんだことと同じ言葉を発する。
医療系のジョブじゃないのか⋯⋯
俺は一瞬がっかりしてしまうがすぐに切り替える。
医療系のジョブでなかったがこれはこれで⋯⋯
元々トアを救えるジョブになれる可能性は低いと考えていた。
だからもし願いが叶わないなら、冒険が出来るジョブがいいと思っていた。
俺は女神の祝福に概ね満足していたが、周囲にいる人達は違った。
「カードマスター? なんだそれ?」
「不遇職だろ」
「あいつ⋯⋯確か親無しの没落した貴族だ。父さんが言ってたぞ」
「山の中にある古い屋敷に住んでる奴だろ? 気味悪いよな」
だが俺の思惑とは裏腹に、周囲の人達にはカードマスターは理解されないようだ。
残念だけど仕方ないよな。
俺はトアの病気を治すため、今までこの世界の知識を知ることと、鍛練に時間を費やしてきた。
そのため、同年代の子達と遊んだことは一度もなかった。
まあ中身は二十二歳だから、今さら子供として同年代の子と過ごすつもりはなかったけど。
「ありがとうございました」
同年代の子供達は無視して、司祭様にお礼を言う。
もうこの場所に用はない。
早く女神様から頂いた祝福を家族に伝えたい。
俺は教会にいる人達に背を向けて、急ぎ屋敷へと戻るのであった。
目の前には神々しい光が祭壇を照らしている。
天城ヒイロとして二十二歳で事故に遭い、前世の記憶を持ったまま異世界転生し、ユートとしてこれまで過ごしてきた。
俺は十歳の誕生日を迎え、女神様からの祝福⋯⋯ジョブを授かるため教会に来たのだ。
ジョブには様々な種類があり、戦士系なら力が、魔法使い系なら魔力の成長率が著しく上がるなどの恩恵を受けられる。つまりは間違えた努力をすることなく、未来への方向性を決められるということだ。
これまで英雄と呼ばれた人物は、必ず稀有なジョブを授かっていた。
剣聖、ドラゴンナイト、聖戦士、聖女、賢者、大魔導師など⋯⋯誰もがそれらのジョブを授かることを願っている。
だが俺は違う。
俺が望むのは医療系のジョブだ。
何故なら俺には助けたい人⋯⋯妹のトアがいるからだ。
トアは俺が知る限り、三才の頃から不治の病に犯されていて、その症状は多岐に渡っていた。
特に味覚障害、視力障害、筋力の低下の症状が著しく、食べても味がしない、外の世界をハッキリと見ることが出来ない、そして一日中ベッドの上から起き上がることもできないのだ。
だから俺は、奇跡の力を得る日を待っていた。
「ではユートくん⋯⋯前へ」
「はい」
俺は司祭様の声に従い、祭壇へと進む。
俺は少年らしく元気良く返事をして、祭壇に降り注がれている光に飛び込む。すると頭の中にある言葉が自然と浮かんできた。
「カードマスター」
司祭様が、俺の頭に思い浮かんだことと同じ言葉を発する。
医療系のジョブじゃないのか⋯⋯
俺は一瞬がっかりしてしまうがすぐに切り替える。
医療系のジョブでなかったがこれはこれで⋯⋯
元々トアを救えるジョブになれる可能性は低いと考えていた。
だからもし願いが叶わないなら、冒険が出来るジョブがいいと思っていた。
俺は女神の祝福に概ね満足していたが、周囲にいる人達は違った。
「カードマスター? なんだそれ?」
「不遇職だろ」
「あいつ⋯⋯確か親無しの没落した貴族だ。父さんが言ってたぞ」
「山の中にある古い屋敷に住んでる奴だろ? 気味悪いよな」
だが俺の思惑とは裏腹に、周囲の人達にはカードマスターは理解されないようだ。
残念だけど仕方ないよな。
俺はトアの病気を治すため、今までこの世界の知識を知ることと、鍛練に時間を費やしてきた。
そのため、同年代の子達と遊んだことは一度もなかった。
まあ中身は二十二歳だから、今さら子供として同年代の子と過ごすつもりはなかったけど。
「ありがとうございました」
同年代の子供達は無視して、司祭様にお礼を言う。
もうこの場所に用はない。
早く女神様から頂いた祝福を家族に伝えたい。
俺は教会にいる人達に背を向けて、急ぎ屋敷へと戻るのであった。
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