単純に婚約破棄されました~でも王子殿下が救済してくれました~

安奈

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5話 ジスパ王子殿下 その2

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 私は姉さまだけでなく、ジスパ王子殿下にも婚約破棄の状況を説明した。デミル公爵が言った、婚約破棄理由までしっかりと。ドロシー侯爵令嬢を選んだことも話している。


 初めて詳細を聞いたジスパ王子殿下はもちろん、シヴィル姉さまも顔をしかめていた。確かに、何度聞いても酷い話だとは思う。


「そうか……デミル公爵がな……」

「はい、王子殿下……」


 私は憧れのジスパ王子殿下には特に知られたくはなかったけれど、私が言わなくても、第一王子様にデミル公爵が婚約破棄をした件が伝わらないわけがない。それなら、私が直接説明した方が良いと言えた。


「ドロシー侯爵令嬢に乗り換えるのも、公爵家としては恥だが……賠償金の支払いすらしないだと?」

「デミル・ウィリー公爵からの一方的な婚約破棄なので、この場合、賠償金支払いを拒むことは出来ないはずですが……」


 シヴィル姉さまの発言にジスパ王子殿下は強く頷いた。


「その通りだ、拒むことなど出来ない。そもそもの問題として、婚約破棄など普通はあり得ないからな。もしも、してしまった場合は、誠意の証として賠償金を支払い、相手方の屋敷に謝罪に行くのが基本だ」


 そういう意味でも、デミル公爵の私への態度はあり得なかった。ただの婚約破棄だけでも、通常ならあり得ないのに……。

 それに、あのデミル公爵がこの屋敷に謝罪に来る? 私は彼の態度を再び思い出し、絶対に来ないだろうと結論付けた。私の勝手な考えではあるけれど、姉さまやジスパ王子殿下も似たような考えに至っていると思う。


「デミル公爵は元老院との繋がりが強いともおっしゃってました」


「デミル・ウィリー公爵の家系はそうだろうな。それがあるからこそ、強気な態度にも出られるのだろう」


 元老院との繋がりが強い為に、賠償金の支払い義務を免除できる。私の家系が伯爵家だから、それが可能みたいなことも言っていたはず。


「王子殿下、如何なさいましょうか? 私としましては、可愛い妹に対してこれだけのことを行ったのですから、泣き寝入りというのは避けたのですが」


「そうだな……」


「姉さま……?」


 シヴィル姉さまの目が不気味に光っているように見えた。なにやら、恐ろしいことを考えていそうな予感が……。ジスパ王子殿下も特に否定している様子はないし。


「賠償金支払いの件は必ず実行させるとして……ユリアーナにも大きな恥を与えたこと、後悔してもらう必要がありそうだ。公爵がそれではソドム王国全体にも影響しかねないからな」


「ジスパ王子殿下……?」


 賠償金の支払いを、デミル公爵にさせるように手配して貰えるのは嬉しいけれど……なんだか、それ以上の制裁を加えるつもりでいるような? シヴィル姉さまも頷いているし、想像以上に大事になりそうな気配があった。
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