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4話 ジスパ王子殿下 その1
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「久しぶりだな……まあ、なんというか……ユリアーナ」
「じ、ジスパ王子殿下……!?」
私の部屋へと入って来た人物は、紛れもなくジスパ第一王子殿下だった。確かに昔はよく会っていたけれど……まさか、こんなタイミングでお会いするなんて! シヴィル姉さまが笑っているところから、姉さまがジスパ王子殿下をお呼びしたのかしら……。
「お、お久しぶりでございます、王子殿下……!」
「そうだな、ははは……久しぶりだ」
お互いに上手く言葉が出て来ない……ジスパ王子殿下と、こうして面と向かってお話しするのは何時以来かしら。お父様はともかく、私のような一介の令嬢では普通はジスパ王子殿下に会える機会は少ないけど。
「何年振りかな、こうしてまともに話したのは……」
「そ、そうですね……私が12歳の頃かと推測いたします……」
そう、まともに話したのはそのくらいが最後のはず……。
「と、いうことは、もう5年も前の話か……当時は私も13歳だったんだな」
「はい、懐かしい思い出ですね」
「ああ、あの頃は楽しかったよ、まだ権力争いに巻き込まれてはいなかったからな」
「はい、私もです」
その後、ジスパ王子殿下は忙しくなり、私たちとの接点はほとんどなくなった。子供の時も本来なら、接点なんて出来る相手ではないのだけど。
「少し緊張が解れたかしら?」
「姉さま……はい、少しだけ」
「それなら良かった」
シヴィル姉さまは私とジスパ王子殿下の会話を笑顔で見ていたようで、一段落ついたのを見計らって、私に話しかけて来た。姉さまには色々と聞きたいことがある。
ジスパ王子殿下がなぜここに居るのか、先ほどの婚約破棄の報告は王子殿下に聞かれたのではないのか、など……。でもまず最初に言うべきことは……。
「シヴィル姉さま」
「なにかしら、ユリアーナ?」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
たくさんの想いを含んだお礼だった。今回は素直に受け入れてくれたみたい。ジスパ王子殿下は私達の会話を理解していない様子だったけれど、終始和やかなムードを感じ取ったのか、
「なかなか、微笑ましい光景だな」
と、一言、感想を述べていた。今日は色んなことが起きている……とても忙しい日になりそうね。
-------------------------------------------------
「それで……ええと……」
何から聞けばいいのやら……私は頭の中を整理するのでいっぱいだった。憧れだったジスパ王子殿下も目の前に居るんだし、余計に言葉が出て来ない。
「ユリアーナ、よければ、私から質問してもいいかな?」
「は、はい、もちろんでございます! 如何なさいましたか?」
「ああ、婚約破棄の件は……本当なのか?」
「えっ、それは……」
しっかり聞かれていました……まあ、予想はしていたけれど。せっかくの王子殿下との再会なのに、まさか婚約破棄の件から話が進んでしまうなんて……少し残念だった。
「じ、ジスパ王子殿下……!?」
私の部屋へと入って来た人物は、紛れもなくジスパ第一王子殿下だった。確かに昔はよく会っていたけれど……まさか、こんなタイミングでお会いするなんて! シヴィル姉さまが笑っているところから、姉さまがジスパ王子殿下をお呼びしたのかしら……。
「お、お久しぶりでございます、王子殿下……!」
「そうだな、ははは……久しぶりだ」
お互いに上手く言葉が出て来ない……ジスパ王子殿下と、こうして面と向かってお話しするのは何時以来かしら。お父様はともかく、私のような一介の令嬢では普通はジスパ王子殿下に会える機会は少ないけど。
「何年振りかな、こうしてまともに話したのは……」
「そ、そうですね……私が12歳の頃かと推測いたします……」
そう、まともに話したのはそのくらいが最後のはず……。
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「はい、私もです」
その後、ジスパ王子殿下は忙しくなり、私たちとの接点はほとんどなくなった。子供の時も本来なら、接点なんて出来る相手ではないのだけど。
「少し緊張が解れたかしら?」
「姉さま……はい、少しだけ」
「それなら良かった」
シヴィル姉さまは私とジスパ王子殿下の会話を笑顔で見ていたようで、一段落ついたのを見計らって、私に話しかけて来た。姉さまには色々と聞きたいことがある。
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「シヴィル姉さま」
「なにかしら、ユリアーナ?」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
たくさんの想いを含んだお礼だった。今回は素直に受け入れてくれたみたい。ジスパ王子殿下は私達の会話を理解していない様子だったけれど、終始和やかなムードを感じ取ったのか、
「なかなか、微笑ましい光景だな」
と、一言、感想を述べていた。今日は色んなことが起きている……とても忙しい日になりそうね。
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「それで……ええと……」
何から聞けばいいのやら……私は頭の中を整理するのでいっぱいだった。憧れだったジスパ王子殿下も目の前に居るんだし、余計に言葉が出て来ない。
「ユリアーナ、よければ、私から質問してもいいかな?」
「は、はい、もちろんでございます! 如何なさいましたか?」
「ああ、婚約破棄の件は……本当なのか?」
「えっ、それは……」
しっかり聞かれていました……まあ、予想はしていたけれど。せっかくの王子殿下との再会なのに、まさか婚約破棄の件から話が進んでしまうなんて……少し残念だった。
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