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3話 屋敷にて その2
しおりを挟む私は部屋に来てくれたシヴィル姉さまに全てを話すことにした。どのみち、隠すことは出来ないので、公爵様が行った事すべてを……。最後まで真剣な表情で聞いていた姉さまだけれど、私が話し終えるとすぐに言葉を発した。
「それは大変だったわね、ユリアーナ……」
「シヴィル姉さま……!」
姉さまはまず、私を抱きしめてくれた。私はその流れに身を任せることにする。
「それにしても、あのデミル・ウィリー公爵が婚約破棄を言い渡すなんて……しかも、そんな理不尽な理由で」
「はい、姉さま……私も信じられません……」
姉さまもやはり信じられないという表情になっていた。私もとても信じることはできない……温厚で有名なデミル公爵。私との縁談が決まった時も、お父様の前でとても誠実な対応をされていたのに……。私は軽く人間不信になりそうになっていた。
「大変だったわね、ユリアーナ……心中を察するわ……」
「いえ、とんでもないです……」
「ユリアーナ、今は男性恐怖症になりかけているかしら?」
聡明なシヴィル姉さまは、確信に突いた質問をしてきた。それは……私の現状を体現しているようだった。
「申し訳ありません……確かに、その通りだと思います」
「そう、でも仕方がないと思うわ」
シヴィル姉さまは、私に一切の叱責をすることなく、私を慰めてくれている……とても嬉しいのだけれど、やっぱり罪悪感が出てしまう。もしも、本当に男性恐怖症になってしまったら、しばらくは外を出歩けないかもしれないから……。
「でも、ジスパ・ハードルート王子殿下であれば、信じることができるでしょう?」
「ジスパ王子殿下ですか……?」
「ええ」
「それは、はい……もちろんです」
シヴィル姉さまの意図がよく分からなかったけど、私は自然と首を縦に振っていた。ジスパ・ハードルート王子は、我が国の第一王子殿下に該当する。昔、色々と縁があって、私や姉さまとは親しいお方でもある。恐れ多いことだけれど、私が初めて恋をした人物だと思う。
とても、切実なお方だった……当時はお互い、10代前半だったけれど、まだまだ幼かった私とは違い、ジスパ様はその年齢で既に人間として確立していたと思うし……。
なんだか、懐かしい思い出が浮かんでしまった。姉さまは本当に何が言いたいんだろう……?
「シヴィル姉さま……恐れながら、ご質問の意図が分からないのですが……?」
私がそう言うと、姉さまはクスリと笑っていた。そのしぐさが、ドキッとする程に美しい……。
「ジスパ王子殿下……そういうことみたいですわ」
「えっ……?」
シヴィル姉さまが言った言葉の意味が良く分からなかった……今、ジスパ王子殿下を呼ばなかった……? えっ?
姉さまの言葉に呼応するように、私の部屋に入って来る人物が一人。嘘……何年振りだろうか? でも、間違いない……私が彼のことを間違えるはずはない。そこには紛れもなく、ジスパ・ハードルート第一王子殿下が立っていたのだから……。
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