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5話 聖女 その2
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「聖女様、お父さんの病気が治ったんです!」
「聖女様のおかげで怪我がよくなりました!」
戸惑うほどに称賛の声が聞こえてきました。自分ではよくわかっていないだけに、余計にです……。
「神官長様……私には心当たりがないのですが……」
「それでは一度、父君のカイル様に伺ってみるのも良いかもしれません。それで見えてくるものもあるでしょう」
「お父様……にですか?」
「ええ」
どういうことでしょうか? お父様なら何かを知っている?
聖女というのは、メディナ王国の歴史の中で稀に現れる治癒術士の総称です。神のように崇められたとも聞いてはいますが、もう文献上でしか残っていない程の昔話です。
私は神官長様の言葉が気になったので、本日のお祈りは早めに済ませて、屋敷へと戻ることにしました……。
------------------------------------------
「お父様、お伺いしたいことがございます」
「おお、どうした? アンネリーよ」
「聖女と言う言葉で、何か思い浮かべることはございますか?」
聖女という単語を私はお父様に投げ掛けました。お父様の顔色が変化していきます。
「聖女か……メディナ王国では非常に名誉ある呼び名だな。その呼び方を知らない者はめずらしいだろう」
「それだけでございますか?」
「どういうことだ? アンネリーは何が聞きたいというのだ?」
「い、いえ……」
お父様は首を傾げていらっしゃいます。これ以上話すことは特にないといった印象でした。
どういうことでしょうか……? 神官長は意味深におっしゃっていましたが、これでは噛み合わないような……。
それとも何かあるのでしょうか? 私の質問も仕方が悪かったのでしょうか?
「実はお父様、最近の話なのですが、私の教会での祈りが人々を癒しているという噂が出ておりまして……」
「なんと! それは本当か?」
「はい、本日も教会へ向かったところ、人々から感謝の言葉をいただき、神官長様からは聖女様と呼ばれているという話を聞きました」
私はお父様に本日起こった出来事を話します。そうするとお父様は何か思い出したようなご様子になりました。
「そういえば我が家系……正確には妻の家系にはなるが、先祖で聖女だった人物が居たそうな……」
「そ、それは真実なのですか?」
「うむ……詳しくはシャリーに聞いてみるとするか」
シャリーというのは、私のお母様の名前になります。私は意外な事実に冷静な判断が出来ていませんでした。
ただ1つ、没落間近の我が家を再興させることが出来るかもしれないという思いを除いては……。
「聖女様のおかげで怪我がよくなりました!」
戸惑うほどに称賛の声が聞こえてきました。自分ではよくわかっていないだけに、余計にです……。
「神官長様……私には心当たりがないのですが……」
「それでは一度、父君のカイル様に伺ってみるのも良いかもしれません。それで見えてくるものもあるでしょう」
「お父様……にですか?」
「ええ」
どういうことでしょうか? お父様なら何かを知っている?
聖女というのは、メディナ王国の歴史の中で稀に現れる治癒術士の総称です。神のように崇められたとも聞いてはいますが、もう文献上でしか残っていない程の昔話です。
私は神官長様の言葉が気になったので、本日のお祈りは早めに済ませて、屋敷へと戻ることにしました……。
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「お父様、お伺いしたいことがございます」
「おお、どうした? アンネリーよ」
「聖女と言う言葉で、何か思い浮かべることはございますか?」
聖女という単語を私はお父様に投げ掛けました。お父様の顔色が変化していきます。
「聖女か……メディナ王国では非常に名誉ある呼び名だな。その呼び方を知らない者はめずらしいだろう」
「それだけでございますか?」
「どういうことだ? アンネリーは何が聞きたいというのだ?」
「い、いえ……」
お父様は首を傾げていらっしゃいます。これ以上話すことは特にないといった印象でした。
どういうことでしょうか……? 神官長は意味深におっしゃっていましたが、これでは噛み合わないような……。
それとも何かあるのでしょうか? 私の質問も仕方が悪かったのでしょうか?
「実はお父様、最近の話なのですが、私の教会での祈りが人々を癒しているという噂が出ておりまして……」
「なんと! それは本当か?」
「はい、本日も教会へ向かったところ、人々から感謝の言葉をいただき、神官長様からは聖女様と呼ばれているという話を聞きました」
私はお父様に本日起こった出来事を話します。そうするとお父様は何か思い出したようなご様子になりました。
「そういえば我が家系……正確には妻の家系にはなるが、先祖で聖女だった人物が居たそうな……」
「そ、それは真実なのですか?」
「うむ……詳しくはシャリーに聞いてみるとするか」
シャリーというのは、私のお母様の名前になります。私は意外な事実に冷静な判断が出来ていませんでした。
ただ1つ、没落間近の我が家を再興させることが出来るかもしれないという思いを除いては……。
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