上 下
22 / 33

22話 ルデルテ公爵は…… その2(ルデルテ公爵視点)

しおりを挟む

 私の両腕には頑丈な手錠が掛けられている……くそ、この私に錠を掛けた奴、顔は覚えたぞ。後に投獄処分にしてやるからな。


 いや、そんなことよりも、今はレミュラとサウス王子殿下だ。この二人の会話は私にとって不愉快な方向へと舵を切りだしている。なんとか、元に戻さなければ……。


「ルデルテ公爵の調合部門を残すというのか?」

「はい、いけませんでしょうか? ルデルテ公爵が推進していたポーション量産体制そのものは、とても素晴らしいことだと思うので……」

「確かに、そうかもしれないが……」


 ほう、レミュラの奴、分かっているじゃないか。まあ、当然だがな。私が発案し、議会を通して承認された機関なんだ。素晴らしいに決まっている。貴様なんぞに褒めてもらわなくともな。


「元々は国の一つの機関として成立している物だったんだ。それをルデルテ公爵が私物化をしたという流れだな」


 私物化だと……? 何を言っているんだ王子殿下は。この調合、研究部門は私の発案だと言っているだろうが。それなのに、それを私が私的に利用して何が悪いというのだ。

 まあ、紫のポーションの作成に関しては完全に誤算だったが……だが、成功しているポーションのおかげで、国家の財政も潤っていく予定だった。そもそもの話として、サウス王子殿下が私を咎めることがお門違いというものだ。


 国民に多少の被害が出るのがなんだというのだ、まったく……国家間の戦争になれば、もっと大きな被害が出るというのに……。


「もし許していただけるなら、私が調合部門に入ります。作業工程を少しでも良くする手助けができれば……。それに、どこでもポーションメーカーとしての仕事は出来ますし」

「なるほど、それは確かにありがたいが……しかし、君の負担が増えることになるぞ。構わないのか?」

「はい、大丈夫です。サウス王子殿下にはお世話になりましたので……少しでも恩返しできたら、と思います」

「レミュラ……ありがとう、前向きに検討してみるよ」


 二人は笑い合っている……この二人、もしかすると出来ているのか? 平民の女と王子殿下が? この間までは、私と婚約関係にあったくせに、ずいぶんと尻軽な女だな……。


 私はレミュラを見ながら怒りの感情が芽生えていることに気付いていた。いや……違う、決して嫉妬なのではない!


「さて、話は聞いたな、ルデルテ公爵? 其方の罪については、議会を通して判断されることになるが……相当な刑になることを覚悟しておけ。それこそ、バーン家そのものが没落しかねない程のな」


「サウス王子殿下……ご冗談を……」


「いや、冗談はあまり好きではないんだが」


 サウス王子殿下の表情に変化はない。ははは、一体、何を言っているのか。この王子は世間知らずなのか? 議会には私の息の掛かった者達も多い。その者たちが私に対して、大きな罪を課すことなどあり得ないわけで……。


「余裕そうだな、ルデルテ公爵。先ほどまでの態度は演技だったのか?」

「いえいえ、何のことかはわかりませんが……私の罪、ですか。事実上、免責にならなければ良いですな」

「免責だと? 貴様、自らの罪を自覚していないのか?」

「免責……? 国民にも被害を出しておいて、そんなことあり得るわけないと思いますよ?」


 おっと、流石に怒らせてしまったかな。「免責」という言葉は使う場面ではなかったな。だが、既に事態を知った私の影は放っている。議会に話を通し、最小限での罪となるように取り計らいが行われるだろう。


 私は程なくして釈放され……この二人の驚きの顔が目に浮かぶよ。ふはははははははっ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

結婚二年目、愛情は欠片もありません。

ララ
恋愛
最愛の人との結婚。 二年が経ち、彼は平然と浮気をした。 そして離婚を切り出され……

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

待ち遠しかった卒業パーティー

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。 しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。 それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

処理中です...