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最終話 後日談 その3
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「ディエス様、少々よろしいでしょうか?」
「シンディか、どうしたんだ?」
私はエトワール家の書斎で本を読んでいたディエス様の元を訪れた。あれからしばらく経ち、ディエス様は正式にエトワール家の当主になられている。だから、私への呼び方も「シンディ」となった。
「はい。本日、ジニーと共に貴族の方々への挨拶回りを行って参りました」
「そうか……毎日、毎日、君も大変だな」
「ご迷惑をお掛けした貴族の方々へは、本日でほぼ謝罪は終了したかと思います」
「なるほど……参加していない私がこれを言うのはお門違いかもしれないが、お疲れ様、シンディ」
ディエス様は立ち上がり、私を抱きしめてくれた。顔が赤くなっているのを感じたけれど、もう婚約してそれなりに時間も経つので、些細なことだわ。
「ディエス様が参加されなかったのは、正解だと思っています。やはり、エトワール家の当主……周囲への威厳を保つことも重要だと思うので……」
「だが、当主が謝罪することで、ジニーを救いやすいという側面もあるよ」
「それは確かにそうですが……」
私とジニーだけでは、どうしてもエトワール家の再興……とりわけ、ジニーの婚約者相手を見つけるのは苦労する。でも、それでも私はディエス様に頼ることはしたくなかった。それが私なりのけじめのつもりだったから……。ディエス様もその考えを尊重してくださり、今に至っているわけだけれど。
「私個人としては、ジニーは切り捨てるつもりであったんだがな、その方がエトワールの再建に繋がる」
「は、はい……」
「しかし、シンディの悲しむ顔を見るのは本意ではない。ジニーの婚約者の選定に行き詰まりを感じるようなら、また相談してくれ、なんとかしてみよう」
「ありがとうございます、ディエス様。しかし、可能な限り私達でなんとかしたいと思っております」
「ああ、わかった。なるべく君たちで成し遂げた方が、その後に得る物も大きいだろうからな」
私とディエス様はその後、同時に笑い合った。こうしてディエス様は近くに居てくださる……あれだけのことがあったにも関わらず、ジニーやお父様、お母様を追放することもせずに。あ、お父様とお母様は事実上の実権は無くなっているけれど、屋敷内には住めているし。
なんだか、変な気分だった。
「しかし……私とシンディの仲も進展させていかないといけないな。肝心の私達が進めていないのでは、意味がないし」
「ふふ、そうですね。それでは今夜、ディエス様の寝室に向かってもよろしいでしょうか?」
私は大胆な提案をディエス様にしてみた。ディエス様は意外にも取り乱している様子だった。
「ま、待てそれは……! 結婚もしていないというのに……!」
「一緒に寝るだけのことなのですが……いけませんか?」
「ね、寝るだけ、か……そ、そうか……」
「……ディエス様は一体、なにを想像されたのですか?」
「い、いや……なんでもない……!」
普段のご様子からは想像しにくい光景となっていた。面白そうだから、もう少しからかってみようかしら? うふふ、冗談だけどね。
「ディエス様」
「なんだ? シンディ」
「幸せになりましょうね」
「もちろんだ」
婿養子のディエス・エトワール伯爵とシンディ・エトワール伯爵夫人……私達の恋物語はまだまだこれから。とても長い年月を掛けて徐々に紡がれていくことになる。
おしまい
「シンディか、どうしたんだ?」
私はエトワール家の書斎で本を読んでいたディエス様の元を訪れた。あれからしばらく経ち、ディエス様は正式にエトワール家の当主になられている。だから、私への呼び方も「シンディ」となった。
「はい。本日、ジニーと共に貴族の方々への挨拶回りを行って参りました」
「そうか……毎日、毎日、君も大変だな」
「ご迷惑をお掛けした貴族の方々へは、本日でほぼ謝罪は終了したかと思います」
「なるほど……参加していない私がこれを言うのはお門違いかもしれないが、お疲れ様、シンディ」
ディエス様は立ち上がり、私を抱きしめてくれた。顔が赤くなっているのを感じたけれど、もう婚約してそれなりに時間も経つので、些細なことだわ。
「ディエス様が参加されなかったのは、正解だと思っています。やはり、エトワール家の当主……周囲への威厳を保つことも重要だと思うので……」
「だが、当主が謝罪することで、ジニーを救いやすいという側面もあるよ」
「それは確かにそうですが……」
私とジニーだけでは、どうしてもエトワール家の再興……とりわけ、ジニーの婚約者相手を見つけるのは苦労する。でも、それでも私はディエス様に頼ることはしたくなかった。それが私なりのけじめのつもりだったから……。ディエス様もその考えを尊重してくださり、今に至っているわけだけれど。
「私個人としては、ジニーは切り捨てるつもりであったんだがな、その方がエトワールの再建に繋がる」
「は、はい……」
「しかし、シンディの悲しむ顔を見るのは本意ではない。ジニーの婚約者の選定に行き詰まりを感じるようなら、また相談してくれ、なんとかしてみよう」
「ありがとうございます、ディエス様。しかし、可能な限り私達でなんとかしたいと思っております」
「ああ、わかった。なるべく君たちで成し遂げた方が、その後に得る物も大きいだろうからな」
私とディエス様はその後、同時に笑い合った。こうしてディエス様は近くに居てくださる……あれだけのことがあったにも関わらず、ジニーやお父様、お母様を追放することもせずに。あ、お父様とお母様は事実上の実権は無くなっているけれど、屋敷内には住めているし。
なんだか、変な気分だった。
「しかし……私とシンディの仲も進展させていかないといけないな。肝心の私達が進めていないのでは、意味がないし」
「ふふ、そうですね。それでは今夜、ディエス様の寝室に向かってもよろしいでしょうか?」
私は大胆な提案をディエス様にしてみた。ディエス様は意外にも取り乱している様子だった。
「ま、待てそれは……! 結婚もしていないというのに……!」
「一緒に寝るだけのことなのですが……いけませんか?」
「ね、寝るだけ、か……そ、そうか……」
「……ディエス様は一体、なにを想像されたのですか?」
「い、いや……なんでもない……!」
普段のご様子からは想像しにくい光景となっていた。面白そうだから、もう少しからかってみようかしら? うふふ、冗談だけどね。
「ディエス様」
「なんだ? シンディ」
「幸せになりましょうね」
「もちろんだ」
婿養子のディエス・エトワール伯爵とシンディ・エトワール伯爵夫人……私達の恋物語はまだまだこれから。とても長い年月を掛けて徐々に紡がれていくことになる。
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