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28話 絶縁のお話 その4
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「い、痛い……! 姉さま……どうしてこんなことを……!」
ジニーは自分の頬を抑えながら私に言ってきた。涙目になりながら、まるで悲劇のヒロインのように……。いえ、絶対に悲劇のヒロインなんかではないけれどね。
「聞こえなかったの、ジニー? 私はもう一度、自分の行ったことを考えてみなさいって言ったのよ? 今なら、まだ間に合うかもしれないわ。本当におすすめするわよ?」
今から見つめなおしても遅いかもしれないけれど、私は最後の優しさのつもりでジニーに言った。
「痛い……痛いわ……! まさか、姉さまに叩かれるなんて……うわあああああ……!」
でも、ジニーは私の言葉なんて無視するかのように泣きじゃくってしまった。痛みが遅れてやって来たのかしらね。
「シンディ様、これは……」
ライラが泣きじゃくっているジニーを見ながら言った。その表情はとても哀れみが込められている。本当に、ジニーはどうしてこんな性格になったのかしら……?
「姉さまは……昔からそう! 私の好きな人は、みんな姉さま姉さまって歩み寄って……!」
「……えっ? そんなことあったかしら……?」
全然、記憶にないんだけど……。そもそも、私はそこまでモテてはいなかったと思うけど。
「姉さまは知らないかもしれないけれど、あったのよ! だから、私はフリント様を姉さまから奪ってやったのに……! こんなのってあんまりだわ……!」
この場の出まかせにはとても思えないジニーの態度。彼女はさらに大粒の涙を流して泣き出した。ディエス様は無言になっており、事の顛末を伺っているようだった。私はライラの方向に目をやる。
「……ジニーが言っていたことに、心当たりはある?」
「そうですね……確かに、昔、シンディ様を好いていた殿方はいらっしゃったと思います。当時のことですから、子供のころの淡い恋心かと思われますが」
「なるほど……」
それに私が気付いていなかったわけね……。それで、ジニーは私を恨みだしたということかしら? 結構、根に持つタイプなのねこの子……。
でも、真相? を聞いたところで、私の心はあんまり動かなかった。むしろ、彼女にものすごく悪いことをしてたんじゃないかという考えが消え、すっきりしたと言えるかな?
「ディエス様、私がジニーに言いたいことは言えました。よろしければ、ディエス様のお屋敷へご招待いただけませんでしょうか?」
「もういいのか?」
「はい」
「よし、では参ろうか、シンディ殿、ライラ殿」
ディエス様は笑顔になり、私とライラの名前をお呼びになった。私たちは元気よくその言葉に応じた。
「ま、待ってください、ディエス殿……!」
「伯爵……詳細な絶縁の過程は追って報告いたします」
無慈悲なディエス様の言葉はお父様の耳に痛恨の一撃となって轟いた。その場に座りつくすお父様とジニーを前に、私たちは屋敷から出て行った……。
ジニーは自分の頬を抑えながら私に言ってきた。涙目になりながら、まるで悲劇のヒロインのように……。いえ、絶対に悲劇のヒロインなんかではないけれどね。
「聞こえなかったの、ジニー? 私はもう一度、自分の行ったことを考えてみなさいって言ったのよ? 今なら、まだ間に合うかもしれないわ。本当におすすめするわよ?」
今から見つめなおしても遅いかもしれないけれど、私は最後の優しさのつもりでジニーに言った。
「痛い……痛いわ……! まさか、姉さまに叩かれるなんて……うわあああああ……!」
でも、ジニーは私の言葉なんて無視するかのように泣きじゃくってしまった。痛みが遅れてやって来たのかしらね。
「シンディ様、これは……」
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「……えっ? そんなことあったかしら……?」
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「姉さまは知らないかもしれないけれど、あったのよ! だから、私はフリント様を姉さまから奪ってやったのに……! こんなのってあんまりだわ……!」
この場の出まかせにはとても思えないジニーの態度。彼女はさらに大粒の涙を流して泣き出した。ディエス様は無言になっており、事の顛末を伺っているようだった。私はライラの方向に目をやる。
「……ジニーが言っていたことに、心当たりはある?」
「そうですね……確かに、昔、シンディ様を好いていた殿方はいらっしゃったと思います。当時のことですから、子供のころの淡い恋心かと思われますが」
「なるほど……」
それに私が気付いていなかったわけね……。それで、ジニーは私を恨みだしたということかしら? 結構、根に持つタイプなのねこの子……。
でも、真相? を聞いたところで、私の心はあんまり動かなかった。むしろ、彼女にものすごく悪いことをしてたんじゃないかという考えが消え、すっきりしたと言えるかな?
「ディエス様、私がジニーに言いたいことは言えました。よろしければ、ディエス様のお屋敷へご招待いただけませんでしょうか?」
「もういいのか?」
「はい」
「よし、では参ろうか、シンディ殿、ライラ殿」
ディエス様は笑顔になり、私とライラの名前をお呼びになった。私たちは元気よくその言葉に応じた。
「ま、待ってください、ディエス殿……!」
「伯爵……詳細な絶縁の過程は追って報告いたします」
無慈悲なディエス様の言葉はお父様の耳に痛恨の一撃となって轟いた。その場に座りつくすお父様とジニーを前に、私たちは屋敷から出て行った……。
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