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27話 絶縁のお話 その3
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「済まない、ジニー殿……一つだけ確認しても良いかな?」
「ディエス様……? は、はい、なんでしょうか?」
いつもの如くお父様と口論になっていたジニーだけれど、ディエス様からの問いかけには緊張しつつ対応していた。そのしおらしさを、私にも向けてくれていれば可愛らしいのに……本当に何時頃からこんな風になったのかしら……。
「君がマローネ家へ来たいとう申し出だが……」
「は、はい! わたくし、精一杯尽くさせていただきますので……! 姉さまよりも、あっちのテクニックであれば優れていますし……!」
他国に売られたくないという必死の頼みなのか……ディエス様の愛人にでも立候補しているようだった。下世話な話がいきなり出て来たし。ディエス様の表情は変わっていないけど、頭を抱えている。
「ふむ……私も男ではあるので、そういう会話は嫌いというわけではないが……シンディ殿、妹君は相当に病んでいるご様子だな」
ディエス様はそう言いながら私に視線を合わせてきた。
「はい……申し訳ありません。ご迷惑をお掛けいたします……」
「いや、それは構わないが……」
病んでいる、という表現は適切ではないかもしれないけれど、ジニー自身も多分、善悪の区別とかが色々と付かなくなっている気がするわ。ジニー自身も悪いけれど、お父様やフリント様の罪も大きいでしょうね……。
「ジニー殿、君を私が受け入れると思っているのか?」
「だ、ダメなんですか……!? 姉さまへの謝罪もしますし、どうか私を救ってくださいませんか……!?」
「……」
被害者意識がここにきても出ているわね……。もう救いようがないというか……自分の立場を分かっていないというか……。一発くらい、全力でビンタしてあげた方が彼女の為かしら? 早速、実行しようと私は右手に力を込めた。
「シンディ様、100%の力を出してしまうとご自身の手もやられてしまいます。80%程度に抑えるのがよろしいかと……」
「なるほどね、助言ありがとうライラ」
「勿体ないお言葉です」
「……えっ?」
状況が掴めていないのはジニーだけだった……この役をディエス様に任せるわけにはいかない。彼女の姉として、少しでも目を覚まさせる役割は私自身にあるはずだから。私は右手に80%くらいの力を込めながら、大きく振りかぶった。そして、そのまま……振り抜いた右手は、ジニーの頬にクリーンヒットする。
打たれたジニーは、勢い余って尻もちを付いていた。
「……!」
「ジニー、自分の立場をもう一度よく考えなさい? そうでないと、今後、とても大変な目に遭うわよ?」
姉としての最後の優しさと言えるかしら……? 私はジニーにそう言って視線を逸らした。
「ディエス様……? は、はい、なんでしょうか?」
いつもの如くお父様と口論になっていたジニーだけれど、ディエス様からの問いかけには緊張しつつ対応していた。そのしおらしさを、私にも向けてくれていれば可愛らしいのに……本当に何時頃からこんな風になったのかしら……。
「君がマローネ家へ来たいとう申し出だが……」
「は、はい! わたくし、精一杯尽くさせていただきますので……! 姉さまよりも、あっちのテクニックであれば優れていますし……!」
他国に売られたくないという必死の頼みなのか……ディエス様の愛人にでも立候補しているようだった。下世話な話がいきなり出て来たし。ディエス様の表情は変わっていないけど、頭を抱えている。
「ふむ……私も男ではあるので、そういう会話は嫌いというわけではないが……シンディ殿、妹君は相当に病んでいるご様子だな」
ディエス様はそう言いながら私に視線を合わせてきた。
「はい……申し訳ありません。ご迷惑をお掛けいたします……」
「いや、それは構わないが……」
病んでいる、という表現は適切ではないかもしれないけれど、ジニー自身も多分、善悪の区別とかが色々と付かなくなっている気がするわ。ジニー自身も悪いけれど、お父様やフリント様の罪も大きいでしょうね……。
「ジニー殿、君を私が受け入れると思っているのか?」
「だ、ダメなんですか……!? 姉さまへの謝罪もしますし、どうか私を救ってくださいませんか……!?」
「……」
被害者意識がここにきても出ているわね……。もう救いようがないというか……自分の立場を分かっていないというか……。一発くらい、全力でビンタしてあげた方が彼女の為かしら? 早速、実行しようと私は右手に力を込めた。
「シンディ様、100%の力を出してしまうとご自身の手もやられてしまいます。80%程度に抑えるのがよろしいかと……」
「なるほどね、助言ありがとうライラ」
「勿体ないお言葉です」
「……えっ?」
状況が掴めていないのはジニーだけだった……この役をディエス様に任せるわけにはいかない。彼女の姉として、少しでも目を覚まさせる役割は私自身にあるはずだから。私は右手に80%くらいの力を込めながら、大きく振りかぶった。そして、そのまま……振り抜いた右手は、ジニーの頬にクリーンヒットする。
打たれたジニーは、勢い余って尻もちを付いていた。
「……!」
「ジニー、自分の立場をもう一度よく考えなさい? そうでないと、今後、とても大変な目に遭うわよ?」
姉としての最後の優しさと言えるかしら……? 私はジニーにそう言って視線を逸らした。
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